ルナの過去
ルナの家は代々、治安維持局の重役の家系だった。
なにがあっても、治安維持局以外の職につくことは許されなかった。
まともに父親の顔なんて見たことがない。
そんな中に生まれた、一人の女の子。とある言語で、朝を意味するルナと名付けられた。それは、「キー」と同じような意味だった。
そして、子供の頃から格闘術の道場で武術を学んだ。最初から頭角をあらわし、メキメキと強くなっていき、王都が視察に来るほどだった。
しかし、ルナの目指すものは違った。アンティーク系のものが好きだったルナは、アンティークなものを売るお店を開きたいと思った。だが、どこから聞きつけたのか、両親は学校にクレームを入れ、娘の進路をむりやり、治安維持局に変更させた。
そして、急にルナは治安維持局員の、育成学校に行くハメになった。最初は、親の面子のためだったが、その知能と勘、そして、体術により大きな成果を上げることになった。
ルナが父親と同じくらいになった頃、父は病気で死んだ。
だが、ルナのあの夢はいつの間にか消えていた。
*
「どうかな……」
ルナはベンチに座り直している。
「夢か……」
「昨日、思い出したんだ。私は、こう言うのをやりたかったんだって。レイナは、あったの?夢は」
「……魔法に長けてたから、魔法を使ったマジシャンになるつもりだったよ」
「…………」
「でも、魔物騒動が起きるようになってから、魔法団を結成した。それに悔いはないと思ってる。仲間もいるしな」
「夢は、人それぞれなんだね」
レイナは、苦い顔をする。
「臭いこと言うかもしれないけど……」
「……ん?」
「夢、追いかけたほうがいいと思うぞ。ルナの人生なんだからな」
「…………ふ」
ルナは顔を綻ばせて笑う。
「レイナって、そんなこと言うんだ。もっと、現実的なこと言うイメージなのに」
ルナが笑った顔を見たのは初めてだった。
「そっか。行こっか。イリア」
ルナは再びベンチから立つ。
「え、いいんですか?局長」
「もう、その呼び方もいいし。敬語もいい。お互い、自由になろうよ。そんな、堅苦しいスーツじゃなくてさ」
「…………」
ルナは後ろに組んでいるイリアの手を、握る。
「行こ」
「…………うん」
*
ミミはあくびをする。
見ているのは、ゾロゾロと帰っていく記者たちだ。
「せっかく情報をリークしたのに。そういえば、全員は、告発書に触ったのかな」
ミミは指を鳴らす。
「魔生成・陰」
すると、その場にいる三人の頭が破裂する。
「あれ、意外と少なかった」
瞬間移動して、残ったマスコミたちの頭を、魔生成・陰で破裂させ、槍で突き刺す。
*
そして、ルナは王都に。イリアは治安維持局本部局に、辞表を提出した。
しばらくして、新たな局長。そして、魔警官副責任者にホームズがルナの辞表に書かれ、正式に指名された。
そして、記者のインタビューにホームズは応じた。
「あの人も困ったものです。唯一の同僚がいなくなったのは寂しいですけどね」
 




