レイナ兄妹
魔法団がゆっくりと休日を過ごしていると、タクが慌ててレイナの部屋に入ってきた。
「レイナさん。お客さんが」
「……客?誰も来るような用はないが……」
玄関に出ると、レイナは目を見開いた。
そこにいたのは、白いワンピースを着た銀髪の女性だった。
「レイナさん。どうしました?」
「いや、ありがとう。タク。もう戻っていいぞ」
「……わかりました」
*
レイナは部屋に女性を通す。
「驚いたぞ。リボン」
「兄さんだって、変わってて驚いたよ。前まで柔らかい雰囲気だったのに。まさか、英雄になるなんてね」
「英雄って……何年前だよ」
「でも、兄さん。不思議だよね。学生の頃はマジシャンになりたいって言ってたのに」
「…………まぁ、正義だな。先祖に似たのかな」
レイナは紅茶を注ぐと、リボンに渡す。二人は、兄妹のようだ。
「で、なんでリボン。ここに来たんだ?どうせなら、屋敷に電話して俺が実家に帰ってもいいんだぞ。病状が悪化するとまずいからな」
「……別に。落ち着いてきたから、ここに来ただけだよ」
リボンは笑って返した。
「こう見えてね、私。新聞を見てるんだー。やっぱり、兄さんってカッコいいよね。街じゃ、モテモテなの?」
「……は?」
レイナは紅茶を飲む手を止める。
「だって、魔法大戦争も止めて、色々事件を解決して。もう、モテないのがおかしいよ」
「……さぁな」
「そういえば、カノンさんは?」
レイナは顎に手を当てる。
「……起きてから見てないな。まだ寝てるかも」
「へぇ、カノンさんも女の子な一面があるんだ」
「言っとくが、記者に流すなよ」
「私にはそういうコネを持ってないから安心してよ」
「まぁ、いい。初めてだろうから、カノンを呼んでくる」
レイナはソファから立ち上がる。
*
「へぇー。レイナさんに妹がいたんだー。いいなー」
アヤはポテトを食べている。
「ね、一人っ子だと思ってたのに」
タクもアヤと一緒にポテトを食べている。
「そういえば、神父様って、兄弟いるのかな?」
「……えー、いなさそうだよ」
「ネペロ地方って一人っ子多いの?」
*
レイナがドアを叩くと、すぐにカノンは出てきた。少し、息を切らしている。
「……カノン。どうした」
「いや……なんでもない」
「ん?まぁ、いい。ちょっと来てくれないか?」
「……え?」
カノンが目にしたのは、リボンだった。
すぐに、カノンはリボンに敵意をむき出しにする。
(うぉ。オーラがある。かなり嫉妬深かったりして)
リボンはそう思った。
「どうも。妹のリボンです」
彼女は、あえて妹であることを強調させた。
「あ、どうも。カノンです」
二人は握手を交わす。
「あ、兄さん。悪いけど、席を外してくれない?」
「……ん?」
「いいから」
「……あぁ」
レイナは首をかしげて部屋を出る。
「……改めて、初めまして。カノンさん」
「どうも」
カノンはリボンの向かいに座る。
「あなたの、兄さん……いや、レイナに対する好意は本物ですね」
「……そ、そんな」
「女同士だから分かりますよ。さっきまで、兄さんのこと考えて……」
「それ以上は、やめてください」
顔を赤くするカノン。
「そう言うのはやらないと思ってたんですけどね」
「それが……意外と……」
カノンは顔を手で覆い隠し、下を向く。
「もうこれ、やめません?恥ずかしくなってきました」
*
「あいつら、何話してんだ?」
レイナは庭のベンチに座っている。
(まったく。部屋は使われてるから魔歴書も読めないからな)
すると、庭にリボンが来た。
「……どうした?リボン」
「あぁ、今から帰ろうとね。最後に、兄さんに会ってみようってね」
「そうか」
レイナはベンチから立ち上がる。
「元気そうで良かったよ。リボン」
「…………そうだね」
「あぁ、元気になったらまた遊ばないか?なにをする?キャッチボールか?」
「……子供じゃないんだから」
そう言って、リボンは、背を向けて歩き出した。
*
リボンは街道を歩くと、大きなため息をつく。
「全く。吐き気がするよ。よく耐えたな私……おっと」
リボンが手を広げると、目玉が落ちてきた。そして、その目玉はふわふわと浮く。
『やぁ、リボン。レイナはどうだった?』
「吐き気がするよ。ほんっとに。ミミもそうなの?」
『いいや。わたしは楽しいね。レイナって、色々使えるでしょ?ククク』
「…………ま、そうだね。私はもう懲り懲りだね。あんな男」
『まぁ、安心してよ。君の「特殊魔法」でボコボコにしな』
「そうだね……ゲホッゲホッ」
リボンは咳をすると、すぐに鉄製のケースから薬を出して飲み込む。
「また、悪化しそうだよ」




