第一話 女神はドジっ子
以前の投稿から間が空きましたが、とりあえず再開します。
まだ完全に世界が定まっていないですが、徐々に進めていきます。
俺は暖かさを感じて目を開けた。
見渡す限り白い床と青空が広がり、自分は足をつくことなく浮かんでいる。
日本では見ないような景色だ。
世界のどこかと問われても、すぐには思いつかない。
なぜここにいるのか記憶を探るが、最後の記憶は、交通事故によくある音だけだった。
「俺は死んだ……のか」
思ったより自分は簡単に死んだことを理解した。
死後の世界があるとは思っていなかったが、ここが存在している限り、あったと考えて良いだろう。
問題はここが天国か地獄かであるが、自分は天国に行けると思っていた。
人生の半分くらいは社畜をしていただけだが、ちゃんと社会に貢献してきた自負はある。
地獄へ堕ちるのは心外だ。
若干の黒歴史やちょっとした違反などはあったが、それで地獄に落ちるのなら、全ての人類は地獄にいくだろう。
「俺一人だけ? いや、誰かいる」
少し離れたところには、年齢は中学生くらいの真っ白な服を着た女の子が、全身鏡の前でポーズを取っていた。
「古代ローマの民族衣装みたいな服? でも、モンゴロイド風の顔っぽい? 天国なら天使か?」
俺はやることもなかったので、女の子の観察を続けた。
「笑顔の練習? 少し斜めに向いてみたり、くるっと回った、あ…こっちに気が付いた」
その天使(?)はこっちを見て一瞬だけ絶望的な表情をすると、咳払いし、ふわりと浮き上がると、練習していたと思われる慈悲あふれる笑顔を浮かべ俺の前に降り立った。
『こ、こんにちは、キスズトウヤさん』
「あ、はい」
『わ、私は女神ミコ。あなたに第二の人生を与えるものです』
笑顔を作っているものの、態度にもセリフにも、どこか無理している感が否めない。
「…えーっと、無理してますよね? そんなかしこまらなくても良いのでは?」
『…』
「…」
『……』
「……」
『……(涙目)』
「……」
『うわあぁぁぁぁん!!!!!失敗したぁぁぁ!!!!!女神らしくしたかったのにぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!』
突然泣き始めてしまった。
これは俺が悪いのか?
とりあえず慰めてみる。
「うんうん、大丈夫。無理しなくても全然女神に見えるから」
『ほんと? ほんと?』
「ほんとほんと!」
『やったあ!』
酔っ払いの面倒を見た経験が生きた気がする。
そう、これは突っ込んじゃダメなやつだ。
「さすがは女神様、続きをお願いします」
『良いでしょう! えーと、あなたは寿命を全うできませんでしたが、幸いにも私に選ばれ、えーと、私の権限で第二の人生を送る権利を得ました。あなたは私から特別な能力が与えられ、私の管理する世界に転生することができます。えーと、あなたには拒否する権利がありますが、拒否した場合は、他の幾多の魂と同様に意識が消滅し魂の座に統合されます』
所謂カンペをチラチラ見ながら女神は説明する。
今更恥もないのでそのまま読み上げてくれて構わないのだが。
ただ、状況として面白いのは間違いない。
「ほうほう、して、その特別な能力とはなんでしょうか?」
『えっと、それは転生を了承いただいた場合のみ開示されます』
「……事後承諾ですか」
『き…規則なので』
ちょっと強めに言ったら、また涙目になってしまわれた。
なんというか、某小動物が「僕と契約して、魔○少女になってよ」というのに等しくないか、これ。
見た目に騙されてはいけない。多分、神と言うからには俺より年上だ。
「何か……教えられる情報はないんですか?」
『えっと…慣習的にあまり伝えないけど、その他のことは大丈夫だよ!』
「おお、それは助かります」
『まず、転生する世界はここで〜す!』
女神が横に指を刺すと、そこに四角い画面が現れた。
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環の箱庭
〜異種族を育てて自分だけの世界を作ろう!〜
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「ナニコレ」
『これは、箱庭シリーズの3代目で、前作に比べて初期に配置できる異種族の数が3から5に、選択できる種族の数も10から20に大幅に増加した往年の話題作なの! 配置できる資源の数や素材の性質などの設定も豊富なの!』
女神が一気に話す。
先ほどから口調が変わったのもそうだが、これが素なのだろう。
しかし、これはどう考えても…
「…ゲームでしょうか」
『神として楽しく管理スキルが学べる教材なんだよ』
「なるほど」
確かに、これからその世界に転生する人間に言うものではない。
人間の営みなど神様にとってはおもちゃにしか過ぎないのかもしれないが。
『難易度が高くて、他の神だと5種族を配置しても、絶滅して減ったりしているけど、私の世界は奇跡的に全種類残ったんだよ!』
目をキラキラさせながら、女神は話す。
女神の説明を要約すると、【環の箱庭】は旧作らしく、最新版の【和の箱庭】では、初期設定を増やして難易度を下げたらしい。また、追加要素も多く、異種族同士の子供、ハーフを作ることができるそうだ。
「異種族同士では子供ができないのか」
『【環の箱庭】だと…オプションを導入すればいいんだけど、利用料が上がるの…導入するなら、【和の箱庭】に引き継けばいいし…』
なんか、現状で満足していれば課金しようかしないか迷うことってあるよね。
なんだろう、神の世界も、世知辛い。
『あの…ただの独り言なんですけど…スズキトウヤさんを呼び寄せるだけで色々使っちゃて…次の人間を呼ぶ余裕はなくて…受けててくれると嬉しいかな…って…』
女神は俯きながら人差し指同士をツンツン合わせている。
なんか、この女神が可哀想になってきた。
俺が、以前の世界で独身のおっさんとしてしか生きられなかったように、女神もこう生きるしかないのだろう。
まあ、一度終わった人生だ。余生を遊び相手として過ごすのも悪くない。
「わかった、転生を承諾する」
『ありがとうございます!』
女神は深く礼をする。ここまできたら仕方がないか。
『了承…と。あれ? ごめんなさい…早くしないとキスズトウヤさんの意識が消えちゃう! とりあえず、キスズトウヤさんには転生されたら子供をいっぱい作ってくださいね!』
「え? それはどう言う…」
『魔王を倒さないと世界が滅んでしまうんだけど、魔王が強くなりすぎちゃって…1人送り込んだだけでは対応出来なくなったの……その、ハーレム作ってくださいハーレム。男の人はそういうの好きだよね?』
「いや、そうかもしれないけど、もし子供が人格的に問題ある子に育ってしまったらどうするの? 世界を滅ぼすような魔王と同じような存在なら、逆に破壊する脅威になりかねないんじゃ…」
例えば同僚の子供のように、変なことを吹き込まれた子供がまともに育つとは思えない。
そのほか、歴史上も2代目が失敗したという話は限りなく多い。
『えっと…かっ…考えてなかった…あっもうだめ! 細かいことは転生してから調べてね! 鑑定スキルは追加しておいたので自分のスキルのことは分かるはず!』
「ちょっとま…」
俺の視界がぐにゃりと歪んだ。




