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第18話 俺、ビッチに脅されて引きニートを卒業します。

 はじめまして。カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。

 スローな立ち上がりですが、10万字を目指して頑張ります。モチベーション維持のために感想を頂けると大変嬉しいです。

「い、いらっしゃいませ‥‥‥」

「ちげーよ! しゃあーせぇー、だよ。しゃあーせぇー」


 いや、違わないだろう?! どんなあいさつだよ!

 たった今、買い物途中の客からアルバイト従業員になった俺は、さっそく先輩の指導を受けていた。


「い、らっしゃい―――」

「だから何度も言わせんなって! しゃあーせぇー、だっ!」


 いや、だから‥‥‥ぜったいに違うって‥‥‥。


「しゃ、しゃーせー」

「しゃあーせぇー!!」


「しゃー、せー‥‥‥」


 何なんだこれは‥‥‥引きニートには想定外に過ぎるだろう。


「ほら、もいっぺん言ってみ」

「しゃ、しゃあーせぇー」


「いいね! 言えるじゃん」

「しゃあーせぇー!」


 ほめられると少しうれしい自分を殴ってやりたい。


「名前は春宮な。あたしと一緒のシフトに入りな。ちょうど1人辞めちゃってさ、おばあちゃん‥‥‥違った。オーナーが困ってたんだ」


「いや、でも‥‥‥やっぱり―――」

「ブタみてぇ~に太ってっから、どうせ家でゲームばっかやってんだろ? だったら少しは働いて痩せろや」


 俺の煮え切らない態度に春宮が凄みを利かせる。

 それにしても、またまたすごい決めつけだな。そもそも太ってることとゲーマーはイコールではないだろう。

 痩せてるやつもゲーム大好きなヤツがいるし、太っててもゲームが嫌いなヤツもいる。なんて狭量な考えなんだ‥‥‥まあ癪に障るがゲームばっかしってのは正解です…‥‥。野生の勘というやつだろうか、当たり過ぎて恐怖を覚える。


「う、ぐぐ‥‥‥でも‥‥‥」

「あのな~ブタのくせに、うじうじすんなし。もうバイト決まったんだから、元気だすっしょ」


 いや、元気ないのはあんたのせいなんだが‥‥‥言葉の通じない春宮が無駄に眩しい笑顔を向けてきた。


「大丈夫だって。あたしが教えっから、すぐに仕事覚えるっしょ」

「あ、はい‥‥‥」


 もうなにを言っても無駄なことがわかった。春宮の体に同意なしで触ったことは事実だし、スマホでググってみると確かに『不同意わいせつ』とやらがヒットした。

 引きこもっていた間にずいぶんと世の中の仕組みが変わっていたようだ。―――恋人にキスする時も同意がいるのか? ふとそんな疑問が頭を過ぎる。


「しゃあーせぇー」

 

 春宮がやる気のない声を上げた。見れば自動ドアを潜ってOL風の女性が1人で来店したところだ。

 春宮の隣に立った俺は渋々ながら彼女の仕事ぶりを観察することにしたのだが‥‥‥まったく動きがなかった。なんなら暇そうにスマホをいじっていた。


 普通は客がくれば愛想よく笑顔を作るとか、万引きを警戒するとか色々あるだろう。素人の俺にでもそれくらいは想像がつく。本当に大丈夫なのだろうかこのビッチ。ああ、チョロ見した巨乳が目にしみるぜ‥‥‥。


「袋は―――?」


「‥‥‥」


 台の上に商品―――無糖の缶コーヒーとサラダが置かれた。客の女は春宮の問いかけに無言で答える。目の前の顔は酷く疲れているように見え、とくに目の下のクマが元々の綺麗な顔立ちを台無しにしていた。


「485円で~す」


 春宮が慣れた手つきで商品のバーコードを読み取ると、そのまま支払いを待つ。

 客の女がスッとスマホの画面を差し出した。表示されたバーコードを読み取って会計は終了。普段レジカウンターの外側で客として接する光景は、いざ内側から眺めてみるとまったく違うものに映って新鮮だった。


「あざーす」


 呪文のような言葉が春宮の口から飛び出し、俺はついつい顔をしかめてしまった。


「ぶぎゃっ―――!」


 そんな俺の態度に、春宮の強烈な肘打ちが脇腹に見舞われた。


 で、会計を済ませた客は動かなかった。

 春宮はひょうひょうとした顔で次のアクションを待っているように見えた。


「手に持って帰れっていうの!? 袋くださいって言ったわよね!!」


 いや、違うだろう。少なくとも俺は聞いてない。

 春宮の問いかけにこの客は無言だったはずだ。さぞ怒っているだろうと思って応対している春宮に視線を向けると、「さぁーせぇーん」と言ってあっさりと買い物袋を取り出し商品を詰めて渡した。


「ふんっ! これだからバイトはっ!」


 吐き捨てるように言って客の女は店を出て言った。


「あ、あの人、袋がいるって‥‥‥言ってませんよ」


「知ってる~。こんな時間まで残業おつ」


 そう言って何事もなかったかのように春宮はスマホいじりを再開した。

 この得体のしれないビッチは、見た目ぜったいに年下だろう。それなのになんなんだ、この達観した感じは‥‥‥。


「あ、そうだ。ちょっとあんたのスマホ貸して」

 

 ポケットからスマホを取り出すとマニュキュアを塗った指に絡めとられた。普段あまり使用しない俺のスマホが知らない女の手に握られる光景になんだかドキドキしてしまう。


「はい。バイトの連絡はSNSでよろ」

「あ、よ、ろ…‥‥しく」


「ぷっ、キモ」


 はいリアルキモを頂きました。ありがとうございます。

 俺と春宮はどうやら電脳世界で繋がってしまったようだ。気は進まないが使い方を勉強しなければならない。

 

 次に春宮がバックヤードから1枚の用紙を取ってきた。


「これ書いて」


 差し出された用紙は履歴書だった。

 ついに年貢の納め時がきたようだ。長年に渡って引きこもってきた俺は、こうして脅されるような形で働き始めることとなった。

 読んで頂きありがとうございました。

 平日は最低でも3話以上(毎日が理想)の更新ができるようにと考えています。

 もしよかったらリンゴと蜂ミッツを推してくださいね。ブクマ、評価をよろしくお願いします。


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