ハロウィン祭り②
「と言うわけで、案内します」
タクとアヤが駅を出て早々あったのは、こげ茶の髪の毛をしている女性だった。
「あの、あなたは?」
アヤが聞く。
「私、プリンさんのブティックのお手伝いをしているメルと言います。元々、王都の料理人でした」
どうりで、言葉遣いが整っていると、タクは思った。
「さて、向かうついでに王都のハロウィン祭りについて少々、説明します」
メルは駅前の一本道を指差す。
「あそこの街全てが、お祭りの屋台ですね。そこから、枝分かれになっている道から、座席や椅子が乱雑に置かれています。レストランとは違いますね。やっぱり」
(なんか、一言多いような気がする。この人)
アヤはメルを見る。
よく見ると、指から腕にかけて火傷の痕のようなものがある。だが、長袖で大きいのかがわからない。
(……火傷したのかな?)
「そして、この王都の祭りの終盤の定番ですね。終了の三分前。二十三時五十七分から、終了の二十四時まで花火が上がります。そして、日付の変更を知らせる大きな花火は見ものです。まぁ、プリンさんは二十四時以前に、眠いから帰っちゃうんですけどね」
そして駅から続く一本道を歩いていくと、城が見えてくる。
「あれが城ですね。まぁ、王都の肩書きは昔から変わってないんですけどね。あの城は今じゃ役所に再利用されていますよ。魔創家は、屋敷で仕事などをしていますけどね」
そして、城が見える一本道でメルは立ち止まる。
「ここですね。プリンさんのブティック。この二階に、プリンさんの家がありますね。余った部屋がありますから、窮屈で汚いですがお使いください。裏口の鍵を開けますのでお待ちください」
そう言って、メルは二人から離れる。
「鍵が開きました!」
メルの大きな声が響く。
*
二階に上がると、二人は空いた口が塞がらなかった。
「なんですか。これ……廊下にまで服が散乱してるじゃないですか」
「ゴミは捨てても、服が問題ですね」
メルは、落ちている服を拾い、プリンの部屋らしきドアを開け、投げ捨てる。
「すいませんね。帰ったら本人にやらせます。あなた達が泊まる部屋は綺麗なはずですよ。プリンさん、休日は自分の部屋以外には入りませんし、どこにも行きませんから」
メルはプリンの部屋の向かいのドアを開けて部屋を見
る。
「やはり。綺麗でしたか」
二人はその部屋を覗く。なにもない部屋で、小さなベッドがあるだけだ。
「……プリンさん。大きい方を使ってるんですか」
メルは独り言を水のようにこぼす。
「すいませんね。ベッドが一つしかない上に小さいんです。どうします?リビングにソファーがあります。どちらかが使ってくれれば幸いです。申し訳ありませんね」
メルはそう言うと、ため息をつく。
*
「シルレさん。案内図、もらってきたよ」
トヌーは、息を切らして言う。
「わざわざありがとうございます」
「いやいや。たまたま通ったらあったからね。よければね」
トヌーから案内図を受け取り、広げて見る。
「なるほど。例年通りですね」
「うん。その方がいいのかもね。魔法大戦争で、国庫が傾いちゃったからね」
トヌーは窓の景色を見る。
(まさか、何かを仕掛ける気じゃないだろうね。ミミ)




