レイナ魔法団VS「魔王の駒」②
「大丈夫?レイナ」
カノンがふらつくレイナを気づかう。
「あぁ、七秒だからな。しばらくすれば回復するから、そこは安心しろ」
*
「あーあ。やられちゃったかー」
ミミはのんびりと椅子に座る。
「ミミ様。気楽にしている場合ですか?」
ルシファーが心配そうに聞く。
「大丈夫だよ。巴御前がいなくてもまだいるから。でも、驚いたな。まさか、巴御前が『特殊魔法』を使わなかったとは。やっぱり、東洋の文化も反映されるのかな。あとはナイトとポーン、ルーク。そしてキングだね」
ミミは顎に手を当てる。
「やっぱいいや。ルーク以外は捨てるか」
「…………ミミ様。それは」
「君は必要ないってこと。強いだけじゃ、ダメなんだよね。あぁ、レイナ達に勝てたなら私についてきてもいいよ。ま、勝ったらね」
そう言ってミミは立ち上がると、コウモリのような姿になって飛んでいった。
「…………」
ルシファーの銀色の目は、次第に真っ赤になる。
「あぁ、そうか。必要ないか」
ルシファーは右手を掲げると、真っ白な光の光線を右手から放つ。
「アヤ!隠れて!」
タクは大きな声でアヤに知らせる。
「…………え」
すると、たくさんの光の光線が街を襲う。その光線は音もなく家を貫いて壊し、レンガで舗装された道をえぐって地面を露わにさせていた。
「おいおい。なんだよコレ」
レイナはバリアを解くと、そこには魔法大戦争を彷彿とさせるほどの瓦礫の山と土埃だった。
「どう考えてもアレは、高出力の魔法。ただものじゃない。それに、鎖で囲われたこの街を壊したってことは、相当な威力だ」
*
突然、アヤは苦しみ出す。うめき声をあげて、頭を抑えている。
(まさか、まだ……)
「おやおやおやー?」
現れたのは、上半身が人間、下半身が馬の体をしていて、胸には入れ墨のようなチェスのナイトのマークがある。
「……ナイト」
「駒で呼ばれるのは嫌いじゃないな。コレと言った名前がないからな」
「じゃあ、ケンタウロスでいい」
タクはアヤの背中をさすりながら言う。
「あぁ、それだそれだ。家ばっかりだったから開けて良かった良かった」
タクはここから逃げる手段を考えていた。レイナが言った言葉がよぎったからだ。
『俺たち以外のやつらが来たら逃げろ』
(逃げられるのかな?足は馬だけど)
「……アヤ、ここから走れる?」
何も言わず、静かにうなずく。
「なら、逃げるよ。多分、勝てないと思う」
二人は急いで後ろを向いて走る。
「あれ、逃げちゃうのか?」
ケンタウロスは頭をかく。
「ま、いいか」
すると、ケンタウロスの胸を鋭い鎖が貫くと、鎖はたちまち、走って逃げる二人に向かう。
そして、鎖はタクとアヤの足を絡めて、二人を転ばせる。
ケンタウロスの前に、青い肌に、長い髪と髭の大男が現れる。
「タルタロス……」
「ルシファーのせいで、この街の鎖が無くなったからな。だから、こうして自由なのだ。悪いが、お前が邪魔だったからな」
「……この俺を殺したんだ。高くつくぞ」
そう言うと、ケンタウロスは塵のようになって消えた。
「……死人に口なしだ」
「アヤ!大丈夫?」
倒れたアヤを気づかうタク。自分も同じ目に合っているのに。
アヤは後ろを振り向く。タルタロスがゆっくりと近づいてくる。
「これ、どうすれば……」
*
レイナとカノンは、大きな怪物の前の前にいる。
「…………ポーン」
灰色の猫のような頭に、灰色の人間のような体をしていて、額にチェスのポーンの駒のマークがある。
「まさしく……」
カノンは剣を抜く。
「神話に出てきた、トロル」




