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第1話 称号には理由がある

 はじめまして。カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。

 スローな立ち上がりですが、10万字を目指して頑張ります。モチベーション維持のために感想を頂けると大変嬉しいです。

 俺は聖域の入口に立っていた。

 手には糧食(おやつ)がぱんぱんに詰まったコンビニの袋を持ち、乱れた呼吸を整えている。


 時刻は午前0時を少し回ったところ。扉の奥に人の気配は無い‥‥‥。


 聖域と外界を隔てる扉のノブには、一枚のプレートが掛かっていた。

 そこには来訪者の心を挫く古の竜の言葉が刻まれている。

 

 付け加えるなら、可愛らしいデフォルメされたドラゴンのキャラクタープレートで、セリフの吹き出し部分がメッセージボードになっていた。

 いまそのボードには、『勝手に入るな! 勝手に布団を干すな!』と書かれている。


「はぁ~‥‥‥さて」


 溜息交じりの言葉を吐いてその場にしゃがみ込むと、そっと封印に触れた。

 

 ―――今宵も侵入者はなし。


「ふふっ」 


 爪の先で引っ掻くようにして施した封印を慎重に剥がすと、渇いた笑いが自然と漏れた。

 俺が施した封印は高度な代物。当然、普通の人間が触れれば即死する。施した俺自身の体も解除方法を誤れば消し炭となる。‥‥‥そういう設定だ。

 

 つまり‥‥‥仕組みはこうだ。

 留守中に両親が聖域への侵入を試みれば、扉と枠に貼ったマスキングテープが千切れるか、()しくは剥がれる仕組みになっている。

 その結果として、侵入者の存在がわかるのだ。


 ―――えっ!? 封印になってない? そんなことは百も承知。世の中は設定が大切なのだ。本当は鍵が掛かる扉が欲しい。

 

 それにしても守護者は辛い‥‥‥ここ数年で見られたくない『男の宝』が増えすぎた。


 細く切ったマスキングテープを丸めて、手の平で(もてあそ)びながら想う。

 時を遡ること35分前……俺は糧食を得るために聖域を旅立った。

 そしてたった今、魑魅魍魎が跋扈する危険な外界から帰還を果たしたところなのだ。


 増えすぎた体重で呼吸は大いに乱れ、胸のほうからゼーゼーピーピーと異音が聞こえてくる。静まるのを待ってから聖域の扉を開けた。


 そこに広がる聖域―――ザ・子供部屋‥‥‥。

 

 ()()()()()から使用している6畳の和室だ。

 南側には開かずの窓があり、危険な日差しから体を守るための遮光カーテンが掛っている。ちなみに俺はヴァンパイア設定ではない。しかし太陽を見ない生活リズムは、ある意味リアルヴァンパイアといっても間違いではないのかもしれない……。

 

 窓の下には、悠久の時を超えそこにある星読みのゆりかご‥‥‥つまり、かび臭い布団が敷きっぱなしになっている万年床のことだ。


 枕元を斜め方向に見上げれば数多(あまた)の欲望を糧とした血塗れし錬金台が鎮座し‥‥‥つまり、高校の途中から使用してる学習机だな。天板の上には埃をかぶった教科書という名の旧書物がいくつもの尖塔を築いていた。

 

 そして畳の上に足の踏み場は一切ない。

 俺にとって色々と有益な物が散らばっている。その1つ1つが緻密な計算によって位相空間を形成し‥‥‥もう自分が何を言っているのかがわからない。ようするに片付けられずに散らかってるんだ。


「とぉおおお~」

 

 コンビニの袋を枕元に置いた俺は、勢いよく万年床に転がった。

 うつ伏せの姿勢になり、黄ばんだ枕を胸の下にセットして体を固定させる。手にはP〇4のコントローラー。漫画雑誌を台座にした液晶モニターへと顔を向けた。


 朝までは長い……。


 コンビニで購入した甘い、しょっぱい、シュワシュワ詰め合わせの糧食は十分だった。面倒なトイレへの移動を除けば快適な聖域生活だ。


 と、このように俺の日常は、夜はゲーム三昧で日中は惰眠をむさぼる、ってのを繰り返してる。

 高校の途中から実家の部屋に引きこもり早10年以上が経過した。

 28歳になった今でもまったく働く気力が湧いてこない俺のことを世間では、『引きニート』と呼ぶらしい。

 引きこもりでニート。引きニート。誰がなんと言おうとも、この聖域において俺は無敵だ。誰にも干渉されない。


 ここで1つ重要な話をしておこう。

 それは、俺が好きで『引きニート』をしているんじゃない、ということだ。もちろん無気力で将来を悲観している訳でもない。


「ふふ」


 やたらと長いロード時間の合間に、自嘲気味な笑いが口を衝く。

 

 そう、何を隠そうこの俺は、異世界転生―――いや待てよ……転生者って今生(こんじょう)で非業の死を遂げるパターンが多いよな。うん、光速訂正こうそくていせいする。

 

 ―――さて、驚くなよ愚民ども。


 何を隠そうこの俺は、『引きニート』という不名誉な称号を世間から与えらてはいるが‥‥‥待っているんだ―――異世界召喚の瞬間をなあああ!!

  

 ‥‥‥まあ、『引きニート』であり続けるための荒唐無稽な設定だ。

 読んで頂きありがとうございました。

 平日は最低でも3話以上(毎日が理想)の更新ができるようにと考えています。

 もしよかったらリンゴと蜂ミッツを推してくださいね。ブクマ、評価をよろしくお願いします。


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