悪魔の策略
「ルシファーでさえも、レイナを殺せなかった」
ミミは机を指でトントンと小突く。
「なら、誰が殺せるか。一番の脅威は?レイナの弱点は……」
ミミはレイナを思い出す。
「お」
ミミが思い出したのは、魔法大戦争の時だ。
「そういえば、アイツ。一瞬だけカノンを見たような……ほうほう」
頷き、理解する。
「あー、仲間かー!」
クルクルと椅子を回す。
「じゃあ、誰を仲間にしよう……よし、思いついた」
ミミはある人物に電話をかける。
「あと一週間後、そこを襲撃するけど、いいかな?」
『……魔法団を招集するよ』
「え、密告かい?ルナ」
『違う。で、なんで私を使うの?』
「レイナの弱点はね、仲間だよ。だから、君を使う。魔法団の屋敷じゃ、レイナが目を光らせてるからね」
『……なんで、私を使うの?』
「友達じゃん。ね、お姉ちゃん」
ミミは不敵に笑う。
電話越しから、ルナのため息が聞こえる。
「あぁ、君の脳を一部いじくるけど、いい?」
『……は?』
「半分だけ意識を持たせてあげるから。で、その戦いが終わったら、わたしが魔生成を解除する。どう?君の地位が危うくなる危険性はないよ?」
『………………断る』
ルナは小さく言う。
「……ん?」
『断るって言ってるの!この、悪魔!』
ニコニコだったミミが、急に真顔になる。
「じゃ、強硬手段に出るしかなさそうだね」
ミミは電話を切ると、椅子を反対方向に回す。
*
急に電話が切れて、ルナは嫌な気配を感じる。
「ミミ……」
あの時の瞳は何をかたどっていたのかは分からない。
先ほどの電話の嫌な予感のため、局長室を出る。
「局長。どちらに行くんですか?」
イリアが言う。
「ちょっとね」
「私も、ご一緒します」
「いや、いいよ。イリアは部屋で待ってて」
ルナの予感は当たっていた。
ミミは両開きの扉を開けて、治安維持局本部局のロビーに入る。
「さ、一仕事やりますか」
前を歩いている警官の顔を掴む。
「魔生成・陰」
すると、顔から脳汁が吹き出して頭が風船のように破裂した。
それを見た女性が、甲高い悲鳴を上げる。
魔生成・陰――魔物を作るのではなく、破壊に特化した技。魔力を流し込んだ相手の細胞を破壊する。
「さぁ、ショーターイム」
ルナがエレベーターでロビーに降りると、そこには血の海だった。
目線の先には、鬼ごっこかのように女性を追うミミがいた。死んでいるのは、大体十人くらい。
すると、ミミの周囲を魔警官が囲む。
「ミミ!動くな!」
その声が、ロビーに響く。
「迅速だねー。さすがは本部局」
そして、魔警官たちは銃口を向ける。
「物騒なものだねー」
ミミは額に銃を当てる。
「魔生成・陰」
すると、局員全員が同時に頭が破裂する。
「連鎖」
「ミミ……!」
ルナは警棒を振って伸ばすと、ミミに向かう。
「おでましだー」
ルナが振ってくる警棒を、ミミはヒョロリとかわす。
だが、次の瞬間、ルナの警棒の一撃は、ミミの頭に当たる。
「っってー!」
ミミの左目が見えなくなっていた。
「……え?」
拭うと、手には血がついていた。
「え…………」
「びっくりした?」
(殴ったのは警棒。でもね)
ルナは警棒を回す。
「これは、非力な私の特注品」
ルナの特注警棒――警棒の中には、何本もの小さく、重い鉄芯が入っており、かなりの重量があり、ビール瓶以上の威力が出る。
ミミはふらつく。
「これ、不思議だねー。ククク」
そして、ルナはここぞと言わんばかりに、ミミに迫る。
「地獄に堕ちろ!悪魔!」
そう言った瞬間、ミミの腕が触手から、蛇に変わり、ルナに向ける。
(こんなの、薙ぎ払う!)
だが、その蛇はルナ以上の大きさに口を開く。
「え……」
蛇の頭はすぐに伸び、ルナを飲み込む。
「…………は、バカだねー」
ミミは腕を蛇から、自分の腕に戻す。
「さ、こっからどうしよっかな。局長さん」
そう言うと、ミミは消えていった。
無数の死体を残しながら――




