第40話 変身
はじめまして。カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。
スローな立ち上がりですが、10万字を目指して頑張ります。モチベーション維持のために感想を頂けると大変嬉しいです。
「俺は倒したフェンリルの眷属になったのか‥‥‥」
「さっきのワーウルフとは明らかに違うわぁ~。だってスグルは2本足で立ってるものぉ~」
カラミヤの言う通りだろう。
俺たちが倒した元人間のワーウルフたちは四足歩行だった。それに理性というものを微塵も感じることがなく、人の言葉を聞いてない。
だとしても俺の容姿は倒したフェンリルのそれに近く、獣人族と言ったほうがしっくりくる。
「なんか力が湧いてくる感覚だ」
戦闘を終え体はへとへとなはずが、どういう訳か大地を踏みしめる足や両腕に力が漲っていた。今までにない感覚に不安を抱いてしまう。―――俺は元の人間に戻れるのか‥‥‥!?
「し、師匠は師匠っす。化け物になっても大丈夫っす」
さっそく不肖の弟子見習いが俺のことをディスる。
「噛みついたら射殺す所存」
「誰が噛みつくか!」
エラノアは俺のことを全く信用していないようだった。
言い返した俺は‥‥‥本当に大丈夫だろうか、と自問自答する。
「理性はあるようですから‥‥‥様子をみましょう。ほら、こっちにおいで~」
「‥‥‥‥‥‥」
セリーナは天然なのかもしれない。手を振って早速俺をペット扱いしやがる。
もう返す言葉が浮かばなかった。
「師匠ぉ~、この先どうなるんっすか!?」
「あたしは報酬が手に入るまでは離れないからぁ~。その格好でもいいんじゃなぁ~い。意外と可愛いかもぉ~」
俺の目的は竜を狩ること。
ただし現状を修正しない限りは、遠回りを余儀なくされそうだった‥‥‥。
と、ここで俺を呼ぶ声が聞こえ―――意識の向こう側から体が揺さぶられる感覚があった。
◇◇◇◇
「―――ねぇ、駿、起きて。駿―――」
万年床の上で布団にくるまっている俺。
傍らには気配があった。シャンプーの香りが鼻孔をくすぐり、覚醒前の意識に違和感を伝える。
「はっ―――!?」
驚いて勢いよく体を起こすと、汚い聖域の畳上で幼馴染の芹那が膝を折っていた。
「昼ごはん作ったんだけど。そろそろ起きない?」
「芹那‥‥‥」
「やっと昔みたいに呼んでくれた」
「あっ‥‥‥!?」
痛いところを突いてくる。意識的に彼女の名前を口に出すことは避けていた。
もう俺は昔の俺じゃない。過去の人間関係を捨て、自分勝手に逃げ出した‥‥‥そんな俺には親し気に幼馴染を名乗ったり、下の名前で呼んだりする資格はないんだ。
「まだ許せないけど、それでも安心する」
「‥‥‥」
遮光カーテンで日光が遮られた窓。暗い聖域の中で彼女の表情は見えなかった。
俺は返す言葉を持ち合わせていない。
「お昼ごはんって言ってもさ、もう2時過ぎだから」
そう言った彼女が立ち上がって先に聖域を出ていく。
立ち上がった俺は、髪を撫でつけつつ後に続いたのだが‥‥‥うん!? 体の調子がどこかおかしい‥‥‥。
別に調子が悪いわけではなく、むしろその逆ですこぶる体が軽かった!?
階段を下りる途中、なぜか1階まで飛び降りたい衝動い駆られる。
―――その方が早く下りれる。そんな思考が突如として浮かび、芹那の背中が見えなくなった瞬間に、俺は階段の途中から跳んでいた―――!
―――ダンッ!
太った俺の体では、たとえ2段か3段の高さから跳んだとしても、膝を痛めるのは必至だろう。
しかし、結構な高さがあったにも関わらず難なく着地していた。
「―――えっ!? だ、大丈夫、駿! 階段で転んだ‥‥‥‥‥‥」
廊下に響く着地の音を聞いて、居間のほうから慌てて駆け戻ってきた芹那。青みがかった瞳に俺の姿を映したまま、その場に茫然と立ち尽くす。
「えっ‥‥‥!?」
今度は俺が驚きの声を上げてその場で立ち尽くした。
呆けた表情の芹那の瞳に映る俺の姿は―――年は重ねているけれど、引きこもり以前のような痩せた姿をしていた。
読んで頂きありがとうございました。
平日は最低でも3話以上(毎日が理想)の更新ができるようにと考えています。
もしよかったらリンゴと蜂ミッツを推してくださいね。ブクマ、評価をよろしくお願いします。




