悪魔の策略③
その頃、本部局では大事件になっていた。この件で判明している死者は十八名。そして、最大の欠点として、本部局長という最高職を担っているルナがいないのだ。
「局長、今どこにいるんですか?」
静かな局長室で、イリアはそうつぶやく。
(そういえば、この事件の前、私に席を外させましたけど……まさか)
「はいはい。ちょっといいかな?」
イリアはびっくりして、声のした方を見る。そこには、ミミがいた。
「……誰……」
「あー、そうだねー。君の大好きな人を誘拐した人かな?」
「……局長」
「そ。だからさ、ついてきてくれない?」
イリアは顔に怒りを浮かべて、ミミの胸ぐらを掴む。身長差は二十センチ以上もある。
「局長を、返してください」
「…………返さなかったら、どうなるんだい?」
ミミは冷静に聞き返す。
「あなたを、窓から放り投げます」
その言葉に、ミミは吹き出す。
「バカだね。私は魔法使い。窓から投げ捨てたくらいじゃ、死ねないでしょ?」
「…………」
イリアは押し黙る。
「ねぇ、無意味だからさ、離してくれない?そうしないとさ、私、手荒なことをしてでも君を連れ出さないといけないんだよ。後々、ルナから恨まれるんだよ」
「……させますか」
ミミはため息をつく。
「めんどくさ」
*
牢屋の扉が開いて、ミミが入ってくる。
「ふぅー。手荒な真似をすると疲れるねー」
ルナは、ミミが魔法で浮かせているものを見て、目を見開く。
ミミが放り出したのは、縄で縛られたイリアだった。
「やれやれ。ルナの秘書だから魔法使いかと思ったけど、まさか魔法が使えないとは」
ミミは落胆したかのように言う。
だが、イリアの周りに男が寄ってこない。高い身長と短い髪のせいだろうか。
「さて、ルナ。もう一回聞こうか」
ミミは地面に座り込む。イリアは首を動かしてミミを見る。
「私の実験台になるか、それとも、ここにいる男全員のおもちゃになるか。そして、これ以外の回答をした場合……」
ミミは腕から、触手のような魔物を出現させる。
「この秘書、どうしよっかな」
ミミは狂気的に、クククと笑う。
(どうするのかな。ルナ。おもちゃが嫌なら、大人しく実験台になるしかないね。だって、君は……)
「局長……!」
イリアが声を張り上げる。
「私のことは、いいですから!」
ルナは苦しそうな顔をする。
(でも、多分イリアを見捨てても、ミミはずっと私をここに閉じ込める可能性が大きい。それに、私を差し出しても、イリアはどうなるかが分からない)
「ミミ、一つ聞いてもいい?」
「…………」
「もし、私が服従した場合、イリアはどうなるの?」
「んー。そうだね。まぁ、対価がダメならダメだよね。イリア?だっけ?ちゃんと返すよ」
「……どこに」
「そんな詳細に言わなきゃダメか。治安維持局にしっかり返すよ」
ミミは面倒そうに立ち上がる。
「…………」
「局長……」
イリアが小さくつぶやく。
「もう、私のことは考えないでください」
「はい、お話はおしまい!」
ミミは大きく手を叩く。
「どうするの?ルナ。自分が助かるか、秘書を助けるか」
「……私は」
*
同じ頃――
局長秘書も行方不明という一件を聞きつけ、ついにレイナ魔法団が動き出した。
「ルナがいないってことは、最重要なものだな」
レイナとカノンが本部局の前につくと、そこにはマスコミたちが殺到していた。
近づくと、マスコミたちが食いついてきた。
「レイナさん、今回の事件、どう思いますか?」
「本部局長が誘拐されましたが、ミミの関与が疑われますか?」
マイクやレコーダーをレイナの前に押し付けるマスコミたちを、カノンが静止する。
「みなさん、撮影はおやめください」
レイナが本部局に入ると、目を閉じる。
「ロビーには、たくさんの魔力。ほとんどは『特殊魔法』の魔力。そして、上の部屋。多分、局長室。も同じ魔法だ。情報からしてミミだな」
*
「わかったよ」
ルナは小さくため息をつく。
「お、決まった?」
ウトウトしていたミミは体を起こす。
「局長……」
小さなイリアの声を無視して、ルナは続ける。
「私が実験体になる。だから、イリアを返して」
「……ふーん」
「この場でやって」
「めんどくさ」
ミミがぼやいて手を叩くとイリアを縛っていたロープだけになる。
「ほら。これで消えたでしょ?」
「うん……」
「じゃ、実験を始めるから出て」
ミミは鍵を開ける。
「あ、君たちはもういいや」
ミミが手を握ると、男たちの頭は全員破裂した。




