第五十九話 なんでも屋
「う、うーん。」
俺はあれから宿に戻り、部屋を男と女で別れ、眠りについた。
そして、目を覚ますと、
「すー、すー。」
「......」
確か、ベッドは人数分あったよな?
俺、リーノ、キイでそれぞれのベッドに眠りについたはずだ。
だが、俺のベッドには全裸で寝ているキイがいた。
「う、う、うああああああああ!!!」
俺は急いでベッドから離れ、腕を構え、警戒態勢になった。
「うーん、うるさいなぁ、あ、輪くん、おはよう。」
ニコッ
キイは普通に挨拶をし、笑顔になる。
「な、なんだお前が俺のベッドにいる!!なぜ全裸なんだ!答えろキイ!」
キイはニヤリと笑い、
「そんな、僕と過ごした夜を忘れちゃったの?僕、悲しい。」
え?嘘だろ?昨夜はすぐに寝た。そんなことはしてないはずだ。でも、悲しいと言っている。まさか、ホントにしたのか?この俺が?あいつと?いやいやいやいやいやまてまてまてまてまて、よーく考えろ。俺は昨日本当にすぐに寝た。寝ぼけて?まさか寝ぼけてやってしまったのか?そう思うと、確かに昨夜の夢の中にキイがいたようないなかったような。
本当にやってしまったのか。オーマイゴット!オーマイゴット!
「からかうのはやめなよキイ。輪、おはよう。」
横のベッドに寝ていたリーノが起き、キイに注意する。
「ちぇっ、もう少しでいい感じになったのに。」
「おらぁ!」
俺は全裸のキイを羽交い締めにし、投げ飛ばして、ローリングをした。
「おはよう!!!輪!リーノ!キイ!」
「おはようナル、今日も元気だね。」
リーノがナルにあいさつし、俺たちはいつもの三人を放置し、朝食をとった。
「輪さん、ちょっと付き合って貰えないかな?」
ハルネがそう言い、俺は了承した。
「よーし、それじゃ何でも屋の三人衆、行くよー!」
三人衆?
俺とハルネとキイはギルドに行き、依頼を探した。
ハルネ達が探しているのは討伐系や採取系ではなく、猫の捜索や、買い物の依頼ばかりだった。
「それじゃ、この街初めての何でも屋、始めるよー!」
そう言うと、ハルネは俺に依頼の紙を渡した。
俺を呼んだのはこのためか。
依頼を受注できるのは冒険者のみ。
この2人は冒険者登録してないから受注はできないのだ。
「えーと、なになに?手紙を届ける依頼。」
......手紙か、確かこの街のすぐ近くに歌姫の両親が住んでいるな。
依頼を受注し、俺たちは早速依頼者の家に向かった。
「この手紙を儂の孫に届けて欲しいんじゃ。」
家の老人に手紙を貰い、俺たちは届け先の家へと向かった。
「うーん、ここから西にある街に届けるのね。」
「歌姫の両親の家とは真反対だね。」
同じ方向なら届けられたんだがな。
街を出ると、突然、どこからか魔法の玉が飛んできた。
「!!」
俺たちはその場から離れると、そこに、あの二人組が現れた。
「あーはっはっはっ!明日が俺らを呼んでいる!」
「全ての物は私らの物!」
キチとガイは魔法の拳を構え、俺に襲いかかった。
「はぁ!」
俺は剣で拳を受け流すと、後ろからガイが魔法の拳で殴り掛かる。
「させないよ!」
キイが俺の後ろに立ち、拳を受け止め
る。
「あちょー!」
ハルネが上に飛び、突然時空収納からロケットランチャーを取り出した。
え?ロケットランチャー?
「わわわわ、なんだあれはー!」
「ちょちょちょ!これじゃ僕たちにもあた」
どっかーん。
衝撃でキチとガイは遠くへ吹っ飛んでいった。
「あぎゃーー!」
「覚えてろよー!」
俺たちはというと、
「あぎゃぎゃ。」
「ゲホッゴホッ!」
ロケットランチャーの衝撃で俺たちはそれぞれ、近くに吹っ飛んだ。
「パールに作ってもらったの!」
それから俺たちは西の街へ着くと、届け先の家に向かった。
「とんとんとん、手紙だよー!」
家のドアが開き、そこには子供がいた。
「はいこれ、お手紙。」
子供は手紙を受け取ると、喜び、
「わーい、おじいちゃんからの手紙だー!」
と走って家の中に入った。
「よかった、無事に届いて。」
ハルネはそれを見て、安心した顔を見せた。
「手紙が届いただけじゃん、そんな大袈裟な。」
俺がそう言うと、
「手紙は人の心が現れてる。その人の正直な気持ちが手紙に映し出されるんだ。」
キイはそう言い、俺のおしりを撫でた。
俺たちは手紙を届け終えると、街に戻った。
その夜、
俺はいつものように月を見ていると、そこに再びリーノが現れた。
「やぁ、輪くん。」
「よぉ、リーノ。」
リーノは俺の横に座ると、一緒に月を見た。
「今日はハルネとキイと一緒に依頼をこなしたんだよね。」
「うん。」
「二人とも仲良くなれたね。まぁ、そんなことより、輪くんとキイ、ハルネのロケットランチャーを受けたんだってね。ちゃんとみせて。」
リーノは俺の体をみると、何も無いことを確認した。
「さて、僕はもう寝ようかな。おやすみ輪くん。」
「おやすみ、リーノ。」
俺はそれからもしばらく夜空を見た。
「今日は、月だけでなく、星も綺麗だ、それに、夜風も気持ちいい。」
俺は目を閉じる。
この世界に来てから、色んな体験をした。時々辛いこともあったけど、俺はこの世界で生きている。そして、俺はまたエミナに出会って、生きていると伝えたい。




