[番外編]あの後
ルナ、イリアの辞職から一ヶ月後……
レイナが任務を終え王都の街を歩いていると、ある見慣れない店があった。
「……ん」
プリンのブティックの近くに、見慣れない店が立っている。
まさかと思い、扉を開ける。店先に置いてあるのは、おしゃれなマグカップや、「店長手作り」と書かれたブックカバーだった。
「いらっしゃいませー」
静かな声が聞こえて、レジを見る。
「あ、レイナ……さん」
慌ててルナは、口を抑えた。おしゃれな服に、花柄のエプロンをつけている。まるで、この店の一部のようだ。
「さんをつけるな。上下なんていいんだからな」
「ごめん。レイナ」
「…………少し、明るくなったか?」
「……うん。今まで、たくさんのしがらみがあったから、それから解き離れたからかな。この二階に、私たちの家があるの」
「へぇ」
「ちょうど、この建物の前の持ち主が、手放しがってたから、『お金は必要ない』って言われたけど、無理やり払わせたよ」
「頭硬いな」
レイナは笑いながら突っ込む。
「ちょっと待って。レイナ。イリア呼んでくるから」
しばらくすると、奥からイリアが出てきた。
「ごぶさたしています。レイナさん」
イリアは深く頭を下げる。
「あれから、マスコミは来てますか?」
「いえ。来てませんね。ここは女性の方がよく来るんですよ。よければ、どうですか?カノンさんに」
イリアは、コンパクトだがかわいいマグカップを勧める。
「まるっきり営業ですね」
レイナは魔法で財布を取り出す。
「それ、いくらですか?」
「恩人割引で……」
「いえ結構。そういうのは……」
レイナはルナの店の紙袋を下げて店を出る。
「結構高かったな。あの秘書……イリアは、商売上手なのかもな」
*
レイナはカノンの部屋の扉を開ける。
「カノン……」
すぐさま、カノンは扉を開ける。
「知り合いが店を開いたそうだ。そこで、マグカップを買ったから、いるか?」
「いる」
すぐさま答え、カノンはレイナから紙袋を受け取る。
そして、カノンが扉を閉めると、部屋から「かわいー」と聞こえた。
 




