第19話 カラミヤにエッチな罰を与えたい
はじめまして。カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。
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外をみれば、空が白みはじめていた。
入口から流れ込んでくる空気もどことなく澄んでいるような気がした。
―――嗚呼、最悪だ。聖域での日課、ログインボーナスがこんなところで途絶えてしまった。
あっという間に朝を迎える。
仕事のほうは、正直あまり覚えることができなかった。それもそのはずで、バイト先輩の春宮がまったく参考にならないのだ。
「履歴書忘れんな~。あたしは、おばあ―――違った。オーナーにおまえのこと言っとくからさぁ~今日は先に上がんなぁ~おつ~」
「おつ―――!? あっ、お、お疲れ様、でした‥‥‥」
バイトは夜の10時から朝の5時までらしい。
春宮が平日の夜5日のシフトらしく、俺のシフトも必然的にそうなった。10年以上引きこもっていた俺にはハードワークに過ぎやしないか? 続けていく自信は皆無である。
「はは、ははは‥‥‥」
コンビニからの帰り道。
乾いた笑いが自然と漏れ出てしまった。客として買い物に訪れ、従業員として店を後にする。一体全体なんの冗談なんだよ‥‥‥。
それにしても何年ぶりかに見る朝陽はとても綺麗で――――――ヴァンパイア設定でもないのに、やたらと目にしみた。
家に帰り着くと、すでに両親は起きていた。
これから仕事へ行くのだから当然なのだが‥‥‥音を立てないようにして玄関を上がると、運悪く居間から出てきた母親と鉢合わせする。
「―――あら!? 駿、こんなに朝早くにどこ行ってたんだい?」
「コンビニ」
嘘は言ってない。だが、色々と説明するのがややこしいので働き始めたことは伏せておく。
半眼を向ける母親が俺の上半身をガン見していた。
―――はっ!? しまった! 俺はコンビニの制服を着たままだった。帰りたい気持ちが先行して、着替えるのを忘れていた。
「駿、あんたその格好はどういうこと!? もしかして盗んだんじゃ!?」
「ち、違うわ! ば、バイト始めたんだよ‥‥‥」
「ぎゃぁあああ! 父ちゃんぁあああああ~~~!!」
制服姿を見られさすがに観念した俺は、引きニート終了を母親に告げた。すると母親は驚愕に顔を歪めて悲鳴を上げたのだ。
「―――おい! どしたぁあああ母ちゃんぁあああ!?」
と、いう訳で俺が帰宅してから両親は大パニックに陥った。
脅されたくだりは黙っておいて、バイトを始めることを改めて説明すると、父親は「今夜は寿司か? 鰻か?」、母親は「赤飯炊かなくちゃ」と言って仕事へ―――。
うん? 赤飯って‥‥‥こういう時に炊くものなのか?
昨日の夕食もそうだったが、帰宅した俺は久しぶりに家族と朝食を食べた。
昨夜から色々ありすぎて‥‥‥それでもなんとか聖域に辿り着いた。
俺が引きこもって以来、こんなに長く聖域を離れたことはなかった。
階段を上がり扉を開け、はたと気づく。
なんと封印を取り忘れていた。つまり何が言いたいのかというと‥‥‥大切な儀式を忘れるくらいに俺は疲れていたのだ。
―――くそっ! 忌々しいビッチめ。
異国の地で奴隷商人に捕まったような気分だった。監獄に入れられ強制労働を強いられる。なんとかこの状況を脱しなければ‥‥‥。
疲れた頭で考えても、有効な手立ては思いつかない。
ならせめて今俺ができることといったら、空想世界で春宮―――カラミヤ・ハルをエッチな目に遭わせることぐらいだろう。
見てろよ! おまえのボンデージ衣装を、ああして、こうして、ムチで縛ってムフフ‥‥‥。
ところが、だ。万年床に横になった俺は、空想世界に浸るどころか夢すら見ない泥のような眠りに即落ちした。
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