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第6話 現実世界の俺も魔法を使う!?

 はじめまして。カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。

 スローな立ち上がりですが、10万字を目指して頑張ります。モチベーション維持のために感想を頂けると大変嬉しいです。

 昼遅く起き出した俺は、聖域を出て1階へと下りた。同居の両親は仕事で不在。だから今日は平日ということだ。


 聖域の守護者―――引きニートになった頃は、ずいぶんと胸が痛んだものだ。

 学校へも行かず両親に心配をかけ、仕事もせずに失望させ続けて今に至る。引きこもった最初の頃は、大工の親父にぶん殴られたことも一度や二度じゃなかった‥‥‥。


 冷蔵庫を開けて母親の準備してくれた昼食を取り出した。ラップのかかった好物の焼うどんをそのまま電子レンチン。追いソースをタップリかけて、マヨネーズをどばぁっあああっと!!


 ―――その時だった。あるはずのない視線を感じた。


「むむっ!?」


 緊張で息が止まり、全身から脂汗が滲み出る。心の中で緊急アラートが鳴り響いた。

 

 これはまずい……この状況は‥‥‥。


 両親は仕事で留守。いま家にいるのは俺1人のはず。なのに気配を感じるのだ。ふぅぅぅ、と大きな息を吐き出し、おそるおそる周囲を確認した。


 ―――どこだ! どこにいる‥‥‥!?


 額に汗を浮かべた俺は、床や四方の壁面、天井の隅々にまで視線を走らせた。

 そして、見つけたのだ。

 俺の背後を取るようにして、壁にへばり付いている黒褐色でアーモンド形をした全人類が忌避する敵の姿を―――。


 たぶん今の俺は超カッコ悪い逃げ腰の姿勢になっているだろう。

 しかしこう見えても聖域の守護者なのだ。魔道に繋がる系譜のもの。人類の敵よ、お前がいくら巧妙に気配を隠そうとしても俺の探知魔法から逃れる術はない。


 しばらくの後、壮絶なる戦いに終止符を打ったのは氷魔法―――スプレータイプの凍らせて駆除する凄い効き目の例のやつ、だった。亡骸を処理した後に食べる昼食の味気無さときたら‥‥‥。

 

 俺の体は正直で寝て起きたばかりなのに腹が膨らめば眠くなる。

 聖域へ戻った俺が、ぶひゃーと不気味な声を上げて万年床に寝転がると、もう1つの世界がすぐに色づいた。


 ◇◇◇◇◇


 ―――王城の正門を潜った。

 特に問題は発生しなかったが、衛兵たちの視線が見慣れない俺とルールーに集まっていた。


 親方のタツケスが素早く間に入り、腕章を巻いた衛兵に()()()を渡した。すると向けられていた視線は興味なさげに逃げていった。


 俺とルールーは長旅でくたびれたマントを羽織ったままだ。

 さすがに怪しまれるのでフードは脱いでいた。俺は職人らしからぬ長めの金髪。ルールーの髪型は漆黒のショートボブで、対の角を隠すために可愛らしい帽子を被っていた。


「おまえら、まだ子供だな」


 フードを脱いだ俺たちの顔を見た親方のタツケスが、いまさらながらに少し驚いたように言った。


「見かけで判断しないでほし。これでも仕事は完遂する主義だ」


「そうか頼んだぞ。さっきの手間賃(賄賂)は手当から引かせてもらうからな。それと、おまえの連れの嬢ちゃんは亜人か?」


 厳つい見た目によらずケチ臭い親方は、俺の背中に隠れるようにして立っているルールーに目ざとく視線を向けた。


「まあ、そんなところだ」


 まさか悪魔を連れているとは言えず曖昧に誤魔化すと、タツケスはそれ以上追及してこなかった。

 色々と割り切って世の中を渡っている男のようだ。

 そう判断した俺は、「ちょっといいか?」と言ってタツケスの耳元に口を近づけた。


 正門を潜り抜けると大きな噴水が目の前に現れた。

 

 荒涼とした大地が広がるこの国にあって、多量の水を垂れ流す仕掛けは滑稽に感じる。

 気候を考慮に入れず、見栄えだけで植えられた多種多様な植物も気に入らない。

 そこは人の醜いエゴが感じられる過剰に飾り立てられた庭園だった。


「やはりこの国の腐敗は深刻だな」

「そうっすね。何となくボクにも分かるっすよ」


「この場所は本来、敵の進攻に対して王城最後の要となる場所だ。障害物となる防壁を取っ払い、段差を無くし庭園を広げている‥‥‥長い平和が城の作りでさえ蝕んでやがる」


「この様子じゃ依頼も楽勝っすね」


 心の休まらない歪な庭園の中を進みながら、職人集団に紛れた俺とルールーは小声で話していた。

 しばらく進んで集団が歩みを止めると、先頭のタツケスが振り返って声を上げた。


「昨日と同じ分担だ。わかったな!」


「うっす!」


 親方の言葉に、職人たちが声を揃えて返事をした。


「新入りは俺と一緒に来い」


「わかった」


 背を向けた親方は王城内へ通じる、通用口と思われる中へと消えた。

 俺たちはその後を追う。しばらく狭い通路を進むと、タツケス親方は木でできた何の変哲もないドアの前に立った。

 

 質素な造りから貴族が使用する部屋ではないことはわかる。―――使用人の部屋だろうか?

 躊躇なくドアを開けた親方は、中を確認して俺たちに手招きした。


「ほら、ここでいいだろう」


「ああ」


「約束のカネは?」

 

 右手を差し出した親方に、王国金貨2枚を渡した。


「あとのことは知らんぞ」


「わかった」


 チャリン―――、ともう2枚追加してやる。


「おっ!? いいのか?」


「2枚は手引きの対価だ。残り2枚で口をつぐめ」


「心配するな、誰にも言わねえよ。作業が終わったらそのまま帰ってだんまりだ」


「そう願いたいな」


 慎重にタツケスを値踏みした俺はマントの下で得物から手を放した。


「何すんのかは知らねえが、まあ気をつけるこった。じゃあな」


 親方は俺たちを残して足早に部屋を後にした。足音が遠ざかるのを待つ間、しびれを切らしたルールーが口を開いた。


「ど、どういうことですのん!?」


「あの男を最大限に利用したまでだ。まあ使えるのはここまでだがな。暗くなってから行動に移すぞ」


「ちょっとだけ職人の仕事に興味あったっす‥‥‥」


「じゃあ今日限りで弟子見習いは卒後だな。正式に親方へ弟子入りしろ」


「あ~あ、そういう言いかたっすか? あっ! もしかして嫉妬ってことっすか!? 師匠って本当は―――」


 面倒な絡み方をするルールー。

 だいたい、いつだってこうなる。


「―――いい加減にしろ! 潜伏中なんだぞ!!」


「師匠の声の方がうるさいっすよ! 弟子に嫉妬って‥‥‥ぷぷぷっ」


「や、やめろ!」


 俺は精神をすり減らしながら、小さな空き部屋で夜を待った。

 ここまで空想して‥‥‥意識がたゆたう感覚。最高に気持ちいいな‥‥‥俺はいつもより深い眠りを予感した。

 読んで頂きありがとうございました。

 平日は最低でも3話以上(毎日が理想)の更新ができるようにと考えています。

 もしよかったらリンゴと蜂ミッツを推してくださいね。ブクマ、評価をよろしくお願いします。


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