レイナ魔法団VS「魔王の駒」
レイナはまたしても後退するしかない。
(まだ他の「魔王の駒」がいるのに、ここまでとは)
巴御前はナギナタを立てて立ち上がる。
(いや、待てよ。狙いはアイツじゃなくてもいいのか)
今度は走って巴御前に向かう。すかさず、彼女のナギナタが振り下ろされるが、レイナはそれを正面からギリギリで受け止める。
(重い……けど、受け止めた。そっちもすぐには動かせないはずだ)
すかさず、剣の振る向きを変え、ナギナタを無理やり吹き飛ばす。
レイナは反動で、半回転をしてしまう。お互い、隙をさらす。だが、今ではレイナが優勢だ。巴御前はナギナタを失い、裸同然。
だが、先に動いたのは相手だった。すかさず、足蹴りがレイナの顔に飛んでくる。
「そう来るか」
だが、反動で動けないレイナに、首に足の蹴りがヒットする。
足で踏ん張り剣を振り返すと、巴御前の顔に僅かながらに切り傷が走る。
(一撃!)
それに自信をつけ、剣を振った後は足で蹴りを返すが、腕でガードしていて弾かれた。機転を効かせ、レイナは警戒で瞬間移動をする。
お互い、睨み合う――
巴御前はナギナタを拾おうとはしない。すぐ後ろにあるのに。
(ナギナタを拾わない。そして、違和感がある。こいつは、「特殊魔法」を使っていない。ナギナタを拾わないと言うことは、ナギナタは「特殊魔法」に関係ないのかもしれない。そして、魔法さえ使っていない…………いや、これがコイツの生まれた国の文化か。正々堂々、小細工なしの撃ち合い……だとすると、大義だ)
「…………おい」
レイナが声をかける。
「…………」
「それは、文化ってやつか?本気でぶつかり、小細工はしない。そういうことか?」
「……そうだ。妾はそうして幾千の敵を葬ってきたのだ」
「…………」
レイナは剣をギュッと握り直した。
「なら……」
「…………」
「今までの俺の小細工の詫びとして本気を見せてやろう」
「…………ほう」
「だから、そっちもナギナタを使え。これじゃ、公平ではない」
「なるほど」
振り向き、ナギナタを拾ってレイナに向ける。
「どこからでも来い。首はもらった」
「…………」
しばらくの沈黙のあと、同時に地を蹴る。
そして、レイナの髪は虹色に変わり、魔法で、細長い刀身で美しい銀色の剣を取り出す。
そして、その剣は青色に変わる。
「ほぅ。面白い」
巴御前が振る風をも切るナギナタは、レイナの首目掛けて襲いかかるが、レイナはしゃがんで避ける。
すかさず、足蹴りが飛んでくるが飛びはねてそれさえ避ける。
(先ほどとは違う)
巴御前は剣を振るレイナを見る。
(これこそが本気であったか)
動かなかった。ただ、レイナを見ていた。まるで、何かを確信したかのように。
レイナの剣は袈裟斬りで、脇から確実に巴御前の心臓を切っていた。
ナギナタを落とし、地面に膝をつける。
「……素晴らしいのぅ」
レイナは虹色になった髪を解除すると、ふらつき始める。
(七秒ってとこか)
頭を振り、巴御前に近づく。
「なんという剣技だ。今までにはいなかったぞ」
「そうかい」
「忍者とは素晴らしいのう。面白いものぞ」
笑みを浮かべたのも束の間、巴御前の体は崩れていき、風のように塵となって飛んでいった。
「…………忍者じゃなくて魔法使いなんだよ」
レイナは空を見上げながらそうつぶやいた。




