犯人は戻ってくる
トヌーは病院に入り、特別室の病室に入ると、そこには、包帯が巻かれた女性がいた。
「…………シルレさん」
「…………トヌーさんですか?」
「え……」
トヌーは不思議がった。今までの事件では、死亡していたのに、なぜか喋れている。
「まさか……まだ、『特殊魔法』は完全じゃないのか」
「トヌーさん、何を言ってるんですか?」
シルレが言う。
「あぁ、ごめんなさい」
「だから、敬語は……」
「ごめん。で、怪我は?」
「ちょっと重い火傷ですよ」
「……すいません。僕の不手際で」
「…………フフ」
シルレは急に笑い出す。
「私、思い出しちゃいました。私が生きてる意味が……」
トヌーはシルレの手を握る。
「そんなことない。初めて会った時、言ったでしょ?『それは、先祖がやったことで、君には関係ない』って」
「……そうでしたね」
目元の包帯に、涙が滲んでいた。
「トヌーさん。あの時のこと、言っても良いですか?」
「うん……」
「あなたに、一目惚れでした」
*
魔法団と魔警官が王都に着くと、そこには新聞売りがいた。
カノンはすぐさま走り、新聞を一部買う。
「…………え」
「どうかしました?」
ホームズがカノンの見ている新聞を見る。
「……!」
『ついにターゲットは魔創家へ!ムーズへの恨みか!』
ホームズは並んでいる魔警官の全員に言う。
「この新聞に、大公の娘さんが、被害に遭ったという情報が入ってきました」
「…………‼︎」
全員、その重大さに気づく。大公。魔創家だ。この世に魔法を表した魔歴史上最高最悪の研究者、ムーズが先祖の魔創家。
「全員!早急に逮捕するぞ!怪しい連中には職質だ!」
それから、魔警官や魔法団を分散させ、学生や商店街の人たちに聞いたが……
「なんで、情報が一個もないんだ」
夕暮れ、ホームズはそうぼやいた。
「……トヌーさんに、聞いてみようか。ま、話せればの話だが」
ホームズは電話のダイヤルを回す。
*
「ほへー」
男子学生の一人は、ボロボロに燃え尽きている一件目の現場を見る。
「ん、君、どうしたの?」
「あぁ、いえいえ。最近、物騒だなって」
「あぁ、そうかい。君も気をつけて帰りなさい」
「うぃ」
そう言って、彼はそそくさと離れる。
(やれやれ。これから面白くなるのに。なんで軽傷で済んじゃうかな。あの娘は。娘が死ねば、捜査の手が伸びるのにな。さてさて、いつバレるかなー。それにしても、まさか貴族の手に安物の卵が渡るとは。これは予想外だったな。いや、て言うが、手応えがなかったから、もっといっぱい魔力を込めた方が良かったかな?)
彼は青果店に寄り、たくさん並んでいる卵を見る。
(さてさて、どれにしよっかなー)




