ハロウィン祭り③
夜の八時。空が真っ暗になると、街の灯りが一斉に着き、王都の一本道の真ん中に、一人の小太りの男性が立ち、マイクを持つ。
「えー、みなさん。こんばんは。そして、ハッピーハロウィン。今夜も、来ましたね。私は、お菓子を配りますよ。でも、娘と一緒に回れない歳だそうなので大人しくしておきます」
辺りから賑やかな笑い声が聞こえる。
「この歳になると、甘いものが食べれなくなってましてね。この前、糖尿を心配して検査しに行ったらなんと見事な陰性。いつまでも私は元気ですからね。と言うわけで、始めさせていただきましょう。この素晴らしいお祭りを」
両手をあげると、左右の空から花火が登ってきて破列して綺麗な花を咲かせる。
*
プリンは呼吸を整えて射的で弾を撃つが、ぬいぐるみには当たらず、五発全部が当たらなかった。
「えーどうして当たらないのー?」
プリンがぼやく。
「どれ、貸してみろ」
レイナは硬貨を置き、プリンの持っていたライフルを持つ。
一発目はぬいぐるみの額に命中する。
「え……」
そして、すぐに二発目をこめる。
「動く魔物よりはマシだな」
そして、すぐさまもう一度ぬいぐるみの額に命中する。大きくぐらつく。
そしてすぐさま三発目を込めると、すぐにまたもや額に命中させて落とす。
ぬいぐるみは、ころりと転がった。
「え、すご……」
プリンがつぶやく。
「こんなもんは造作もない」
カノンが入る。
「それってさ、妹さんとやってたから?」
「……そうだな。あの時は甘かったからな。リボンに」
*
タクとアヤは、街を歩いている。
「すごい……」
アヤは歓喜の声を漏らしている。
「ベビーカステラが……あれ?」
見ると、アヤはいなかった。
探していると、アヤがいた。
「もう、アヤ……」
アヤがいるところには、人だかりができていた。
(なんかあったかな……)
「え……」
そこには、射的で大量の景品をとっているルナがいた。
「お姉さん。大人気ないよ」
店のおじさんがため息をつく。
「悪いね。あいにく、狙撃は一流なんだよ。あと一個残しておくよ。店番を任せてるからね」
ルナは人混みをかき分けて進む。
(あの人……たしか、治安維持局の人。お休みなのかな?)
タクはアヤの袖を引く。
「行くよ。勝手に行動しない。僕らはここらへんは知らないんだから。ほら、あそこのベビーカステラでも食べようよ」
*
小柄な女性が、ルナの店の屋台を見る。
「なにをお探しですかー?」
店番のイリアが言う。
「そうだね。なにか、かわいいものがいいねー」
「それなら、これがおすすめですね」
イリアが勧めたのは、白とピンク色のビーズのアクセサリーだった。
試しに女性は腕につけてみる。
「これ、誰が作ったんですか?」
「ウチの店長ですね。器用な方ですよ」
「へぇー」
女性は硬貨をおく。
「これ、買った」
「ありがとうございます」
女性は、オレンジ色の街頭にそのアクセサリーをかざす。
「へぇ、ルナもいいものを作るなー」
すると、その女性とルナがすれ違う。
ルナはすれちがった女性を見る。
「あの気配……」
(いや、人違いならどうする。それに、戦ったとしても人は大勢いる。ここで戦うわけにはいかない)
*
その気配を感じ取り、確実なものにしたのはレイナだった。
「……魔力の気配」
ベビーカステラを食べようとしていたレイナは動かしている口を止める。
「え……?」
プリンが驚く。
「この魔力、特殊魔法だ。まさか、ミミ……」
すると、プリンがレイナの頭を叩く。
「…………は?」
「バカヤロー。なに仕事の話してんの。こう言う日なんだから気にせず楽しめばいいのーよ」
プリンはベビーカステラを三つ口に入れる。
「でも、それじゃ、手遅れになるかもしれませんよ」
カノンが言う。
「安心しなさい。この私がいるじゃない」
「食べながら話すな」
*
そして、彼も例外ではなかった。
(なにか、よからぬものがいる)
彼、トヌーだった。
(いや、今はシルレさんがいる。僕は楽しめなくても、彼女を楽しませないと)
「シルレさん。アイス食べない?」
トヌーはアイスの屋台を指差す。
「いいですね」
今、この場で四大魔法使いのうち、三人がある存在を認知していた。そう、ミミだ。




