成果
タクが時計を見ると、最後の汽車が来る時間になった。
「おや……」
タクが時計を見ると、少し苦い顔をする。
「神父様。どうしましょうか」
「大丈夫です。言った通り、ミミ達はもう来ないと思います。だから、安心してください」
「…………ですが、アヤが……」
「……大丈夫です。なんとかしてみせます」
タクは少し黙り、その後小さく頷く。
「わかりました」
*
「やれやれ」
ロキの背中を見送るエリス。
「アイツ、弱いくせにプライドは高い」
クルリと体を回しすと、ルシファーが立っていた。
「…………あ」
「……人を殺すのはいい」
「…………」
「だが、物を投げるな。屋敷が汚れる」
エリスは一瞬、悔しそうな顔をする。
「……分かった。気をつけるよ」
「…………それなら、いい」
そう言うと、ルシファーはエリスを素通りし、廊下を歩いていった。
「あぁ、言い忘れた」
振り返り、ルシファーの銀色の目はエリスを見ている。
「ミミ様がお呼びだ」
*
夕焼けの空。
タクは屋敷の前に立つ。
(結局、成果は無かったな)
屋敷に入ると、中が騒がしかった。
「だから、それ食うなって!」
「仕方がないよ。このクッキーが美味しそうなんだから」
レイナの部屋からだ。
足音を忍ばせ、部屋を覗く。そこには、テーブルを挟んで向かい合うレイナと……
「あ……」
タクに魔法を付与した茶髪の女性がいた。
「ん……レイナ」
女性はタクのいる方を指差す。
「…………あ」
虹色の瞳と完全に目が合ってしまう。そして、レイナが近づいてきてドアを全開にする。
「報告か?」
「…………はい。アヤはまだ、ここにいられるような、精神状態ではありません」
「…………なるほど」
「それに……!」
「…………ん?」
「多分、アヤには『特殊魔法』が、あると思います」
レイナの目が一瞬揺らぐ。
「堅苦しいからさ、ここで食べない?タクくん」
女性がそう言った。レイナはため息をつく。
「え、なんで、名前を」
「すまん。俺が教えた」
レイナは顔を背ける。
「こんにちはー。いや、今はこんばんはかな?」
女性の目は、見事な金色だった。
「私はプリン。まぁ、レイナの親戚だね。レイナのお母さんのお兄さんの子供だよ」
「従姉と言え」
レイナはプリンの向かいに腰を下ろす。
「それに、四大魔法使いだからね」
プリンは手で4の数字を作る。
「…………さて、帰ろっかなー」
プリンはソファから立つ。
「お前、クッキー食って帰るだけなのか?」
「え?そうだよ。カノンちゃんのクッキーは美味しいからね」
すると、タクの前にカノンが現れる。
「喜んでもらえて嬉しいですね」
彼女はラッピングされたクッキーを持っている。
「えー、なにそれ。私用?」
「違います。ブティックのお手伝いさんに」
「気がきくね。私だけじゃ不公平だもんねー。ありがとう」
プリンはカノンの手から優しくクッキーを取る。
「それじゃ、チャオ」
そう言って、レイナの部屋から出ていった。カノンも後片付けをするのか、プリンに続いて部屋を出て行った。




