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会議と告げ口

「まぁまぁ。座ってよ」

 トヌーが指差したのは、部屋の端に寄せられた四つの椅子と長机。

「ルナが来るのは時間通りだから。トイレはこの部屋出て左にまっすぐで突き当たりを、左に曲がったところね」

 そう言ってトヌーは、自分の椅子に戻る。

「…………」

 カノンはトヌーを見る。

(あの人、精霊族。私と同じ。多分、長寿型の精霊族)

「…………カノンさん?」

 アヤが止まっているカノンを呼ぶ。

「あ、どうしたの?」

「いえ、なんか止まってたんで」

「あぁ、そっか」


 そして、午後一時。扉が開き、入ってきたのは白いオリーブの刺繍がされた白衣のような長い上着を羽織ったルナが現れた。

 ルナは真ん中の椅子に座る。

「魔警官と捜査課。集まってくれてありがとう。あっちにいるのは」

 手で魔法団を指す。

「レイナ魔法団。まぁ、魔警官なら知ってるよね。さて、本題に入ろっか。ホームズ」

「はい」

 ホームズが指を鳴らすと、一斉に資料が全員分、机の上に置かれる。

 ルナは資料をめくる。

「今回の事件は、王都パレイドで起こった。目撃情報はなし。なぜか?そこにいる全員が爆死してるから。それに、被害を受けたところは、主婦、老夫婦、一人暮らしの男性。こう見ると、共通点はないように思える。つまり、無差別な犯行である可能性が高い。死者は十名。誰もが爆死」

「…………」

 全員が黙り込む。

「そして、人以外の共通点が見つかった。人はバラバラだけど、調べたら、全員がキッチンに立ってて、その近くで、肉や魚。野菜が散乱してた。つまり、なにか。食べ物が『特殊魔法』で爆弾に変わった可能性が高い」

 魔警官全員がザワつく。


 カノンは魔警官たちがザワつくのを見る。

(なるほど。ほとんどの魔警官は、現場に残った魔力を感知できなかった。だからレイナが必要だった。微細な魔力を感知する虹色の瞳を。それに、魔警官でも見つけられないくらいだから、きっと、この事件の「特殊魔法」は反比例型の「特殊魔法」)

「特殊魔法」には、とある法則がある。「特殊魔法」が強ければ、消費する魔力は比例する。だが、稀に強力な「特殊魔法」なのに、消費が少ない場合がある。これを、反比例型の「特殊魔法」と言う。


               *


 ルナのいない局長室で、イリアは紅茶を飲んでいると、会議を終えたルナが戻ってきた。

「局長。お疲れ様です」

 イリアは立ち上がり、一礼をする。

「あぁ、おつかれ」

「どうでした?会議」

「レイナがいないから、全然(はかど)んない。レイナがいないと、初歩的な捜査は始まらない」

「…………こなかったんですか?」

「あぁ、副団長の人……カノンって言ったっけ。あの人に聞いたけど、まだ外出していい状態じゃないって」

 上着を脱いで、机に置く。

「あれじゃ、未解決になっちゃう。治安維持局(わたしたち)は証拠がなければ動けない」


                *


「うわー。ひっどい有様」

 王都パレイドは曇り空。一件目の現場に、ジュースを飲んでいるプリンが現れる。目の前には、治安維持局の局員がいる。

「お、聞いてみよ。さーせーんっ」

 プリンは局員に近づく。

「……なにかありました?」

「なんか、ここら辺で爆発でもあったんですか?魔法ですか?」

「あぁ、いまのところ、魔法も出てきてないそうですから、おそらく、爆弾での」

「バカ!んなことしゃべんな!」

 横にいたもう一人の局員が注意する。

 プリンは目を細めて、焼けこげた建物を見る。

(…………なるほど。反比例系の「特殊魔法」か。稀に見るやつだ。確かに、威力を調節すれば、爆弾の爆発になる。でも、ところどころ違う。爆弾は焼けこげた匂いがするけど、魔法の場合は、魔力を大きく増幅させて爆発するから、火薬とかの匂いはしない。つまり、これは魔法によって引き起こされたもの。ミミが一枚噛んでるのか?)

 プリンはジュースを飲み切って、注意した局員に近寄る。

「ルナに伝えてください。これは魔法で引き起こされたものだって」

 そう言って、プリンはブティックに帰って行った。

「…………ルナ………………それ、局長の名前じゃないか!」


             *


「そうか……わかった」

 ルナは叩きつけるかのように、受話器を置く。

「局長?」

 イリアが言う。

「プリン…………あいつ、なんなの。急に現れては告げ口して。それに、魔力を感知する犬がいるなら使えって。どこまで知ってるの?いや、それとも勘?」

 ぶつぶつとルナが言う。

(きっと、疲れてるんだ。ココアを淹れよう)

 イリアが給湯室に向かうと、マシュマロを口に入れているホームズを見た。

「ホームズ次期局長!」

「……次期局長は……………って、イリアか」

 ホームズは気まずそうに顔を合わせる。

「マシュマロ、局長のココアに入れちゃいましたけど、大丈夫でしたか?」

「どうりでマシュマロが減ってたのか」

「まだあります?」

「あと一個だ」

「じゃ、それください」

「…………わかったよ」

 並ぶ二人の身長は同じくらいだ。どちらも、背は高い。

「……それにしても、驚いたな」

「なにがですか?」

 ホームズの言葉に、イリアはココアの粉を掬う手を止める。

「二年前までは、言い争ってたのにこうしてお前は局長秘書としてイキイキしてるところ」

「………あなたのお陰ですよ」

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