第六十三話 チョロい
「さて、あとは竜の魔獣をギルドに連れていけば......」
ネオスが時空収納に竜を入れようとすると、
「......!ネオス!離れろ!」
突然竜が起き上がり、空に飛び、高速でネオスに突進した。
「ぐあああああ!!」
突進の衝撃でネオスは壁まで吹っ飛んだ。
「ネオス!大丈夫か!?」
ネオスはなんとか意識を保っていたが、動くことは不可能だった。
「ネオス、ここからは俺がやる。」
「は?マジで言ってる?ウケるんですけど....」
「大丈夫。」
飛んでいる竜の前に立つと、俺はオーバーアイを発動し、竜に攻めた。
「うおおおおお!!」
俺は竜の元にジャンプし、竜の鱗部分に斬りかかったが、鱗は想像以上の硬さで傷はひとつも入れられなかった。
さっきの無双ラッシュでなら、傷を入れられたんだが
オーバードライブを発動しようとしたが、竜がそれを待ってくれる訳もなく、火を噴いた。
それを幻影で消すと、竜がネオスにやった時と同じように突進をしてきた。
「くっ!」
俺はそれを避け、壁を思い切り蹴り、竜の元まで跳んだ。
「これなら!」
突進した竜が地面に降り、その瞬間、俺はかまいたちを繰り出す。
「ぐぎゃあああああ」
無双ラッシュの時ほどではないが、傷を入れることができ、
「いける!」
そこからはかまいたちを何度も繰り返し、竜の攻撃を避けるの連続だった。
「はあ、魔獣を倒すなんて、あいつら頭イカれてるよ。」
「ほんとほんと。ん?」
キチとガイはある大きなほら穴の近くの木で休んでいると、ほら穴に三人組の男たちがやってきたことに気づいた。
「なんだ?あいつら。」
「さぁ、討伐じゃないの?」
男たちはニヤニヤと笑いながら、
「ここであってるんだろうな!?」
「ああ、合ってるぞ、この中に魔獣を討伐しにいった無幻の剣士と魔法使いが入っていったんだ。」
「あいつらが魔獣をギリギリまで襲い、魔獣の体力が尽きかけたところを俺たちが横取りして討伐、完璧だなぁ!」
「!!」
キチとガイはそれを聞き、三人組の目の前に現れた。
「な、なんだおめえらは!?」
「あ、あいつら巷で話題の小悪党だぞ!」
キチとガイはそれを聞き、
「小悪党なんかじゃない!大悪党だ!」
「今度言い間違えたら承知しないわよ!!」
と怒っていた。
「どうでもいいが、俺たちに何の用だ!!まさか、俺たちの荷物を奪おうってんじゃないだろうなぁ?」
「そのまさかよ!あと、討伐の横取りは許さない!!」
キチとガイは拳に魔力を込め、構える。
「けっ!何が討伐の横取りは許さないだ。小悪党のてめぇらに言われたかねぇよ!!」
「やっちまうかぁ!」
「はあ、はあ、はあ。」
俺は息切れを起こしながら、何度目か分からない竜の攻撃を剣で受け流す。
身体中は受けきれなかった傷があり、血がダラダラと流れていた。
やべぇな、とりあえず治癒魔法をかけないと。でもそんな時間がない。
「!!」
一瞬、意識が途切れ、竜の攻撃を避けきれずに食らう寸前でいると、
バァン!!
横からビームが現れ、竜はそれを食らった。
その間に俺は自分の傷を回復し、ビームが現れた方向を見た。
「ネオス!」
ネオスは立ち上がり、俺のそばに歩いた。
「ここからは私も戦うわ、輪くん、あんたは近距離で攻撃、私は遠距離で戦う、それでいいよね?」
「ああ、それでやるしかない。」
「行くわよ!相棒!」
俺とネオスはお互いに連携しながら竜を攻撃した。
俺が攻撃を受けそうになると、ネオスが防御し、ネオスが攻撃を受けそうになると、俺が竜を攻撃し、それを防ぐ。
そんな攻防が続き、数時間が経つと、
「ネオス!!はあ!はあ!あと一発頼む!!」
「はあ!はあ!ええ!任せて!!」
俺は意識を集中し、オーバードライブを発動すると、ネオスが竜に特大のビームを放つ。
竜がそれをくらい、後ずさると、俺は一瞬で竜の懐に潜り、
「無双ラッシュ!!」
最初に無双ラッシュを食らわせたところに再び無双ラッシュを食らわせ、衝撃で竜は奥の壁まで吹っ飛んだ。
そして、竜は動かなくなった。
「や、やったーー!!」
俺とネオスはその場に崩れるように倒れ、深呼吸をする。
「はあ、はぁ、はぁーー!!」
オーバードライブとオーバーアイを解除し、しばらく休むと、倒れた竜を時空収納に入れ、俺とネオスは洞窟から出口へと歩いた。
「おっしゃーー!!勝ったぞー!」
「まぁ!当然だけどね!!」
キチとガイは三人組をぶっ倒すと、
「人の心を尊べないお前らに、負けるわけないんだよ!!」
そう言って、そそくさとどこかへ行ってしまった。
「ん?何この人たち。」
俺たちはほら穴から出ると、三人組が倒れているのを見つけた。
「大丈夫?」
治癒魔法で三人を治癒すると、三人は目を覚ました。
「!!お、お前は!無幻の剣士!それに魔法使いも!」
「ま、まさか、魔獣を倒したのか!?」
「い、いやそんなはずは無い!どうせすぐに逃げたに決まって」
「倒したよ。」
「「ちっくしょーー!!」」
三人組は走ってどこかへ行ってしまった。
「なんだったんだ?」
「さあ、コント集団じゃないかしら。」
「おい、聞いたか?無幻の剣士と魔法使いが魔獣を倒したんだってよ。」
「え?無幻の剣士って黒薔薇の剣士の襲撃を何度も防いだっていう、あの?」
「おぉ、そうなんだよ。」
「まじ?いい感じに近づいて酒奢ってもらおうかな?」
「このギルドにいるヤツらみんなそう思ってるよ、聞くにはその剣士相当チョロいらしいぞ。」
「お、来たぞ!」
俺とネオスはギルドに入ると、早速受付の人に依頼完了を報告した。
「えーと、それで、魔獣はどちらに。」
「ここじゃ、狭いんで外で出しますね。」
受付の人と共に外に出て、魔獣の竜を出す。
「りゅ、竜!?」
「それでは、こちらが依頼に書かれた報酬金になります。更に今回の依頼は想定よりも高難易度な依頼だったため、特別報酬金が出ます。こちらになります。」
俺は報酬金が入った袋の中身を見ると、目が金になった。
「こ、こんなに!?」
俺がそう叫ぶと、ギルドから歓声が上がった。
「すげーぜ無幻の剣士ー!!」
「今夜は奢ってくれよー兄貴ー!」
「きゃー!無幻の剣士さん素敵ー!!」
となにやら催促が次々と出され、俺は調子に乗った。
「それじゃ、今日の支払いは全部俺が払ってやるから、たくさん食って、飲んでくれー!」
「「わあああああああ!!!」」
それからはてんやわんやだった。
ギルドにいる人達とたくさん飲んだり食ったりし、夜遅くまで騒いだ。
昔の俺だったら有り得なかっただろうな
みんなが騒いでる中、俺は外に出て、夜空を見た。
この習慣だけは、昔と変わんないな
しばらく月を見てると、ギルドからネオスがでてきた。
「もういいのか?」
「ちょっと食休み。」
ネオスは爪にネイルをつけながら今日のことを話した。
「今日は本当に倒せてよかったね。」
「ああ、そうだな。」
「輪くんは、私以外の原魔六血家と知り合いなの?」
「うん、四人と知り合いだ。」
「へー、その子達って、今どこにいるの?」
ネオスは俺の顔を見て、そう質問した。
「多分、今は業の里にいるんじゃないかな。行きたいの?」
「うん、私以外の原魔六血家を見てみたいの。」
「そう。」
「おい!なにやってんだよ!今日の主役たちがいなくちゃ、盛り上がらないぜ!」
ギルドから男が飛び出し、俺とネオスを背負い、ギルドの中へ入ってった。
「おらおらぁ!飲め飲め飲め!」
そして、俺たちは朝になるまで騒いだ。




