第五十一話 真実
「歌姫、遅いですねぇ。」
「きっと、中でうまいもん食ってんだよ、あーあいーなぁ!俺も行きたいなぁ!!」
城の近くの宿の窓からターナと俺は歌姫の帰りを待っていた。
「もう今日はやめにしたらどうだ?そのうち帰ってくるって、ほらほら飯にしようぜ。」
サタールが飯を俺たちのところに持っていき、俺たちは窓から目を離さずに、飯を食べた。
すると、
「あ!」
城から歌姫が出てきた。
「!!」
なんか、目に力がないな......
俺たちは急いで歌姫のところに走り、何があったのか聞くと、
「ん、全然大丈夫です!ちょっとアンコールを何回も要求されちゃったから。」
と笑顔で言った。
リーノが歌姫の顔を見ると、
「君、城の人達に何かされたの?」
そう言われた途端、歌姫は図星をつかれた。
「なんだ、なんかされたのか。よし、仇を取ってやる。誰にされた?」
「だ、大丈夫です。」
「遠慮すんなって、ほい、治癒魔法!」
治癒魔法をかけられた歌姫はお礼を言い、走って自身の宿へ戻っていった。
「なんだったんだ?」
俺たちは歌姫を追いかけようとしたが、途中で見失ってしまい、諦めて自分たちの宿に戻って眠りについた。
「ああ、歌姫かい?その子ならあそこの宿に泊まっておるよ。」
次の日、道端でおじいさんに歌姫の宿を聞くと、早速歌姫の部屋の前まで来た。
コンコンコン
「歌姫やーい、遊ぼうぜぇ!」
「歌を聞かせてくださーい!」
しかし、返事はなく、不思議に思った俺はドアノブを掴むと、
「鍵があいてる。」
ドアを開くと、
「!!」
俺が固まっていると、後ろのみんなも中を覗いた。
「まじかよ......」
「......」
そこには見覚えのある光景があった。
そうだ、俺もこんな感じだったのかな......
部屋の真ん中に縄を垂らし、首を吊っている歌姫がいた。
「嘘だろ......」
「どうしてこんなことに。」
首を吊っている歌姫の後ろにある机を見ると、手紙が何通かあった。
そこには、自分が城でされた屈辱的なことと、俺たちと歌姫の両親に対する手紙だった。
「......あいつら!」
しばらく無音が続く。
俺たちは皆同じことを考えた。
城の中で歌姫を襲った奴らを殺す。
早速、パールが作戦を考え、決行は夜になった。
「それじゃ、作戦の見直しね。まず、城の中にいる無関係な人は全員私の魔法で別のところに転送させる。その間、ナルの魔法で城の中にクズどもを閉じ込め、ルーナ、アルン、ターナ、サタールはそのクズどもに制裁を与える。それが済んだら、4人は撤退、そして、輪がとどめを刺す。これでいいわね?」
俺とルーナ達5人が頷くと、作戦に入ってない五人が不満を漏らした。
「私たちはなにするんですか?」
「僕達もなにかしたいよぉ!」
「「そうだぁそうだぁ!」」
それを聞いたパールは
「あなた達は警察に歌姫が無くなったことを伝えて欲しいの。」
「ありありさー!」
そして、俺たちは作戦を決行した。
「うーん、がー、がー。」
「よくもまあ気持ちよさそうに寝てやがるな。」
ルーナは一人の男のベッドに横に立ち、魔法を込める。
「さて、歌姫を襲った罪、贖ってもらおうか。」
「この男ね、絶対に許さない。」
(女の敵......)
アルンはこれまた気持ちよさそうに寝ている男の近くに立ち、二つの弓矢を構える。
「殺す......」
ターナは刀を抜き、男の右腕の付け根に刀の先を当てる。
「こいつなら手加減なしにやれるな。」
男の顔面に焦点を当てると、サタールは拳を引く。
「「それじゃ、行くぞ!」」
ドカッ
チュン
ザンッ
ボカッ
城中に四つの衝撃が起こり、眠っていた男たちは一斉に目を覚ます。
「いたぁ!儂の!儂の腕がぁ!」
「そのくらいで騒がないでください、まだまだいきますよ。」
「ま、まて!儂がお前に何をした!」
男は涙と鼻水を垂らし、切られた腕の部分をもう一方の腕で掴む。
「わたしはあなたには何もされていません、ですが、私たちの友人に、やってはいけないことをしました。よって、あなたには死んでもらいます。」
ターナは刀を構え、男の残りの腕と足を切り落とす。
「ぎゃああああああ!!」
「質問、なんであんなことをしたの?」
アルンが相手している男は傷つけられた部分を腕で覆い、怒りを顕にしていた。
「お、おまえ!余が誰だか、わかっとるのか!タダではすまんぞ!!」
「質問に答えてよ。」
アルンはアルテミスの弓を引き、矢を男の肩に打つ。
「ぎゃああああ!痛い!痛いぞぉ!」
「質問に答えて。」
「ふー、ふー、あ、あいつはいい体してたからな、ぐっふっふ」
「!!」
二つの弓矢をめいっぱい引き、何度も矢を男に突き刺す。
「あああああ!!」
「あ、あんな女の命ひとつぐらい、なんだと言うんだ!!」
「お前の意思は関係ない、お前たちは......ああ、どうでもいいや、死ね」
ルーナは魔法を込めると、思いっきり男の顔面を殴った。
「ぎゃあああ!痛いー!」
「まだいくぞ。」
ルーナは男の全ての関節を折った。
「ひっ!おい!召使いはどこだ!早くこの女を殺せ!」
男は声を荒らげ、召使いを呼ぶが、召使いは来ない。
「な、なにをやっておるんだ!あの能無し共はー!」
サタールは男の近くに歩き、有無を言わさず殴り飛ばした。
「おらおらおらぁ!!」
それからサタールは男の顔面を必要以上に殴り飛ばし、男は喋れない様子だった。
サタールは首元を掴むと、地面にたたきつけた。
スッキリした四人は城から出て、俺に知らせる。
俺はずっと俯いていた。
この世界でも、こんなことが起きるのか......
目を瞑り、少しすると開ける。
「よし、それじゃ、やるか。」
俺は城の前で、一本の剣を抜くと、空に向けた。
「......」
俺は魔力を込めると、剣先から一つの円形の玉が飛び出る。
裏の世界で、できることが増えた。
これもそのひとつだ。
その玉が空で止まると、どんどん周りに大きくなる。
「天災の逆鱗を、身をもって味わえ、メテオ!!」
広がった円形の表面が宇宙に繋がり、そこから隕石が降る。
「すげぇ......」
「あいつ、すごい頑張ったのね。」
「ナル、今よ!」
パールの合図でナルはもうひとつの魔法を発動する。
札に魔法を書き終えると、いつものように口に含み、息を吐く。
「極魔法、絶対防御。」
空中に浮いた文字が、城全体を覆うほどのバリアになった。
やがて、隕石が城にぶつかると、城の破片や隕石の衝撃がバリアに当たる。
しかし、バリアは決して破れず、街まで被害は出なかった。
が、中にいる四人の男は死んだことだろう。
やがて、隕石の衝撃がなくなると、俺たちはすぐに街中の掲示板に事件の詳細の紙を貼った。歌姫のことは伝えずに、城に隕石が降ったということを。
城にいた四人の男以外は、助かったが、残りの四人は隕石の衝撃で死んでしまったことも書いた。




