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第4話 タムリエル‥‥‥!?

 はじめまして。カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。

 スローな立ち上がりですが、10万字を目指して頑張ります。モチベーション維持のために感想を頂けると大変嬉しいです。

 目を覚ますと窓の外から伝わってきていた昼間の喧騒が掻き消えていた。

 呑気そうなスズメの鳴き声も聞こえない。


 陽が沈んで夜の帳が下りる。ここからは俺の時間だ。

 改めて断っておく。俺はバンパイア設定ではない。万年床からむくりと体を起こした。


「ぐぅひゅ」


 近頃さらに太ったせいで、体勢が変わるたびに口から妙な音が漏れてしまう。

 立ち上がって耳を澄ました。


 1階から物音が聞こえてくるので、仕事を終えた両親が帰宅しているのだろう。

 それにしても腹が減った。何もしてないのに・・・・・・。

 

 いつもの俺は、両親の気配が寝室へ消えるのを待ってから1階へと下りる。そして冷蔵庫に用意されている晩飯をレンチンするのが日課だった。

 今夜はなんとなく、そのまま1階へと下りた。


「しばらく見かけんと思ったら、また太ったな」


 居間に顔を出すと、缶ビール片手の父親がテレビで開幕した野球中継を観ていた。息子をレアモンスターのように言う。


「あら? お腹が減ったのかい? たまには出来立てを食べな」


 テーブルの上を片付けていた母親が、振り返って俺の顔をまじまじと見た。

 両親と顔を合わせるのは半年ぶりだろうか。最近はコンビニの店員と顔を合わせるほうが多い。それなのに、ごくごく普通に接してくる両親‥‥‥。


 腫れ物に触るって感じのほうが俺にとっては現実感があるんだが……ほうとうに引きこもる前と変わらない空気感というか、なんと言うか……だから余計にいたたまれない。


 テーブルの上にはイチゴのショートケーキがあった。

 父親が出掛けに言った朝の言葉が甦る。クソ! 何なんだよホントに……。


「……」


「―――駿、どした?」


「母ちゃん……」


「なんだい?」


「た‥‥‥た‥‥‥た、た」


「たたた?」


「たた、た、た、タムリエル‥‥‥」


「たむ―――? なんだい、そのタム何とかっての‥‥‥父ちゃん、駿(すぐる)の復帰はまだ先だよ」


 一緒に考えてみてくれ、『た』のつく言葉を‥‥‥。

 やはりタムリエルしかないだろ。こんな場面でゲーム世界の架空の大陸名って‥‥‥息子チャレンジは見事に失敗だった。


 俺の発したおかしな単語に母親は怪訝な表情を作って―――その後すぐに破顔した。

 そして、「意味わからないこと言わないでレンチンしな」と言って足早に寝室へと消えた。 


 そもそも母親の誕生日以前に、今日が何日だかわかってない。引きニートは時間の流れを意識して生きてないんだ。

 それに無職にはプレゼントを買う金なんてない。ついでに言えば意志もなかった……。

 ああ、笑ってくれ、一言を発する勇気のない俺を。引きニートには誰かを祝う資格なんてないんだ‥‥‥。


「母ちゃん喜んでたな」


 俺の内心とはかけ離れた内容の父親の言葉だった。後ろを振り返ると視線はテレビ画面へ向いたままだ。父親はなぜそう思ったのだろうか‥‥‥? そんな訳がない。

 

 俺は母親の誕生日に何もしていない。

 久しぶりに顔を合わせただけなのだ。

 

 はぁ~、なんだかリズムが狂ってしまった。そろそろ聖域へ戻らないと―――


「ケーキはお前んだ」


 後ろでプシューとプルタブの開く音。

 寝室から戻ってきた母親が俺の晩飯をレンチンしてテーブルの上に置いた。

 2階へ上がるタイミングを失った俺は、久しぶりに家族のいる場所で夕食を頬張って食べた。

 読んで頂きありがとうございました。

 平日は最低でも3話以上(毎日が理想)の更新ができるようにと考えています。

 もしよかったらリンゴと蜂ミッツを推してくださいね。ブクマ、評価をよろしくお願いします。


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