表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/65

それはそれ

 ロキはルシファーに連れられ、ある椅子に通される。

「連れてきました。ミミ様」

 椅子がクルリと回り、女性が姿を現す。そこには、十代の少女がいた。

 まさか、こんな純粋な顔をしている少女が、約二十万人を葬ったとは思えない。

「ルシファー、ありがとうね……さてと」

 ミミはロキを見る。ロキはすぐに言う。

「だって、しょうがないじゃないですか。アヤが、突然『特殊魔法』が発動したんですから」

「ロキ!言い訳か!」

 ルシファーが声を荒げる。

「あぁ、いいんだよ」

 彼の激情を止めたのはミミだった。

「……申し訳ありません」

 ミミは続ける。

「うん。そうだね。わたしもロキみたいになってたかもね。それに、急に前倒しにした私も悪い」

「…………」

「さ、この話はおしまいおしまい」

 ミミはぱんぱんと手を叩く。

「また次、頑張ろうね」

「…………はい」

 ミミの笑っている顔からは、なにも読めなかった。


             *


「アヤ……」

 神父は、アヤの部屋の扉を開ける。

「魔法団の人が話を聞きたいそうです…………できますか?」

「……う……ん」

 途切れ途切れだが、頷く。神父も苦い顔をして「どうぞ」と促しタクを部屋に入る。

「…………」

 腕は細く、とてもあのムチでロキを吹き飛ばしたとは思えない。

「アヤ……」

 タクが名前を呼ぶ。

「早速だけど、どうしてあの魔法を使えたの?」

「……知らない…………でも、怒った……そうしたら、勝手に出てきて……振ってた」

「……なるほど。他に、何か覚えてないかな?」 

 アヤは首を縦に振る。

「……そっか……そうだ」

 タクはあえて何かを思いついたかのように言った。

「レイナ魔法団に、入らない?」

「…………」

「多分、そのムチは魔法だよ。だから……」

 すると、アヤの息が荒くなる。

「…………!」

 タクは慌てて神父に寄る。

「ここまでですね」

 そう言うと、神父は入れ替わるかのようにアヤの背中をさすった。


 しばらくして、神父は戻ってくる。

ルシファー(あの男)の言葉からして、もうミミはアヤを捕獲はしないでしょう。それだけはわかります」


            *


「…………」

 ロキは廊下を歩いている。そして、あの記憶が蘇る。

 ミミの命令への失敗。そして、何よりの屈辱。アヤという自分より格下の存在に殺されかけたこと。

(ありえないことだ)

 前髪を手で掴み、クシャッと握る。

「俺は…………する方なのに」

 イライラして、壁を殴る。

「うるさい!」

 後ろから瓶が飛んできて、ロキの足元で割れる。ロキは振り返る。

「お前の方がうるさいんだよ。エリス」

 背中に黒い翼を生やした女性。胸に黒いクイーンのチェスの駒がある。よく見ると、黒い服に点々とシミがついている。

「またやったのか。何人だ」

「覚えてない。大体百人くらい」

「…………ミミ様も大喜びだろうな」

 そう言うと、ロキは廊下を歩いていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ