四大魔法使い
プリンのブティックから、電話がかかる。プリンは電話に出る。
「はいはい。プリンですよー」
相手は大体分かっている。
『プリン。どこにいるの?』
女性の声だ。
「え、お店だけど?」
プリンはあることを見越して、受話器を耳から遠ざける。
『バカ‼︎』
微かに聞こえた。
「もー。分かったって。で、どこだっけ?場所」
電話越しに、ため息が聞こえる。
『オドラル地方の治安維持局本部局局長室』
「詳細に言わないでよ。覚えられないよ。それにさ、堅苦しくしないでよ。私とルナの仲じゃないの」
『いいから急いで!』
ブツっと電話が切れた。
「乱暴だなぁ」
*
ルナは乱暴に受話器を置く。
「まぁ、ルナ。プリンにそう目くじら立てずに。プリンののんびりなんて今に始まったことじゃないでしょ?」
立派な服に身を包んだゆるふわな笑顔の青年、トヌーが言う。
「トヌー。プリンの言動には腹が立つことが多いんだよ。アイツ、なにかと頭いいからな。要領がいい」
隣に座っているレイナが言った。
ここにいる全員は四大魔法使いである。全員が、高位もしくは強力な魔法使いだけである。
治安維持局本部局本部局長及び治安維持局魔警官本部副責任者――ルナ
王都パレイド大公付き人及び治安維持局魔警官最高責任者――トヌー
レイナ魔法団団長――レイナ
ただのブティック経営――プリン
「…………プリンが来るまで待ってられない。私もトヌーも仕事がある。で、説明してくれる?主催者さん」
ルナはいらだち、レイナを睨むように見る。
「分かった。魔法団の新人団員が、ミミの手下らしき存在を見たと言っている」
「…………!」
ミミという言葉に、全員が動揺する。
「そいつらの共通点として」
レイナは左胸に人差し指を立てる。
「胸に、チェスの駒のマークがあったらしい。今判明しているのは、ビショップとキング。そこの神父によれば、ビショップの名前はロキ。キングはルシファーと。それに、ミミの名前を口に出しているから、確実だろう」
「まさか、またミミが何かを企んでるってこと?」
ルナが言う。
「そうだ。何度も言うが、俺の不手際だ。俺が予測するには」
レイナの虹色の瞳が輝く。
「魔法大戦争か、それ以上の被害が予想――」
「たのもーーーー‼︎」
バァンと大きな音で扉が開く。
「…………プリン」
ルナは立ち上がり、プリンに近づきながら詰め寄る。
「だいたい、あんたは時間の管理がなってない。今日のブティックは半休にすればいいでしょ?なのに、それを忘れたり。なにをそんなに気楽にここに来れるの?逆にそれを聞きたいんだけど」
「…………グータラセーシン」
ルナは大きなため息をついて頭を抱える。
「もうやだ……」
「まぁまぁ、ルナ」
間にトヌーが入ってくる。
「一旦落ち着こうよ。プリンだって忘れてたわけだし」
「そうだそうだー。お前は学校じゃ皆勤賞ばっかりだけど、忘れ物はしてなかったのかー!」
プリンも腕を振ってトヌーに反抗する。
「で、レイナ。議題はなんだったの?」
「…………ミミの配下に気をつけろってことだ」
プリンはしばらく考えて頷く。
「了解。じゃ、私はこれで。トヌー、昼だけど飲みに行かない?」
「悪いけど、今日は忙しいんだ」
「じゃあ、ルナ。お茶しよ?」
「私も忙しいから」
二人に断られたら……
「レイ……」
「その前にブティックを続けろ。まだ閉店時間じゃないだろ」
レイナは膝に腕を置いて立ち上がる。




