レイナ魔法団VS「魔王の駒」④
ミミの前に、レイナ、カノン。その少し後ろにタク、アヤがいる。
(どう来る。ミミ!)
思っていることは、全員同じだった。
レイナは剣を握り直す。
(少しでも動いてみろ。お前の首をはねる。そして、四年間の全てに終止符を打つ)
ミミは再生した腕を広げたり閉じたりしている。
「うん。腕は正常」
顔をあげ、ここにいる魔法団全員を見る。
「みんな顔が怖いねー。ね、気楽にやろうよ」
ミミは自身が殺害の対象と知らないかのような口ぶりである。そして、槍を拾おうと足を動かすと、レイナが刹那に襲いかかる。
(もらった!)
だが、レイナはすぐに足を動かして後ずさる。すると、すぐさまミミの周囲を光の光線が覆った。
(これは、あの時、街を覆い尽くしたあの光線!)
煙が晴れると、無傷のミミがいた。
「……この光線は」
そして、ミミの背後にルシファーが現れる。ミミはすぐに振り返る。
「やぁ、ルシファー」
「…………死ね」
そして、ルシファーは手刀でミミの首を刎ねる。
ミミの体はすぐさま倒れる。
「は…………」
全員、呆気に取られていた。
*
「…………っはははは!」
ミミの体が立ち上がり、首を再生する。
「まさか……ある意味計画通りだね」
そう言うと、ミミは瞬間移動で消えていった。
ルシファーは、魔法団全員を見る。そして、レイナはルシファーの胸についているマークを見る。
「…………キング」
これが、ミミの率いる精鋭の上級魔物集団「魔王の駒」最強にして最高の座、キングである。
まず、最初にルシファーに襲いかかったのはレイナだった。
だが、ルシファーは腕から光の光線を出し、レイナにぶつけると、レイナは吹き飛んで瓦礫に入り込む。
「まずは一匹。私は、こいつらを駆逐し、ミミ様の元に戻る。全ては……」
ぶつぶつとつぶやくルシファー。
『君、いじめられてるの?』
『じゃあさ、私が助けてあげるよ』
『ごめんね。負けちゃった。でも、次。ここであったら、リベンジしようね。作戦立てようね』
よぎるその声は優しく、ミミのものではない。
「全ては」
ルシファーは高く腕を掲げる。また、あの光線を打つ気だ。カノンはタクとアヤ、二人に駆け寄るが、すぐにルシファーは呪文を唱える。
「光の粒!」
カノンは剣を抜いて、二人に向かって飛んでくる光の光線を防ごうとするが、盾のように剣を掲げてもすりぬけて、カノンの腹に光線が命中する。
「…………った」
すぐに身を翻し、光線を最低限の痛みで回避すると、光線は地面に落ちて消滅した。見ると、タクもアヤも避けている。
(レイナがやられたのは痛い。早く戻ってくるといいんだけど…………いや、出てこないだけかもしれない)
レイナは瓦礫の中にいた。
だが、背中に尖った瓦礫が深々と刺さっている。
(当たりどころが悪すぎた。出れない。だが、幸い、俺はルシファーの視界には入っていない。虹色の髪を使えば、一気に脱出はできる。だから、ここで奇襲できるチャンスを待つしかない)
カノンは目の色を変える。
(なるほど。奇襲か……)
「アイカラーチェンジ・真紅の眼差し」
「…………ん?」
カノンの異変に、ルシファーは不思議がると、すぐさまカノンが襲いかかる。
「……速い……なるほど。そういう『特殊魔法』か」
ルシファーは腕から、光の剣を取り出すと、カノンの剣とぶつかると、ルシファーの剣が傾く。
「…………重い」
(なるほど。身体強化か。だが、この魔力。まだ種類があるな)
ルシファーは光となってカノンから離れる。いわゆる、瞬間移動だ。
*
「ねぇ、どうすればいいと思う?」
アヤがタクに聞く。
「知らない。でも、なにかしら、冷静を失うようなことをしないと。あれじゃ、僕らは足手まといだから」
カノンが近づくと、ルシファーは光の玉を打ち上げる。
「光花火」
「アイカラーチェンジ・光の眼差し」
すぐに瞳の色を白に変え、光を光で打ち消すと、ルシファーのパンチが来る。カノンは腹を抑えて後ずさると、すぐに咳き込む。
「やはり、瞳の色で性能が違うようだな」
カノンは耐えきれず、地面に膝をつける。
「赤なら、この打撃を耐えられたはずなんだけどな。やはり、赤以外は普通の人間の性能なんだな」
すかさずタクとアヤ、二人が向かう。
「邪魔者が」
すぐに光の光線を、さっきとは比べ物にならないぐらい放つ。
最初こそ避けていた二人だが、すぐに命中して吹き飛んでしまう。
「……さて、どうする。このまま降伏するか?そうすれば、命だけは助けるぞ。まぁ、お前らは『学習するもの』に放り込まれるがな」
「…………はぁ?降伏?」
カノンは背中のポシェットから、注射を取り出すと、自分の腕に打ち込むと、すくっと立ち上がる。
「まだあるんだよ。切り札が」
「……どうして」
「あらかじめ、鎮痛剤を作っておいたの」
そして、カノンは瞳の色を紫色にすると言う。
「なにが降伏だか。聞いて呆れる」
「バカが。お前らのレイナはとっくに瓦礫の向こう側だぞ」
「それは……」
カノンはすぐに口を閉じる。
(やっぱり、この紫色はダメだ。有る事無い事言っちゃいそう)
すぐさま、ルシファーに向かう。
ルシファーは光の剣を出すが、カノンの剣の一振りで、吹き飛ばされる。
「…………なぜ」
(……魔力……あれは武器生成の魔力……今か)
瓦礫の中にいたレイナは髪の毛を虹色にして、瓦礫を突き破り、高速でルシファーに迫ると、すかさず剣を抜いて、心臓に剣を突き刺す。
(心臓は、上級個体唯一の弱点!これを突けば、絶命する!)
ルシファーは、白目を向いて倒れる。
「……いててて」
レイナは、腰を抑える。
「レイナ。大丈夫?」
カノンは目の色を元の青色に戻し、レイナを気づかう。
「血、出てるじゃん」
「いや、瓦礫が刺さった。多分、深い」
ポシェットから、包帯を取り出すカノン。
「いや、カノン。まだ速い」
「…………え」
レイナはルシファーを指差す。いつもなら、消滅しているはずだ。
「コイツ、まだ生きてるぞ」




