悪魔の策略②
ルナは、牢屋の中に放り出された。
そして、目の前には笑顔のミミ。
「やぁ、ルナ」
「…………」
ここが、蛇に飲み込まれた先だとルナは実感する。
「強硬手段に出たよ」
「…………ミミ」
ミミが手を叩くと、無数の男たちが出てきた。
「さぁ、ルナ。決めてもらおっか」
「……なにを」
「選択肢は二つ」
「…………」
「一つ目。わたしの実験台になるのを諦めて、こいつらのおもちゃになるか」
「…………」
「二つ目。さっきも言った通り、実験台になるか」
ミミは不適に笑う。
ルナは頭をフル回転させる。どちらに転んでもダメだろう。そう考えたが、この牢屋には脱出できるようなものがない。警棒も、おそらくだがミミが没収したのだろう。
「さぁ、選んでもらおっかな。ククク」
(まぁ、どちらにせよ自分を捨てる行為だろうね。それより、カノンの方が男たちは食いついたのかな?)
ミミはルナを見る。
(どんな策を組もうが無駄。ここには、武器もない。肝心の警棒も、わたしが前もって回収した)
「……わかった」
「……お、なにかな?」
「私は、どちらにもならない」
「…………は?」
ルナの予想外な回答にミミは目を細める。
「選ばないなら殺すとは言ってないでしょ?」
ミミは悔しそうな顔をする。
「……君が正しいよ」
(まったく。これだから正義の塊は……)
ミミは腕を、蛇のような体の口だけの魔物に変えると、ルナの首に噛みつかせる。
「どっちかにして!そうしないと首を食いちぎるよ!」
「約束も守れないの?ミミ。言わない方が悪いんだから」
「…………チッ」
ミミは大袈裟に舌打ちをすると、魔物を腕に戻す。
「あぁ、そうかい。じゃ、牢屋の端っこに気をつけてね」
ミミは連れてきた男たちを放置し、扉を閉めた。
*
ミミはフラフラと廊下を歩くと、壁に寄りかかるように膝から崩れ落ちる。
「なんなの、アイツ。許せない……」
(なに?服従しないって。まぁ、わたしにも責任はある。でも、そんな発想……取り調べで培ったのかな。まったく。どっかのコメンテーターみたいだよ)
「なにかないかな……ルナを服従させる方法……方法」
ミミはニヤリと笑う。
「そうだ。ルナの親しい人間を使えばいいんだ」
ミミはまた、クククと笑った。
*
ルナは牢屋で体育座りをしている。端には寄らなかった。牢屋の端には、男たちが血眼でルナを見ているからだ。時々、嫌な匂いと息遣いが聞こえる。
(肉食動物に囲まれた草食動物だな。これじゃ)
ルナは一つ息を吐く。
(わかることはある。ミミは絶対に私を利用する気だ。つまり、次に利用するのは、イリアかもしれない)
ルナの背中が、ゾワっとした。
(もし、イリアを利用するなら、私はどうするだろう……別に、私の代わりならいくらでもいる。こんな青二才より、歳が行った人の方が、持ち上げられるみたいなものだ)




