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レイン ―RAIN―  作者: 髙橋彼方
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Episode2『始動』

近未来で起こる"人類の進化の形"をめぐるSFバトルアクション!

『レイン ―RAIN―』

Episode2『始動』

〇登場人物

レイン(21)…傭兵を生業とする『ミロク』のリーダー

紀子(のりこ)(13)…月から人間を進化させるため、沖縄に降ってきた少女

シーク(33)…イギリス政府に雇われている科学者

リサ(23)…『ミロク』の狙撃手

ルビー(18)…『ミロク』のハッカー

サニー…『ミロク』の突撃部隊

ストーム(22)…『ミロク』の突撃部隊

シールド(23)…『ミロク』の突撃部隊

BQ9…最新型トランスヒューマノイド強化兵

ティグレ…虎DNA結合トランスヒューマノイド強化兵

パヴォーネ…孔雀DNA結合トランスヒューマノイド強化兵

ルーポ…狼DNA結合トランスヒューマノイド強化兵

アンドロイド兵…完全機械で構成された人型AI兵士



〇ミロク基地・地下メインルーム(夜)

  壁にずらりと銃火器が並ぶメインルームで紀子を囲むように立っているレインたち。全員がリサと同じような武装装甲を着ている。


ストーム「紀子!レインを治してくれてありがとう!!!」


大泣きしながら紀子の手を握り、感謝するストーム。あまりの迫力に顔が引きつる紀子。


ルビー「どうすんだ?依頼主はもう死んじまった。口座は凍結しているから、こいつ助けても報酬は入んねーぞ」


ルビーの頭を殴るストーム。


ストーム「お前!それは黙ってろ!」

ルビー「痛ぇな!」

取っ組み合いを始めるストームとルビー。


シールド「二人とも子供の前でみっともないぞ!」

ストーム・ルビー「オメェは黙ってろ!」


しょんぼりするシールド。それを見て笑うサニー。


リサ「みんな静かにしなさい!」


その声に一斉に黙る一同。


リサ「ごめんね。ルビーが言っていたことは全然気にしないでね」


すると、リサが紀子に近づき、自己紹介を始める。


リサ「私の名前はリサ。それで、これが私たちのリーダーのレイン」


紀子をじっと見つめるレイン。


リサ「もう気づいているとは思うけど、レインは喋ることが出来ないの。あと、そこの大男がストーム」

ストーム「よろしくな!」


紀子に向かってグッドジョブサインをするストーム。


リサ「あと、そこに居る三人がシールド、サニー、ルビー」

シールド「よろしく」


紀子に向かって手を振るサニー。サニーの顔には、にこやかなアイコンが表示される。


ルビー「・・・」


紀子から顔を反らすルビー。


紀子「私のせいで皆さんの大切な方に怪我をさせてしまいました。本当にごめんなさい。それに私、お金もってないし・・・」


落ち込んだ表情で喋る紀子。


リサ「謝る必要なんて無いよ。それより、紀子の能力凄いよ!あんな怪我を治せちゃうなんて!」

ストーム「本当だぜ!もしかして、あの能力が有ればレインが喋れないのも治せるんじゃねーか?」

紀子「それは出来ません。レインさんが喋れないのは精神的な傷からなので。私が治せるのは身体的な傷だけです。あと、死んだ人は蘇らせることは出来ないし・・・」


そういうと俯き、涙ぐむ紀子。そんな紀子に近寄り、中腰になるリサ。


リサ「いきなりで辛いかもしれないけど、私は紀子を助けたい。だから紀子の事を詳しく教えてくれるかな?」


温容な顔のリサを見つめる紀子。


紀子「はい・・・私とパパはイギリスの研究所から逃げてきました。パパと言ってもシークとは本当の親子じゃ無いんですけど。私は気付いた時から施設に居たので、家族が居ませんでした。施設では毎日のように私を使った実験が行われていて、優しく接してくれる人なんて一人も居ませんでした。ただ一人、シークを除いては・・・シークは私に約束してくれました。ここを抜け出して、家族として一緒に暮らそうって・・・」


険しい表情で紀子の話を聞く一同。中でもレインは体が小刻みに揺れ、拳を強く握っている。そんなレインを見つめるリサ。


紀子「皆さん、お願いです!私を殺してください!もう、私のせいで傷つく人をみたくないんです!」


涙を流しながらリサを見つめる紀子。いきなりの一言に思わず動揺する一同。


リサ「急に何を言っているの!」

紀子「計画を阻止するためにも、私はアイツら(・・・・)に捕まるわけにはいかない!」

リサ「計画?」

紀子「私の能力を使って、世界中の人々を操る計画です。私と軍事AIを繋いで、特殊な超音波を発生させるんです。その超音波を、人口衛星を使って世界全体に浴びせるつもりです!そうなったら、世界中の人々の思考をアイツら(・・・・)が自由にコントロール出来るようになってしまいます!」


拳を強く握りしめる紀子。


紀子「私は絶対、兵器(・・)になんてなりたくない!」


紀子の話を聞き、目を見開くレイン。


〇レインのフラッシュバック

  雷雨の中、血まみれで両手にバタフライナイフを持った青年のレインが立っている。

レインの周りには血まみれで倒れているアフガニスタン軍隊の骸が地面を埋め尽くし、血で池が出来ている。


〇同・地下メインルーム

  落ち着いた顔で紀子に尋ねるリサ。


リサ「その計画はいつ行われるの?」

紀子「一週間後、スーパームーンの満月の夜です。計画を達成するには地球に最接近した満月のエネルギーが必要なので・・・」


それを聞くと笑みを浮かべるリサ。


リサ「じゃあ、つまり一週間捕まらなければいいわけね!」


レインを見るリサ。それに対して頷くレイン。


紀子「え?」

ストーム「一週間くらいなら、捕まらずにいれそうだな!」


頷く一同。すると、紀子に向かって手を差し伸べるリサ。


リサ「話を聞いて、ますます放っておけなくなったわ!私たちに任せて!」


希望が見え、その場の空気が和む。そして、リサの手を取る紀子。紀子の表情が少し明るくなる。


『ヴゥェェン!』


部屋の中央でキューブ型の歪が発生する。急いでレインはナイフとサブマシンガン。リサはライフル銃。ストームはショットガン。シールドはアサルトライフル。ルビーは対兵器用戦闘グローブを壁から取り、歪に向かって構える一同。サニーは右腕が変形して、大砲になる。その瞬間に両手を重ね、合掌した後、指と指を重ね合わせ、外縛印(げばくいん)を作るシールド。すると、全員に緑色のバリアが張られて覆われる。バリアからは、サニーの大砲のみはみ出している。そして、兵が出て来る瞬間に大砲が雷を纏い、オレンジ色のエネルギー波を発射するサニー。打ち出されたエネルギー波が歪に当たると爆発する。部屋に轟音が響き渡り、家具などは一瞬で灰になる。大きく揺れる部屋。そして、一帯に広がった爆煙が段々と晴れる。その瞬間、過呼吸になりながら、膝から崩れるシールド。全員に張られていたバリアが一斉に解除される。すると、歪があった場所に体が漆黒で、液晶画面で構成されている覆面をした最新型トランスヒューマノイドのBQ9がアンドロイド兵たちを盾にして立っている。盾になっていた前方の兵たちは焼き焦げ、溶けている。また、BQ9の近くには三人のトランスヒューマノイドのティグレ、パヴォーネ、ルーポがいる。三人は焼き焦げた兵とは身なりが明らかに違う。ティグレの顔はまるで虎の様な形で、足が獣脚になっている。パヴォーネは鳥のくちばしのようなマスクをしており、全身が革製の様な黒いコートで覆われている。ルーポはガスマスクをしており、体は細くて、全身にボンデージスーツのようなものを纏っている。また、それぞれの胸にナンバーが刻まれており、ティグレにはa‐1。パヴォーネにはa‐2。ルーポにはa‐3と刻まれている。蹲踞(そんきょ)の態勢になり、辺りをキョロキョロしながら見ているルーポ。庇うように紀子の前に立つミロクメンバーたち。BQ9を凝視するレイン。BQ9の腕にはサイバー9の腕章が付いている。


ストーム「サイバー9だと・・・」

BQ9「標的確認」


そう言うと、紀子に向かってアサルトライフルの銃口を向けるBQ9。その瞬間、ナイフを構えて強く地面を蹴るレイン。すると体が飛び上がり、あっという間にBQ9に近づいて、ナイフでアサルトライフルを真っ二つにする。さらに、BQ9の首元にナイフを振りかざすレイン。それに対してナイフの刃を手で受け止めるBQ9。そして、ナイフの刃を根元から折る。ティグレとパヴォーネもアサルトライフルを構え、リサたちに向け発砲する。発砲音にオドオドしながら耳を押さえるルーポ。その瞬間にストームが胸の前で手をクロスさせる。すると、突風が起こり、弾は全て壁に向かって逸れる。それを見たパヴォーネは銃を収める。


パヴォーネ「やるじゃん!」


パヴォーネが腰のフォルスターから赤いスイッチを取り出し、スイッチを押す。すると、小刻みに震えだし、頭を押さえるルーポ。


ルーポ「ヴゥゥゥォォォォ!」


遠吠えのような声を発するルーポ。すると、見た目がどんどん変化しだし、まるで人と狼の中間のような姿に変身する。


パヴォーネ「近接(クローズ・)戦闘法(コンバットモード)!」


そう言うとパヴォーネの体も変形しだす。パヴォーネは鉄の翼が生え、まるで孔雀の様な容姿に変身する。ルーポは更に体が巨大化する。


ルーポ「ヴァィアァァァ!」


雄叫びをあげるルーポ。


ストーム「ルビー!」


ストームが声を掛けると、ストームの横に立つルビー。そして、両手を前方に伸ばすと、ルビーの手から炎が出る。それに合わせ、突風を出すストーム。そして、巨大な火炎をルーポに向け放射する。しかし、火炎をものともせず、ストームとルビーに向け突進してくるルーポ。一瞬で二人の懐に入ると、腹部にボディーブローをする。二人が着ていた装甲にヒビが入り、口から泡を吹きながら壁に吹っ飛ばされるストームとルビー。パヴォーネに向け、一斉に射撃するリサとサニーとシールド。しかし、パヴォーネの翼で全て弾かれる。そして、翼を大きく広げる。すると羽が発射され、羽は三人を囲むように着弾する。その後、パヴォーネが腕に付いたデバイスを操作する。すると、羽から緑色の強力な電流が流れ、感電して倒れ込むリサたち。そして、がら空きになった紀子に向かってハンドガンの銃口を向けるティグレ。


『バァァァンッ!』


銃口から注射器型の弾が発射され、弾は紀子の腹部に当たる。その瞬間、紀子の視界がどんどん薄れていく。レインの方を見る紀子。レインはBQ9に取り押さえられ、BQ9が今にも(とど)めを刺そうとしている。


*紀子のモノローグ 以後紀子のMと表記

紀子のⅯ「助けなきゃ・・・助けなきゃ・・・助けなきゃ・・・」


レインに向かって手を伸ばす紀子。そして目を見開く。


紀子「にげてぇぇぇ!」


紀子が蒼く発光し、部屋が光で包まれる。あまりの光に怯むBQ9。光が止み、辺りを見回すBQ9。すると、麻酔で眠った紀子の姿がある。しかし、押さえていたレインの姿が無い。また、レイン以外のメンバーの姿も無い。


ティグレ「追いますか?」

BQ9「無駄だ。この女の能力でワープすると歪が出来ない。まるで点と点が重なったように・・・」


紀子を見つめるBQ9。


*BQ9のモノローグ 以後BQ9のMと表記

BQ9のM「自分自身は能力でワープが出来ないから、他の奴だけ逃がしたって訳か。咄嗟の判断・・・能力をコントロール出来ないと聞いていたが、目覚めつつあるということか」


紀子を担ぎ上げるBQ9。


BQ9「任務は達成した。撤収するぞ」


BQ9が腕に付いているデバイスをいじると着信が入る。


デバイス『CALL 999』

こめかみ部分を触り、着信に応答するBQ9。


BQ9「目標は無事回収しましたが、ミロク(・・・)()検体(・・)たちには逃げられました」

司令官「そちらは後で対応すればいい。開発を早めるため、合流地点を変更する。サイバー9に連れてこい。そこで実験を続行する」

BQ9「分かりました」


電話を切るBQ9。


〇繁華街・裏路地(夜)

  暗い裏路地で倒れ込むレイン。辺りを見回すと他のメンバーも同様に倒れている。近くに居たリサを揺すり、起こすレイン。


リサ「え・・・此処は?」


×  ×  ×


リサ「あの子の事は放っておけないわ!紀子の境遇って、昔の私たち(・・・・・)そのものじゃない(・・・・・・・・)!」


リサの一言に考え込む一同。


ストーム「でも、相手は政府運営のサイバー9だぞ・・・」

シールド「そうだな。流石に今回は手を引いた方が良い。しかも政府が関わっているなら、俺らは尚更・・・」

ルビー「俺は、アイツら(・・・・)とはもう二度と関わりたくない・・・」


ぼそっと呟くルビー。俯くシールド。そんなルビーたちを見てしょんぼりするサニー。


リサ「みんな・・・」

『バンッ!!』 


壁を殴り、メンバーを睨みつけるレイン。


リサ「レイン・・・」


レインを見つめるメンバーたち。レインの表情を見て微笑むリサ。


リサ「貴方がその表情を見せるなんて、あの時以来ね。リーダー・・・」


リサ同様に微笑むメンバーたち。


ルビー「リーダーにその顔見せられたら、やるしかないな」

ストーム「元々俺らはリーダーに救われた命。

アンタの為に使う」

シールド「そうだよな・・・あそこまで話聞いて放っておける訳ないよな!」


決意を固めた表情を浮かべるメンバーたち。そして、路地の出口に向かって歩き出す。

                 END


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