勝利
爆風が二人の髪を揺らす。
「魔力、なし」
レイナがつぶやく。
「これでアイツを倒せたな。よし、タクとアヤを……!」
急にレイナは腕を抑える。
「あ、切られたところ」
「後になって痛みが来た」
「じゃ、包帯巻いてあげるから腕出して」
「先に二人を助けんのが先だろ」
腕を押さえながら言う。
「そうだった。消毒……」
「いいから。ここから西の病院に運ぶから。俺も飛行魔法で着いていく」
*
「て言うのが、ことの顛末」
病室でレイナがプリンに言う。
「てか、なんでお前は来なかったんだよ」
「しょうがないじゃん。三時間くらい鎖で縛られてたんだから」
「……そうだな。タクの話じゃ、タルタロスとか言ってたからな。カノンが言うには、神話に出てくる奈落の神らしい。多分、拘束系の『特殊魔法』だな」
「なるほど。ところで、カノンちゃんはー?」
「一足はやく退院した。怪我が軽かったからな。もうそろそろタクとアヤも退院する」
「へぇー。じゃあ、レイナのいないレイナ魔法団かー」
「寒い日なのに変なシャレを持ち出すなよ」
レイナは震えるそぶりを見せる。
「でも、まだタルタロスがいる。『魔王の駒』はまだ完全には全滅できていない」
「……て言うかさ」
プリンはレイナのベッドに座る。
「なんで、カノンちゃんのアイカラーチェンジで回復しないの?その方が入院代浮かない?」
「あのなぁ……」
レイナは言う。
「カノンに負担はかけさせたくないんだよ」
「……のろけはいいや。お腹いっぱい」
そう言ってプリンは、病室を出て行った。
*
「すごい有様。流石」
銀髪の女性は、レイナの魔弾やルシファーの光の光線で更地になった街を見る。
「いつぞやの街並みはどこへやら」
土を拾って、撒くように投げつける。
「……やっぱり、ミミみたいにはならないか」
すると、女性は咳き込むと、ポケットから薬を取り出すと、飲み込む。
「……ハァ、全く。病気を持つと苦労するよ」
その女性の脳裏に、レイナがちらつく。
「アンタみたいに私は慣れなかったんだから」
*
ミミはクルクルと椅子を回す。
「あの戦いから一夜明け、魔法団にも笑顔が戻ってきた頃でありますが」
急に回転を停止し、ある人物を見る。
「君は、機嫌が悪そうだねー」
ミミの目の前には、体や顔がところどころ欠損していて、目を覆いたくなるほどの姿のルシファーがいた。
「…………どうして、私を助けたんですか。ミミ様」
「だってさ、まだ本気見せてないでしょ?君。だからさ、本気さえ出せば面白くなると思ったんだよね。ね、そう思わない?」
爛々とした目でミミがそう言う。
「ミミ様……あの子を生き返らせてくれるんでしょうね」
「なぁに。私は約束を守るさ。そこは安心しなさい」




