第六十九話 ノアの方舟(仮)
「ふはっはっはっは!世界はこんなにも美しいではないか!」
「落ちたら死ぬぞーマーリン!」
マーリンは街の中央の塔の上で街を見渡していた。
俺たちはコア・シティを出たあとしばらく歩き、遠い街に着いた。
すると、マーリンが突然この街の景色を見たいと言い、中央にある時計塔の屋根の上に登った。
「り、りりり、輪ー!助けてー!」
しばらくすると、情けない声が聞こえた。
最初は自分で登れたのに帰りは降りれないようだった。
「まったく、今行くからなー。」
「ふー、この街の景色は素晴らしかった!この場所なら我が宿敵、ソウルイーターも攻めてこないだろう。」
「けっ、自分で降りれなかった癖に。」
「はあ!?降りれたし!我が呪いの左腕をもってすれば、あんくらい普通に降りれたし!」
「はいはい、これ食べて落ち着いて。」
手に持ってる焼き鳥をマーリンの口の中に突っ込む。
「むがっ、もぐもぐ、ほいひーって、こんなので我を誤魔化せると思っているのか!見せてやろう、我の封印されし左腕、ミッドナイト・ロータス・エンジェ」
「ん、なんだなんだ?」
食べ歩きをしていると、ある場所に人が沢山集まっているのを見た。
マーリンと共にそこに行くと、そこは港だった。
「船か。」
近くの人に話を聞くと、どうやらこの世で初めての船が完成したらしく、今からその船に乗って、航海をするらしい。
「さあ、一般市民の中で共に航海をするものはいないかな?」
「お前いけよ」
「無理だよ、仕事があるのに。」
「それにちょっと危なそう。」
周りがざわめいてる中、マーリンが勝手に一人で前に出た。
「我が行こう......」
「......」
「そいじゃ、出発ー!」
結局、船に乗った一般民は俺とマーリンだけだった。
「こんにちは、僕はこの船の船長、ノアだ。よろしく。」
この船の船長、ノアの見た目は少年ほどの身長で、幼い声だった。
「よ、よろしく......、俺は輪、こっちは」
「我は時空の番人マーリン、この船の名前はなんという?なければ我がつけてやろう。ブラックマンタ、デーモンブラック、ウルトラブラックホイール」
ブラック多すぎだろ。
ノアは笑いながら
「悪いけど、この船には名前はもうあるんだ。その名も、約束の船だ。いつか交わした約束をこの船が繋ぐ。」
マーリンは目をキラキラと輝かせながら、
「約束の船......約束の船......」
と繰り返していた。
「今日は初航海の日だから、僕は操縦室を離れられないけど、明日はこの船を案内出来るから、今日はゆっくりしてて。」
そう言うと、ノアは船の中へ歩いていった。
その日は部屋でマーリンと他愛ない話をしながら夕食の時間になった。
「なんとも美味な夕食たちだ、これらが我の血となり肉となり骨となるのだ。シェフを呼んでくれ、お礼が言いたい。ほう、これも美味な味がしそうだ。」
黙って食え
横でマーリンが喋っているのを聞きながら、俺は目の前にある夕食を食べていた。
「なあ輪、そういえばこの食堂にはほとんどの船員がいるそうだが、ノアは見当たらないな」
「確かに、まだ仕事をしているのかな」
ノアか......たしか前世の世界でも船に関連があったな。なにか関係があるのか?
その後は自分たちの部屋に戻りすぐに寝てしまった。
「やあ、よく眠れたかい?早速船の案内をするよ。」
「ああ、よろしく頼む。」
部屋のドアを開けると、目の前にノアが立っていた。
「昨日は仕事が忙しかったみたいだな、我らが食事をしている時にもいなかったではないか。」
「あはは、初日だったから忙しくてね。」
俺とマーリンはノアに船の案内をしてもらいながら、色々なことを聞いた。
中でも驚いたのは、この世界で船といえるものはこの船が最初だけだと言う。
「まぁこの世界は広いからね、もしかしたらこの船より前の船があるかもしれないけど。さあ、ここが最後、操縦室だよ。」
案内された操縦室はいくつものボタンやレバーがあった。
横を見るとマーリンが顔を輝かせながら操縦室の至るところを見ていた。
「好きなだけ見てもいいけど、触っちゃダメだからね。」
「安心しろ、我は人の言うことを聞くことができる男だ。」
船内の案内が終わり、お昼になったので食堂に向かい、目の前にある食事を口に運ぼうとすると、突然大きな衝撃が起こり、顔にカレーがぶっかかった。
「あっつ!!あっつ!カレーあっつ!!!」
「な、なんだ今のは!?まさかブラックデーモンが!」
「少し見てくる。」
俺が顔を拭くと、ノアはすぐに食堂から出ていった。
「我らも行くぞ!輪!」
俺たちは船の外に出ると、周りがとてつもない豪雨と津波に見舞われていた。
「くっ!何だこの津波は普通のと全然違うぞ。」
「これは、まさか!!」
マーリンはいつもと違い険しい顔になると、周りを見渡した。
「マーリン、なにか分かるの?」
そう言うと、マーリンは無表情になり、話した。
「この世界には三つの天災がある。一つはクエイク、地面を揺らし大災害を起こす。一つはメテオ、宇宙から星が落ち大災害を起こす。そして最後の一つはウェーブ、海を動かし大災害を起こす。」
メテオ?俺が使ってる技と関係があるのか?
「なぁマーリン」
「輪、お前は船内でじっとしてろ。これは時空の番人の使命だ。」
そう言い、マーリンが腕の包帯を解こうとすると、
「!?あれは、人か?」
マーリンがある方向に指さす。
そこには人がその場に浮いていた。
「あれは、もしかして」
俺はその人に見覚えがあった。
何度も俺の前に立ちはだかり、俺の命を狙ってきた。
「シーパ......」




