第六十八話 小さな少女の大きな解放
「ほらほらー、こっちおいでよーワンダフル!」
「ワン!ワン!」
ネオスがワンダフルと共に走り出し、野原を駆け回る。
ノリスはその間、野原にシーツを敷き、弁当の準備をする。
「ネオスー、ワンダフルー、ご飯にしよう!」
「おっけー」
「ワン!」
一人と一匹がノリスの元まで走り、シーツの上に座ると、直ぐに弁当を食べ始めた。
「ワンダフル、はいご飯。」
ワンダフルはネオスと同じように一心不乱にご飯を食べ、一緒に顔を上げると、お互いの顔に食べ物のカスが口の周りについていた。
「あーはっはっは!」
「何笑ってんのよ、私の新しい魔法を試しちゃうわよ?」
ネオスとワンダフルがお互いの顔を見ると、笑い転げた。
「ここ触られて笑ったら天才です。」
「アハハハハハ...」
「ここ触られて笑ったら馬鹿です。」
「......」
ネオスの顔は笑うのを我慢してるようだった。
「ちなみに今の逆です。」
「なんでやねん。」
「わんわん.......わふぅ!」
ワンダフルが野原で転がり回りながらネオスとノリスを遊びに誘っていた。
「さて、もう一遊びしようか。」
「そうね。」
二人がワンダフルの近くに走ると、突然ワンダフルが呻き声を上げた。
「ううー!」
二人はワンダフルが向いている方向を見るが、そこには何もいなかった。
「ワンダフル?どうしたの?」
ワンダフルはしばらく野原の奥の森の方を見ると、すぐに走っていった。
「ワンダフル!どうしたの!?」
「ワンダフルー!どこー?」
ネオスはノリスと二手に分かれてワンダフルを探していた。
森の中を歩き回るが、ワンダフルの姿は見えなかった。
「それにしても、なんでワンダフルは突然呻き出したんだろう。」
森の中を歩き回っていると、突然ノリスの叫び声が聞こえた。
「ノリス?」
声のした方向に走ると、そこには無数の倒れた狼とワンダフルを抱いたノリスがいた。
「ノリス、大丈夫?ワンダフルも......」
ノリスが振り返ると、ワンダフルとノリスの体は血まみれだった。
「ノリス......ワンダフル......」
見ると、ノリスは血を浴びていただけで怪我はなかったが、ワンダフルにはたくさんの傷があり、動かなかった。
ここの狼たちをノリスが一人で?
「ワンダフル......」
「ねぇ、ネオス、ワンダフルが、動かないの。いくら名前を呼んでも......動かないの......いつもは、呼んだらすぐに来てくれるのに......」
そして、ネオスとノリスはその場で泣き崩れた。
しばらく経つと、ノリスがなにかの本を読み、すぐに家から出ていってしまった。
「ワンダフル......会いたかったよ......」
「ワンダフル......久しぶり......」
二人はワンダフルを抱きしめ合うと、
「さよなら、ワンダフル。」
しばらく経つと、周りの白い空間から元の洞窟に戻った。
「会えた?」
ネオスとノリスは涙を流しながら
「うん、会えた......ありがとう......」
「じゃあねー!」
大罪達と別れ、コア・シティに戻ると、辺りはすっかり夜になっていた。
「それじゃ、おやすみ。」
俺とマーリンは宿の自分たちの部屋に入ると、すぐに眠った。
ネオスとノリスは自分たちの部屋の中のベランダから街の中を見ていた。
「この街、明かりが絶えないわね。」
「コア・シティだもん、眠らない街だからね。」
しばらく街の中を眺めていると、ネオスが口を開けた。
「今なら教えてくれる?どうしてあの日、突然家を出ていったのか。」
ノリスは少し俯くと、
「お別れを言いたかったんだ。」
「お別れ?」
「うん、ワンダフルとはちゃんとしたお別れが出来なかった。家で死の世界に関する本を見つけて、死の世界でもう一度ワンダフルと会って、お別れを言いたかったの。」
夜景を見ながら、ノリスはワンダフルのことを思い出していた。
「......だったら、なんで私を置いてったの?」
「!」
ネオスが夜景から視線をノリスに移すと、
「私だって、ワンダフルとちゃんとしたお別れ出来てなかった。私もあなたと一緒に旅をしたかった。結果的に一緒にお別れを言えたけど、どうして、私を置いてったの?」
「......ごめんなさい、あの時はワンダフルのことでいっぱいだった。あなたのことは考えられなかった。」
すると、ネオスがノリスに抱きついた。
「じゃあ、今度は一緒に生きよう。ワンダフルの分まで、二人で一緒に......」
「ふああ、おはようマーリン。」
「おはよう輪!さあ、煌めく今日を共にすごそうではないか!」
朝からテンション高いなこいつ......
顔を洗い、服を着替え、ネオスたちの部屋に入った。
「おはよう諸君、さあ君たちも輝く今日をすごそうではないか!」
「ちょっとお黙り、今いい所なんだから。」
ネオスがそう言うと、マーリンは涙目になった。
「ネオスはなにしてんだ?」
「ネイルだそうよ。」
ネイル?この世界にネイルってあったんだ!
「よーし、出来たー!どうどう?きゃわいくない?」
ネオスがテンション高く、爪を見せた。
「おお、それは呪いを付与したカース・クロウ!我が呪いの腕といい勝負になるか」
「それで、今後のことなんだけど」
ノリスは今後のことを話した。
「私たちは、二人で旅をしようかなと思うんだ。」
「そうか......それじゃお別れだな。」
俺たちは握手をかわすと、
「それで、輪くん達はどうするの?」
「我はもんちろ輪について行く!こいつとは面白い展開が起きそうだからな!」
「俺たちは、また旅を続けるよ。やるべきことがあるしな。」
「そう、私たちはまずどこに行こうかな。」
二人が悩んでいると、俺はある里の地図を差し出した。
「ここは業の里、そこにお前らと同じ原魔六血家がいるんだ。」
すると、ネオスとノリスはポカーンとした顔になった。
「ど、どうしたの?」
ネオスが俺の首元を掴み、何度もぶんぶん回した。
「業の里って、あの業の里?普通の人間とは違う、身体能力が化け物クラスで頭のおかしいあの業の里!?」
化け物?頭のおかしい?あいつらってそんなんだったの?
「う、うん、多分そう。」
「そ、そこに原魔六血家がいるのね?そうなのね?」
「う、うん。」
「きゃー!業の里が本当にあったなんて!」
「噂だと思ってたのに!やったー!」
「それじゃ、バイバイ」
「ああ、さよなら」
「我らは切っても切り離せぬ仲、やがてまたいつか会うだろう。」
二人と別れると、俺達もコア・シティから歩いていった。




