助けの捌け口
神父が礼拝堂に行くと、髪が白色で目が桃色の男が出てきた。
服の胸部分にはチェスのビショップのマークが書いてある。
「ねぇ、まだなの?アヤは。ミミ様が早く欲しいって言ってるんだけど」
「……まだです。精神状態が……」
「そう言ってさぁ、伸ばす気?まぁ、ミミ様の器が大きかっただけマシか」
「そもそも……」
神父は口を開く。
「…………ん?」
「ミミ……あんなクズに、アヤを渡して、たまるか」
「あー、逆らっちゃうんだ」
男は神父の首を掴む。
「ねぇ、わかる?あんたの命も、こっちが握ってるんだからさー。下手なこと言わない方がいいよ」
「ロキ……」
振り返ると、頭に角を生やした男が立っている。胸にはチェスのキングの駒のマークがある。
「あまり乱暴をするな」
「そこにいたっけ?」
「ミミ様から言われてきた。素行が心配だと」
「安心しなよ。こうしてミミ様の欲を満たすためにこうして取り立てしてるじゃん」
「お前がやっていることは脅迫だ」
「正義だねー。ルシファーは」
ロキは乱暴に神父を離す。
「ま、もういいや。期限はあと一ヶ月ね。その間に、アヤを渡さないと、殺すよ」
そう言うと、ロキとルシファーは消えていった。
「…………」
「神父様……」
見ると、タクが隠れるように扉にいた。
「…………」
「まさか、アヤを魔法団に入れて欲しいって言った理由って」
「…………そうです。ミミです」
その名前を聞いて、タクは怒りが込み上げてくる。
「さっきのは、魔物です。ミミが人間を使って作った幹部たちです」
「…………まさか」
「はい。ミミの『特殊魔法』は、魔物を作れるんです」
「タクさん……」
「…………」
「私はどうなってもいいですから、アヤを、魔法団に……」
タクは頭をかく。
「なにを言ってるんですか」
座ったままの神父に、しゃがんで目線を合わせる。
「あなたも助けますよ。アヤが助かっても、あなたが無事じゃなきゃ、ダメですよ」
(この子の目は、アヤと似てる。絶望を味わったのに。まさか、彼も魔法大戦争の……)
「…………タクさん」
「はい」
「あなたなら、私の愚かな行いと、アヤの全てを話せそうです」
「……話してください。アヤはどうして、あんな風になったのか」
タクは無意識に神父の手を握っていた。




