アイツノオカゲ
二年前、魔法大戦争の直後のことである。
ホームズとイリアは何か争いをしている。
「だからですね。ホームズさん!先に、ネペロ地方の復興を早急にすべきです。あそこは……」
「儲からないところを復活させてなにがある!俺はオドラル地方だ。魔法大戦争で失った利益を、オドラル地方で復活すべきだ!」
かつて、二人は同じ部署の同期だった。だが、折りが合わず、こうして争いは絶えなかった。不満があると、上に噛み付くイリアと、手柄を挙げて上の言うことも聞くホームズは違った。こうして言い争いをするのも、日常であった。
「それは、お前の独断だろ?」
ホームズはキッパリという。
「私情を持ち込むな。オドラル地方の復興は上からの指示だ。いいか?イリア。この世界では上の言うことを聞けば出世する。覚えとけよ」
それからイリアは、ネペロ地方の復興の署名を集めたが、賛成してくれる人は一人もいなかった。
そして、そのことが上の人間の目に止まり、前から嫌われていたこともあり、窓際部署に移動させられてしまった。
*
「思えば、私の恩人は局長です」
イリアは、粉を入れたルナのマグカップにお湯を注ぐ。
「……なるほど。ていうか」
ホームズはマグカップを見る。
「そのカップ。どこで出したんだ?」
「え、普通に同じのをいくつか買ってるんで。ここに常備してるんですよ」
イリアは腰につけているポシェットを見せる。
「特定の場所にあるものを自由に取り出せるポシェットです。魔歴の本を読んで作りました。局長の必要なものをすぐに取り出せるので」
「普通にって……」
「局長って、マグカップが好きらしいんですよ。この前なんて、大きなカエルの顔が書いてあるマグカップを……」
ホームズは長くなりそうだと感じて、マシュマロを最後の一つ食べてイリアから離れる。
「あ、ホームズさん。マシュマロ返してくださいよー!」
「もう食っちまったぞー」
遠くから、ホームズの間延びした声が響く。
イリアが戻ると、ルナは電話を切っていた。
「今度は、どんな電話だったんですか?」
「王都にある第一局で、魔法探知犬が、魔力を嗅ぎ分けたって」
「……それって」
「うん。正式に魔法事件として捜査ができる」
ルナはため息をつく。
「まったく。プリンめ。ま、あいつのお陰かな」
4セリフ小説② ルナとイリア
「局長、ココアです。残念ながら、マシュマロはホームズさんが食べちゃいましたけど」
「え、ホームズが食べちゃったの?やば、局長命令で買わせに行こっかな」
(怖い怖い怖い)
「局長。早まらないでください」




