Episode4『963hz』
近未来で起こる"人類の進化の形"をめぐるSFバトルアクション!
『レイン‐RAIN‐』
髙橋彼方
〇登場人物
レイン・・・犯罪者暗殺を生業とする傭兵部隊『ミロク』のリーダー
リサ・・・『ミロク』の突撃部隊
ルビー・・・『ミロク』のハッカー
ストーム・・・『ミロク』の突撃部隊
シールド・・・『ミロク』の突撃部隊
サニー・・・『ミロク』の突撃部隊
サバド・・・違法武器販売屋
リリス・・・武器製造兵器リリスのホログラム
司令官・・・『ムーン・ウルトラ・プロジェクト』考案責任者
○サバドの地下ラボ(夜)
リリスの元に集まるミロクメンバーたち。
リサ「久しぶりね。リリス」
リリス「本日は、どのような武器をお求めでしょうか?」
リサ「最新型トランスヒューマノイド兵を打ち倒せる武器が欲しいの」
リサの言葉を聞くと目を瞑るリリス。すると、ホログラム状の画面がリリスを囲むように表示される。
画面『ERROR』
ホログラムの画面すべてに表示される。目を開けるリリス。
リリス「この情報にはアクセス出来ません。最新型トランスヒューマノイド兵のデータが無いと、武器を造ることは出来ません」
リサ「それならルビーが取り掛かっているわ。もう終わりそう?」
ルビーを見るリサ。
ルビー「少し時間がかかる。みんな、先にベースになる武器を選んでおいてくれ」
ルビーの方を向くリリス。
リリス「では、私が皆さまの武器選びのお手伝いをさせて頂きます」
それを聞いたレインたちは各々、武器を選び始める。レインに着いて行くサバド。すると、ホログラムのリリスが5人に分裂し、各々の所に向かう。ずらりと武器が並ぶ中で、壁に架けられた2丁のハンドガンとベルト型の機器を食い入るように見つめるレイン。
サバド「流石、アンタはお目が高いな。リリスが作った新作のナイトウォーリアーだ」
レインの前にホログラム状のナイトウォーリアーの映像を出すリリス。そして、ホログラムを使いながら説明を始める。
リリス「このナイトウォーリアーは、フルオートとセミオートどちらも使えるように改造してあります。また、この銃の一番の特徴は弾丸が9mmと.45ACPの2種類を使うことが出来る事です。あとマガジンはこのベルト型のリローダーによって弾丸が込められて、マガジンが供給されます。弾丸はグリップの機器とリンクしていて、グリップのダイヤルを操作すれば、敵によって瞬時に切り替えられます」
ホログラムで9mmの弾丸を連射し、複数の敵を一掃する映像と、単発で体格が良い敵を.45ACPで打ち抜く映像が流れる。
リリス「あなたのハンドガンを主軸とする戦闘スタイルには、これ以上に無い相棒になることでしょう」
早速装備を付けてみるレイン。すると、グリップが蒼く光る2丁のナイトウォーリアー。
サバド「銃を投げてみろ」
言われた通り銃を前方に投げるレイン。すると、銃が宙で静止して、フォルスターに吸い寄せられて収まる。その光景に驚くレイン。
リリス「パルスマグネットが銃に搭載されています。手から2メートル以上離れるとフォルスターに自動で収まる設計です。これで銃を紛失する心配はありません」
興味津々な表情で銃を見つめるレイン。すると、グリップのダイヤルを操作し、リローダーのマガジンの弾薬を切り替える。そして、レインがマガジンキャッチボタンを押してマガジンを落下させると、新たなマガジンがリローダーから射出され、銃に装填される。銃を満足そうに見るレイン。
サバド「銃には満足いってくれたみたいだな」
リリス「次は何をお探ししましょう?」
リリスの言葉を聞くと、ナイフがずらりと並んだ棚をじっと見つめるレイン。
ストーム「これは何だ?」
ストームの目の前に大剣のような機械武器がある。
リリス「それはソードガンという最新鋭の武器になります。主に大型戦闘端末に与えられる武器ですね。重量が220キロある為、人間には・・・」
すると、ストームをスキャンするリリス。
リリス「貴方なら扱えるかもしれませんね」
ストームの巨大な胸板を見るリリス。
ストーム「ガン?ってことは弾が出んのか?」
サバド「はい。弾と言ってもレーザーガンなので、標的を焼き切るようになります。少し触ってみますか?」
ストーム「頼む」
リリスがソードガンに向けて手をかざすと、武器を固定していた留め具が外れる。片手で軽々と持ち上げるストーム。すると、ソードガンを見回す。
ストーム「この剣、刃は付いてないのか?」
リリス「剣と言っても相手を斬ることはしません。完全に粉砕する為の武器です。持ち手のボタンを押してみてください」
ボタンを押すと、刃に当たる部分が紫色に発光する。
リリス「その紫色の所に物質がぶつかると、強力な振動によって起こる衝撃波が出る構造になっています。これにより、車両兵器でも粉砕する破壊力を生み出します」
ストーム「なるほど。レーザーガンはどう撃つんだ?」
リリス「鍔にあるレバーを引いてください」
言われたままレバーを引くストーム。すると、ソードガンがコンパスのように真ん中から広がって変形し、分け目の先端から銃口が出てくる。
ストーム「イカしてるぜ!」
リリス「この構造から、コンパスガンとも呼ばれています。トリガーを引けばレーザーが照射される仕組みになります。但し、このレーザーを撃つためにはある一定量の衝撃をソードガンに与えて、エネルギーをチャージしなければいけません」
ストーム「つまり大量の敵を投げ飛ばせば良いんだな!」
リリス「そういうことです」
リリスの言葉でにやけるストーム。そんなストームを見て微笑むリリス。武器を見ながら辺りを見回して悩むシールド。リサはライフルコーナーでリリスと一緒に吟味をしている。
シールド「俺は、どんな武器が良いだろうか?」
シールドの方を見るストーム。
ストーム「お前はいつも通り、アサルトライフルで良いんじゃないか?」
シールド「超近接戦闘も戦えるのが良いんだよな。さっきお前が戦ったやつみたいのが相手だと、間合いを直ぐ詰められるだろ」
すると、リリスが棚から銃剣が付いたアサルトライフルを指さす。
リリス「これは如何でしょうか?この銃の先端に付いたレーザーブレードは大概のものを焼き切ることが出来ます。また、スイッチを押すことによって剣の長さが三段階まで伸縮出来ますし、ブレードは取り外し可能です。何より、この武器の魅力は重量です」
銃を手に取るシールド。そして、銃を構えてみる。レーザーブレードの刃が黄色く光る。
シールド「これは良いな!軽い!」
リリス「強化カーボンによる部品で従来よりも1.5キロの軽量化に成功しました」
レインとリリスがナイフコーナーを見ている。視線の先には2本のワイヤーが付いたバタフライナイフがある。その様子をじっと見つめるルビー。
リサ「みんな、とりあえず選んだ武器のデータはルビーに送って」
リサの声に反応した一同。そして、デバイスから武器情報を送る一同。ラボ中央にある巨大な武器製造兵器リリスを見るリサ。
リサに近寄るサバド。
サバド「これのお陰で商いが出来ている。妻とお義父さんが作ったこれは、正しく神の所業だ。まぁ、妻にとっては悪魔の兵器だが・・・アンタたちに初めて仕事を依頼したのはイスラム過激派からこれを護衛する依頼だったな」
〇サバドの回想
砂漠地帯を走るリサが運転する巨大なトラック。その前を走るもう一台のトラックはサバドが運転している。サバドの運転するトラックのコンテナには武器製造兵器リリスがある。リサが運転する巨大トラックの後ろを9台の装甲車が追いかける。運転しながら、サイドミラーで装甲車を見るリサ。
リサ「みんな、準備は良い?」
そう言うと、リサが運転する巨大トラックのコンテナが開き、バイクに乗ったレイン、バギーに乗ったストーム、サイドカーに乗ったルビーとサニーが飛び出す。装甲車は機関銃でリサが運転する巨大トラックに向かって発砲する。その瞬間、シールドが印を結び、巨大トラックにバリアを張る。腕を大砲に変形させたサニーと手から炎を出し、大きな球体にしたルビーが、前方2台の装甲車の下部に向かって攻撃する。それにより、爆発を起こし、大きく横転する装甲車。それを避けた装甲車に向かって突風を出すストーム。物凄い風圧によって吹き飛ばされる4台の装甲車。残り3台の装甲車がトラックを追いかける。そのうち、1台の装甲車には砲台が付いている。トラックに砲台を向ける装甲車。
『ダァァァァァンッッッ!!』
リサが運転する巨大トラックに向かって砲弾を撃つ。その瞬間、バイクから飛び上がり、砲弾の方へ向かうレイン。バイクはレインが席を離れた瞬間、自動運転に切り替わる。そして、腰に付けた緑色に刃が光る二本のレーザーナイフを抜く。ナイフの柄尻にはワイヤーが付いており、腰の機械が付いたベルトに繋がっている。そして、右手のレーザーナイフで砲弾を真っ二つにする。すかさず、左手のナイフを左側にいる装甲車に向かって投げる。すると、装甲車の甲板に突き刺さる。その瞬間、腰のベルトがワイヤーを高速で巻き取り、装甲車の甲板へ一瞬で移動するレイン。そして、甲板を切り裂く。それにより、装甲車のエンジンと前輪部分が切断される。レインはすかさず、右の装甲車のドアにナイフを投げて移動する。レインが離れた瞬間に爆発する装甲車。そして、運転席と運転手を真っ二つにするレイン。その後、右手のナイフを砲台が付いた装甲車の砲台に投げる。再び、レインが移動した瞬間に爆発する装甲車。レインに向かって機関銃を撃つ装甲車。その弾丸を左手のナイフで弾きながら躱すレイン。そして、装甲車にたどり着くと、着地せずに砲台を真っ二つにする。そして、そのまま装甲車を飛び降りるレイン。すぐさま爆発する装甲車。地面に落下するレインの元に自動運転のバイクがタイミング良く来る。そして、そのままバイクに乗るレイン。サバドがレインたちをトラックのサイドミラー越しに口が開いたまま見つめる。
サバド「ありゃ、人間業じゃない・・・」
〇同・ラボ
サバド「あの時から、あんたたち以上の仕事が出来る奴らは居ないと思ったね!それにしても、あの時は依頼を受ける条件が厳しい君たちが、依頼を受けてくれるとは思ってなかった」
リサ「それは、貴方たちと私たちが恨む組織が同じで、何より貴方の依頼を受けたのは、あくまで民間人には手を出さないプロにしか、武器を売らなかったからよ」
リサの言葉に少し俯くサバド。
サバド「妻の為なら例外はある」
リサ「え?」
悲しそうなサバドを見つめるリサ。
ルビー「見つけた!」
ルビーの声に反応する一同。そして、ルビーを囲むように集まる。
ルビー「アイツらの外殻はST-18という素材で出来ているみたい」
サバド「ST-18!?それって最新宇宙ロケットの外殻に使われる素材だろ。そこらの武器じゃ傷一つ付かんな・・・」
ルビー「ST-18は963hzの周波数に当たると繊維が壊れる」
リサ「突破口が見えたわね!」
ルビー「963hzを発生させられる弾丸と近接武器の開発さえ出来れば、何とかなりそうだな。まぁ、弾丸はかなりの工夫が必要だと思う。ストームが持っている武器の構造をいじれば作れないことは無さそうだが・・・」
ストームが持つソードガンを見つめるルビー。
リリス「はい。可能です。ソードガンの高周波部分は小型化可能なので」
リリスの発言で笑みを浮かべる一同。デバイスの情報をスクロールするルビーの顔が青ざめる。
ルビー「嘘だろ・・・」
ストーム「どうした?」
ルビーがデバイスを操作すると、ホログラムが巨大に表示される。
ルビー「俺らを襲撃した兵たちの中で特に強かったあの三人が最新型トランスヒューマノイド兵なんだが・・・」
ストーム「トランスヒューマノイドって機械と人体を融合させて強化された兵だろ」
ルビー「そう。だが、問題はそこじゃない。さっき俺らが戦ったあのヒューマノイドたちはNo.369を摂取している・・・」
ルビーの一言に言葉を失うミロクメンバーたち。
リサ「アレがアイツらにも・・・」
シールド「だから、俺らが戦ったヒューマノイドたちは特殊能力が使えた!?」
険しい表情を浮かべるレイン。
リサ「絶対に潰すよ!これが私たちの因縁を終わらせる最後のチャンス!それに、私たちの様な思いをする子をこれ以上出さないためにも、ここできっちりケリを付ける!」
リサを見て頷くミロクメンバーたち。
リサ「ルビー!武器が出来るまでの予測時間は?紀子のことをあまり待たせられないわ」
デバイスを見るルビー。
ルビー「44時間で何とかする」
リサ「ルビーはダウンロードしたデータをもとに、サニーとバーチャルシミュレーターの作成をお願い!」
ルビー「もう取り掛かってる!」
リサに向かってグッドジョブサインをするサニー。
リサ「流石ね!じゃあ私たちは準備が出来次第、バーチャルシミュレーターによる訓練に移行するわ。ちなみにシミュレーターのデータ構築にかかる時間は?」
ルビー「時間がかけられねぇから、敵を反映させるだけなら3時間ってところだな」
リサ「よし!みんな、武器開発とトレーニング合わせて今から44時間で完了させる!」
ストーム「よっしゃぁ!!気合い入れていこーぜ!」
シールドの肩に手をかけ、絞めるストーム。
シールド「く、苦しいっ・・・」
その光景を見て笑うアイコンを出すサニー。リサはレインに向かって頷き、レインもリサに向かって頷き返す。
『ぐぅぅぅぅ・・・』
レインの腹から音が鳴る。赤面するレイン。
ストーム「おいおい。締まらねーぞ!」
『ヴォォォォォ!』
ストームの腹から大きな音が鳴る。赤面するストーム。
ルビー「人の事言えねーじゃねーか!」
ため息をつくリサ。
リサ「一旦ご飯にしよう」
○アメリカ・サイバー9・地下研究室(夜)
暗い大きな部屋の診察椅子で、拘束具で固定された状態で眠っている紀子がいる。診察椅子の背中部分には六つの穴が空いていて、隙間から紀子の背中が露になっている。研究室の天井には巨大な球体型の機械が付いている。そして、紀子を囲むように青色の手術服を着た八人の研究医が囲んでいる。
〇同・サイバー9・オフィス(夜)
地下研究室の様子をオフィスのモニターから監視する司令官。そして、モニター前のマイクに近寄る。
〇同・地下研究室
研究室の天上に付けられたスピーカーに注目する研究医たち。
スピーカー・司令官「始めろ」
司令官の合図を聞くと素早く動き、紀子の頭に冠の様な大量のコードで天上の巨大な機械に繋がっている装置を紀子に付ける。すると、球体から六本の太いコードが出て来る。コードの先端はナイフのようになっている。そのコードを次々に紀子の背中に刺し込む研究医たち。
紀子「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」
悲鳴を上げて目を覚ます紀子。
研究医A「抽出開始!」
すると、球体型の機械が赤く発光し出す。それに応じて、紀子が蒼く発光する。その蒼い光をコードと冠の様な装置から球体型の装置へ送られていく。
紀子「うゔぁぁぁぁぁぁ!!」
もだえ苦しむ紀子。研究員Aがレバーを前に倒す。すると、更に激しく発光する球体型の機械。それにより、光を吸収する量が急激に増加する。
紀子「うううぅぅぅぅぅ・・・」
白目になり、よだれを垂らしながら痙攣する紀子。
END