新たな被害
トヌーに電話をする前に、電話が鳴る。
ホームズは出る。
「はい、なんでしょう」
『ルナです』
その言葉に、ホームズは目を見開く。
「局長。どうされましたか?」
『大公の娘さん、意識があるって。で、話を聞こうと電話しようしてたかもしれないけど』
「…………はい。そのつもりでした」
『じゃ、いい情報が入った』
「……それは……?」
『卵だよ』
「…………卵?」
『トヌーが言うには、娘さんは卵を割ろうとしたら、爆発したって言ってた。それって、今までの事件と辻褄が合わない?どの事件も被害者も、キッチンに立ってて、それに、野菜とかが散らばってたんなら』
「…………辻褄が合う!」
ホームズは魔警官全員を集める。
「今すぐ、全ての青果店の卵を見張れ!今までの被害者の共通点は、料理中!そして、大公の娘さんは、卵を割ろうとしたら、爆発が起きたそうだ。つまり、一連の事件は、卵による爆破事件!もう一度言う!全ての青果店の卵を見張れ!」
翌日、赤茶色のブレザーを羽織った男子学生が青果店を覗くと、卵売り場は魔警官によって見張りがされていた。
「おいおい。ふざけんなよ。いや、さては俺の手口に気づいたか」
すると、彼はニヤリと笑い出す。
「いいじゃん。でも、俺だって気づくかな。あそこには爆弾卵が隠してある」
カノンはそれを見つける。
「……ん?」
(怪しい動き)
そして、彼が動き出すと同時に歩き出す。
「ちょっと後を付けてみ」
「カノンさん、どこに行くんですか?」
「え……」
タクに声をかけられ、思わずそっちを見てしまう。ハッとして、彼がいた方を見るが、人混みで見失っていた。
「…………っ」
(逃した……!でも、魔警官の人に報告しないと)
「二人とも。第一局に戻るよ」
*
カノンはホームズに報告する。
「その学生は……その、赤いネクタイで、なんか、赤茶色のブレザーで……」
「あぁ、西パレイド高校ですね。その制服の特徴は」
ホームズが言う。
「いや、でも、学生が犯人だなんて」
ホームズは信じがたいようだ。
「カノンさん、それは行き過ぎでは……」
「……でも、あの目はミミと似てました。完全に、悪意の目です!」
「そう言われましても、目つきだけで犯人だと言われましても……」
これじゃ、完全に平行線だ。
「とにかく、動いてくださいよ」
「……確定的な証拠がなければ」
「証拠証拠で動いてるんじゃ、ダメなんですよ。これじゃ、更なる犠牲者が出てしまいます!」
その言葉に、イリアを思い出す。
(あいつも、こんなところがあったな……)
ホームズは頭をかく。
「…………すいません。それは、できません」
「…………」
「レイナさんがいれば、出来たんですよ。一応、私の上司ですし」
「…………」
カノンは悔しそうな顔をする。
「すいませんが、確定的な証拠がなければ……」
すると、轟音と共に風が来る。カノンは走って窓を見る。
「……爆発!」
あそこは、さっきカノンが男子学生を見かけた青果店だ。
「そこです!そこで!その犯人らしき学生を見かけました!」
「………………そうですか」
*
「あれ……」
男子学生は、学校の窓の外で立ち上る黒煙を見ている。
「誰かが卵を落としたかな」
死者が、八名ほど増えた。これにより、この事件は死者十八名、怪我人は一名である。
「でも、卵が警戒されてるから次の作戦を考えないと。簡単に壊せて、なおかつ身近なもの……うーん」
一刻も早く、この男を止めなければいけない。




