第五十二話 小鳥の行方
街中が大騒ぎの中、俺たちは宿のテーブルを囲んでいた。
歌姫はあの後、ハルネたちが警察に言い、埋葬された。
自殺の理由は日々の過労ということにされ、城で起こったことは書かれていなかった。
そして、俺たちは歌姫が書いた俺たちに向けての手紙を読んだ。
「みなさん、私を心配してくれてありがとうございます。私がもし生きてたら、良い友達になれてたと思います。私の歌を聞いてくれて、嬉しかったです。私はここで死ぬけど、あなた達はこの先も生きて、色々なことを感じていくと思います。さようなら。
追伸 私の両親に向けての手紙を届けてくれるとありがたいです。」
俺はしばらく無言のままでいると、
「俺、届けに行くよ、歌姫の両親に。」
それを言った途端、他のみんなも
「私も行くわ。」
「私も。」
「俺もだ。」
全員で行くことにし、俺たちは街を出た。
俺たちは街を出たあと、歌姫の手紙に書いてあった両親の家に向かって歩いた。
そうだ、別に歌姫とは一日いっしょにいただけ。
それだけだ、それだけの関係......
そうやって自分の心を落ち着かせていると、パールが口を開いた。
「歌姫の家までは街を何個か挟むわね。」
「そんなに遠いのか。」
俺は街から出る前にギルドでたくさんの依頼を受注してきた。
「えーと、なになに、伝説の金のリンゴを一個手に入れる。場所は......この森のいちばん深いところにあるかもしれない。」
「かもしれない?いい加減じゃないのそれ?」
「まぁ、依頼なんてそんなもんだと思うよ、そんなことより、今夜は野宿だよね、君たち僕と一緒に添い寝しないぶふぉ!」
キイのキモキモ発言に女性陣全員がキイを殴り飛ばした。
しかし、
「殴られるの最高。」
あぁ、こいつはダメだ。
「こっからは手分けして探そう。」
かなり森の奥まで入り、ここからは別れて探すことにした。
俺はサタールと組むことになり、俺たちは別れた。
「さて、輪、その金のリンゴとやらを探しに行くか!」
「うん。」
俺とサタールは森の中を探索していると、
「輪、気づいたか?」
「うん。」
獣の気配がし、剣を抜く。
「うし、初めての共同作業だ、全力で行くぞ!」
「よし!」
予想通り、獣が数匹現れ、俺とサタールは獣と交戦状態になった。
「おらぁ!」
すげえなあいつ......
サタールは素手で獣を何体も殴り飛ばしていた。
俺は二本の剣でサタールより少し少ない数の獣を倒し、依頼の内容を見る。
「あ、これも依頼内容に入ってる。森の獣を15体討伐、さらに獣の皮を採取で報酬金上乗せ。」
俺は剣で雑に切ったので、毛皮は使えそうになかった。
しかし、サタールは素手で殴り飛ばしたので、毛皮は綺麗だった。
獣の死体を時空収納に入れると、サタールはどこかへ走った。
俺はそれを追いかけると、その先には川があった。
「おぉ!泳ぐか!」
サタールは服を脱ぎ下着の姿になると、川へ飛び込んだ。
「ん?何してんだ輪!早く来いよ。」
「はいはい......」
俺も服を脱ぎ、川へ飛び込んだ。
こんなことしてる暇はないんだけどな......
「よーし、輪、お前がどれだけ強くなったか、俺が直々に確かめてやる。勝負だ!」
突然サタールがそう言い出し、襲ってきた。
「は!?い、今!?くっ!」
俺はサタールの拳を片手で受け止めると、背負い投げをする。
サタールはそれを回避し、川の中に潜ると、俺の足をつかみ、投げた。
「うああああ!!」
それから何度も攻防が続き、息切れを起こし始めた頃、俺たちは気がすみ、地面に倒れ込んだ。
「なかなかやるじゃねぇか、最初に出会った頃とは大違いだ。」
「はあ、はあ、サンキュ。」
サタールが起き上がり、俺の顔を見る。
「な、なんでしょう?」
「......まぁ、歌姫のことはそんなに気にすんな、あいつの言う通り、お前や俺はまだまだ生きるんだ、今の時点でそんなに頭を悩ませてたら長生きしねぇぞ。」
「......」
たしかに、そうかもしれない......
俺たちは服を着ると、すぐにリンゴを探し始めたが、リンゴは見つからなかった。
「どこにあるんだ?リンゴは。」
「依頼の紙には、森の奥にあるかもしれないとしか書いてないんだ。やっぱりないのかなぁ。」
依頼の紙にはあるかもしれないと書いてあったので、ない可能性もあるということだ。
しばらく歩き続けると、
「あ」
「あ」
俺とサタールは、ラノとリナに出会った。
「ねぇ、本当にこんな所にあるの?」
「あるの?」
ラノとリナが上目遣いで俺に聞き、俺は頭をポリポリかいた。
「ないかもしれないなぁ。」
俺たちとラノとリナが合流し、しばらく歩くと、遠くにそれは高い木があった。
「あそこにあるんじゃねーか?」
サタールがそう言い、走り出すと、俺たちはサタールを追いかけた。
「なんだよ!違うじゃねーか!」
高い木にたどり着くとそこには普通のリンゴのみあり、金のリンゴはひとつもなかった。
「もうダメぇ!一歩も歩けないぃ。」
「私もぉ!」
しばらくその場で休んでいると、
「なぁ輪、俺この木の上に登ってみる。もしかしたら上から探せるかもしんねえから。」
そう言って、サタールは木を登っていった。
「ねぇねぇ輪、裏の世界はどうだった?」
サタールが登っている間、ラノとリナは俺に修行の内容を聞いてきた。
「あぁ、まじで大変だったよ、何度も死にかけたし、その度に治癒魔法をかけたから魔法も上達したけど、裏の世界は化け物だらけだったんだ。天使や女神なんて目じゃないほど強いのが沢山いたなぁ。ラノとリナはどうだったの?」
自分の修行内容を話すと、次に俺は二人に同じ質問をした。
「私たちはね、一緒に洞窟にこもって、二人でたくさんの修行をしたんだ!」
「したんだ!」
「一緒に洞窟の中の獣を倒し、お互いに対決し合ったり、天使や女神にはまだ叶わないかもしんないけど、そのうちいちばん強くなってみせるから!」
「みせるから!」
しばらくリンゴを食べながら、サタールを待っていると、突然周りからルーナ達が現れた。
「あ、輪達もいる。」
「やっぱりここは目立つんですかね。」
思わぬ事態で全員が揃い、俺はなぜここに来たのか聞いた。
「多分輪達と同じ理由よ、森の中でこの木が一番高かったからもしかしたらここなんじゃないかと思ってね。」
「私達も同じ理由だよ。」
そして、パールは木を見ると、
「どうやら違うみたい......」
すると、パールは木の上の方ではなく下の方を見ていると、上からサタールが降りてきた。
「ダメだ、どこになかった、やっぱり金のリンゴなんてどこにもないんだよ。あれ、お前らも集まったのか。」
サタールが降りてきてもパールは木の下の方を向いたままで俺たち全員、不思議そうにパールを見た。
「パール?」
リーノがパールに近づき、パールと同じ方向を見ると、
「もしかして......」
「えぇ、そのもしかしてよ。ナル、お願いだけど、この木の根元に爆発魔法をお願い出来る?」
「おっけーサンシャイン!!」
そして、ナルは札に爆発と書き、いつものように魔法を発動する。
木の根元が爆発した瞬間、
「!!」
「これって......」
「やっぱり」
そこには地下があり、木の根っこは下へと続いていた。
「最初にこの辺の地面を踏んだ時、少しおかしいと思ったのよ。」
「「すげぇ。」」
上から引き上げるため、数人を残し、俺とパールとナルとハルネは下へと降りていった。
「サンシャインライト。」
パールが魔法で光を灯すと、真っ暗だった空間が見えるようになった。
そして、木の根元には、
「わーお!!」
「すごい......」
何個もの金のリンゴがあった。
「どうりで見つからないわけか。」
俺は金のリンゴをひとつ取ると、時空収納に入れた。
「さぁ、出ようか。」
上に上がろうとすると、ハルネが周りを歩いてるのを見た。
「ハルネ?」
「ねぇ、パールさん、ここ......」
ハルネの近くに行くと、光が届かず、暗かったが、
「うわ......」
そこにはかじられた金のリンゴとたくさんの生き物の死体があった。
すると、
ばくん!
地上への穴がしまり、俺たちは閉じ込められてしまった。
「なるほど、手に入れたはいいけど、出口が閉まってここで死んでしまったってことね。」
「まぁ、私たちじゃなければ、計画通りだったんでしょうけどね。」
どきゅんっ!
俺は剣を構え、魔法の玉を10個作ると、そこから魔力を集め、俺の技、幻光を天井へ放つ。
「わーすごーい!!」
ナルが驚きながら、はしゃいでいると、地上への穴が開き、俺たちは上がっていった。
「よし、これで依頼達成だ。」




