事件の終わり
ただ机と椅子があるだけの取調室。パイプ椅子に座り、足をプラプラと動かして、人を待っている。
「あーあ。ゲームが終わっちゃったよー。スリルが無い!スリルが無い!」
子供のように喚く彼の手には、手錠がかけられている。
カチャリと、静かな音がしてホームズが入ってくる。
そして、彼の向かいに座る。
「君、名前は?」
「……それ、どうでもよくない?」
「……言え」
低いその声に、彼は答える。
「まぁ、ボマーとでも言おっかな」
「…………分かったよ」
その言葉にホームズは呆れて取り調べを始める。
「『特殊魔法』に気づいたのはいつ?」
「いやー、万引きしたお菓子の袋を開けたらさ、ちょっとした爆発が起きちゃってね。で、ちょうど魔歴の授業で特殊魔法のところをやったから、それに当てはめたら、ビンゴだったの」
「…………」
「で、他に聞きたいことは?」
「……どうして卵を使ったんだ?」
「僕ね、思いついたんだー。身近なもので壊しやすいもの。で、これなんだよ。お店にいっぱい置かれてて尚且つ、ルーレットみたいにランダム性がある。誰がその卵を買うか、もうさ、爆発が起きた時の新聞を見るのがたまらなく楽しみだったよ」
言い終わると同時に、ホームズの拳が、ボマーの頬に当たる。その威力で、椅子ごとボマーは倒れる。
「お前、クズなんだな」
「…………」
「こんなクズ、お前しかいないぞ」
一転して、ボマーは笑顔になる。
「え、褒め言葉?ありがとう!」
すると、扉が開く。
「……ん?誰?」
すると、その男はボマーの胸ぐらを掴むと、宙に吊り上げる。
「お前、何人死んだか分かってんのか?」
「……さぁ」
すると、彼はボマーを壁に叩きつけて怒鳴りつける。
「18人だぞ!分かってんのか!」
「18人……」
ボマーは歯を見せて不適に笑う。
「いいねぇ。僕の歳とおんなじだぁ……ッハハハハハ……アハハハハ!」
彼は乱暴にボマーを離す。
「……魔創家の娘さんに、言うことは?」
「……軽傷で残念だったよ。僕からしたら死ぬのがベストなのに」
その言葉を聞き、彼は部屋を出た。赤いマントが揺れていた。
*
「カノン」
廊下を歩いていたカノンを誰かが引き止める。
「…………あ」
赤いマントに、輝く虹色の瞳。
「レイナ!」
「やっと病院から外出許可が出たんだ。で、新聞で事件を嗅ぎつけて、今ここにいる」
カノンは反射的に手を広げたが、やめた。
「……この事件で、より魔法が身近になりそうだな」
レイナのその言葉に、カノンも静かにうなずく。
「そうだねミミの魔法大戦争の記憶が少し薄れてきた今、さっきの号外じゃ、『悪魔の再来』とかあったもんね」
「……そうか。ところで、その悪魔を確保したタクとアヤは?」
「あぁ、二人でお祝いだって、なにか街で食べ物を食べに行ったよ」
「そうか」
「あ、レイナの復帰と合わせてお祝いしない?」
「プリンは呼ぶなよ。あいつ、食べ物全部食べ尽くしちゃうから」
*
翌日――
本部局の局長室で、タクとアヤ。そして、プリンがいる。
「感謝状。本事件で犯人逮捕に繋がりましたので、感謝として、これを贈ります」
「やったー。感謝されちゃったー!」
プリンはカフェで感謝状を見せびらかす。
「まさか、お前が逮捕に貢献してたとは」
レイナは珍しくプリンを褒める。
「なんとね、私の告げ口がなかったら、これ、魔法事件で操作できなかったんだって」
タクとアヤも表彰状を掲げる。
「そうだな。両方、よくやったな」
レイナとカノンは小さく拍手をした。




