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【ショートショート/SF】 ニ十光年先からの送信

作者: 里瀬

「これで、より遠くからの電波を観測できる」

 ある星の天体研究所は、最先端の観測機を導入した。すると早速、従来の機器では観測できなかった宇宙からの電波を捕らえた。研究所内は大いに盛り上がった。

 詳しく調べてみると、それは二十光年先にある惑星から発信されたものだった。以降、その惑星からの電波が途切れることはなかった。


 もしかすると、電波を利用している知的生命体が存在するのかもしれない。研究者たちは、期待を胸に電波の解析を行った。すると、言語や映像など様々なデータを読み取ることに成功した。研究者たちは大喜びだった。すぐに、宇宙言語学チームにデータの研究を依頼した。

 三年後には、その惑星に関する多くのことが分かった。その惑星に生息する知的生命体は、社会性があり、電波を利用し、惑星全体で役割分担を行って生活をしていた。自分たちよりも遅れてはいるが、高度な文明を築いていることは確かだ。


 自分たちの星のことをたくさん知ってもらいたい。研究者たちは、大量のデータを三日間かけて、惑星に向けて発信した。

 計画通りに送信を終えた研究者たちは、興奮冷めやらぬ様子で言葉を交わした。

「きちんと受信してくれるだろうか。まだ、これほど大きな周波数の電波は使っていないみたいだが」

「このデータが向こうに届くのが二十年後。きっと、そのときには技術が進歩して使うようになっているさ。返答が来るのは最短でも四十年後だから、気長に待とう」

 

               * * *                    


 デジタルネイティブが高齢者となった現代社会では、インターネットは完全にライフラインの一つとなっていた。

 ある日、全世界で一斉にインターネットが繋がらなくなった。ネット関係の店舗に人が殺到し、電子マネーのみを利用している国では経済が止まった。この状況を誰かに伝えたくても情報発信アプリは使えず、友人と連絡を取りたくてもコミュニケーションアプリは使えず、暇を潰そうと思ってもオンラインゲームや動画アプリが使えない。多くの人々は不安に駆られ、途方に暮れた。

 ETCや衛星放送も電波が途切れた中、周波数の小さい船舶通信、航空機通信、ラジオには影響が出なかった。利用者が少ないながら細々と続いていたラジオ放送で、各メディアが今の状況を伝えた。


 三日間の通信障害の末、ネットは復旧した。原因は一切不明のまま、全て何事もなかったかのように元に戻った。

 

 三日間。世界中が大混乱し、約七千万人の命が失われた。

 その死因のほとんどが、ネット切断の状況に耐えられないことによる自殺・他殺だったという。

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