王の顛末
レイナとカノンはルシファーに向かう。
「……甘い」
手を掲げて、タクとアヤに放ったものとは五倍の量の光の光線を放つ。
「多すぎる」
レイナはその飛んでくる光線に狙いを定める。
「魔弾・蒼」
これが、レイナの「特殊魔法」である。魔力を圧縮させる爆発式の魔力の塊である魔弾を打ち出す「特殊魔法」。強さは成長次第である。
レイナが青い魔弾を放つと、すぐさま爆散して、高密度の光の光線を打ち消した。
「……!」
カノンはそれを見て、何かを思いつく。
「レイナ!」
「あぁ、分かってるよ。お前の考えてることなんてお見通しだよ。何年見てると思ってるんだ」
ルシファーは腕を光の剣にして襲いかかる。
(重要なのは、どうやってやられるような演技をするかだ)
カノンより先に剣を抜いたレイナが躍り出るが、すぐに剣がぶつかる。
そして、激しく撃ち合う。
(やばい。重い。これ以上、粘ってたらやられそうだな)
カノンはポシェットをまさぐる。
(すぐにレイナを退散させたら怪しまれる。つまり、どれだけレイナを粘らせられるか)
そして、何かの瓶をルシファーに向かって投げつける。
レイナとの撃ち合いに夢中なルシファーは、顔にその瓶を喰らう。
(なにも見えない。水の瓶か。私の視界を奪うために……)
そして、レイナはルシファーの右胸に剣を刺すが……
「硬い……」
剣は先端しか刺さっていなかった。
(石かなんかの魔物を仕込んでんのかよ。コイツは。他の「魔王の駒」より賢い。やっぱ、カノンの考えた戦術しかないってか)
だが、視界が晴れたルシファーの剣が振り下ろされる。
「やば……」
避けようとして背中を逸らしたが、ズキリと痛みが走る。
(刺さった瓦礫の痛みが……)
痛みで動けないでいると、ルシファーの剣が、レイナの腕に刺さる。
そして、カノンが参戦する。
(合図か)
レイナは飛行魔法で浮き上がる。
(カノンは大丈夫だとして、向こうで伸びてるタクとアヤに気をつけないと……)
レイナは息を整える。
それに気づいたルシファーは、光の光線を放とうとするが、カノンにより、腕を切り落とされる。
「魔弾融合」
レイナは腕を上げて指を広げる。
「魔弾・定」
右手に、魔弾・定。
「魔弾・超」
左手に、魔弾・超。
そして、腕を合わせると、その魔弾はやがて大きくなる。
「追尾式・高出力魔弾」
ルシファーに向けて、その魔弾を放つ。
「この……」
すぐさまルシファーは腕を再生するが、カノンの猛攻が炸裂する。
「くそ。どけ」
「させない!」
(このままでは、瞬間移動もできない。集中力が持っていかれる)
だが、魔弾に向かって背中を向けているのはカノンだ。
(まぁ、いい。先に当たるのはコイツだ)
だが、カノンの足先に魔弾が来た瞬間、それは逆転することになる。
レイナがルシファーの背後に瞬間移動して、思いっきり背中を蹴り飛ばし、フラフラと動く。
(なにが……)
すぐにレイナはカノンの手を握り、瞬間移動で遠くへ逃げる。
そして、ルシファーが魔弾を包む。
「私は……」
『お前、生きてる意味がわかんねぇな』
いじめてきたやつの、その言葉が頭をよぎる。
「私は……お前らを殺したのだ!」




