第四十九話 早すぎるアイドル(笑)との再会
「はい、デザートカマキリ討伐おめでとうございます!こちら報酬金です。」
受付で報酬金を貰い、ナルがいる宿へ戻る。
しかし、宿にはナルはおらず、俺は街の中を探しに行った。
「どこいったんだ、あいつ。」
しばらく歩くと、街の広場で大歓声が聞こえ、そこに歩くと、ナルがいた。
「あ!おーい!輪ー!」
ナルが大声で俺を呼び、ナルの元へ行き、何が起こってるのか聞く。
「アイドルだよアイドル!!」
アイドル?前世に出てくるやつと同じアイドル?
しばらく経つと、広場にあるステージの幕が上がり、アイドルがでてきた。
「みんなぁ!今日は私たちのこの街での初ライブに来てくれて、ありがとうー!」
「今日は沢山歌うからお前らも沢山応援してくれよぉ!」
俺は呆然と口を開けた。
それは知ってるやつだった。
な、なななな、何やってんだあいつら!!
俺の知ってる人物、アルン、ルーナ、パール、ターナがアイドルの衣装を着て、踊ったり歌ったりしていた。
「わー!アイドルって綺麗!」
俺はアルンたちが歌ってる間、ナルの手を引いて、ステージの裏に行くと、
「ひっひっひっ!こんだけ金がありゃ、なんでも買いたい放題だよ。」
「けっけっけ!」
そこには、椅子に座りながら、札束を慣れた手つきでペラペラめくるキイとハルネがいた。
「お前ら......なにやってんだ?」
俺の声に気づくと、二人がこちらを振り向く。
「り、り、輪さーん!」
「輪くん!」
二人は俺を見ると、椅子から立ち上がり、俺に抱きついた。
「輪さーん!!会いたかったよー!」
「輪くーん!!」
俺は二人を体から引き離すと、なぜアルンたちがアイドルをやっているのか聞いた。
「それはね、コア・シティから帰ってる途中、お金が無くなっちゃったのよ、そしたら街の掲示板を見て、歌姫っていう人が歌いながらお金を稼いでるのを知ったの。だから、こっちも歌いながらお金を集めようって考えたの。」
ハルネから話を聞くと、後ろにいたナルが
「ねぇ、誰なの?輪。」
ナルにハルネたちのことを伝えると、
「よろしく!ハルネ!キイ!私はナル!輪と一緒に原魔六血家を探してるの!!」
それを聞いたハルネとキイは、
「え、原魔六血家って......」
「ふぅ、あー疲れたぁ!ハルネぇ、水水ー。」
「やっぱり歌うのは楽しいですねぇ!」
表のステージからアルンたちが出てきて、汗をかいていた。
「まだサタールたちが帰ってきてないから、水はないよ。もう少しだけ我慢してね。」
「ええ!おいおいサタール達はなにやってんだよぉ、世界が待ち望む最強アイドルがおつかれっていうのにって、えええええ!輪じゃねーか!どうしてここに?まさか私たちのことが恋しくなって会いに来てん?輪と一緒にいるやつ、もしかして......」
同じ原魔六血家のルーナ達はナルがどういう存在なのか、察したらしい。
「おーい、待たせたなぁ!」
そこへ沢山の買い物を持ったサタールたちが現れた。
「おそいぞサタール!すぐにアンコールに答えなきゃいけないからな!」
アルン達はすぐに水を飲むと、表のステージへ戻っていった。
すると、さっきよりも大きな歓声が上がった。
「売れてんなぁ。」
俺もやつらの歌を見ようと表に行くと、
「あり?誰もいねぇじゃん。」
さっきまであんなに居た観客たちが今は誰一人としていなかった。
じゃあ、さっきの歓声は......
アルン達がステージの舞台で立ち尽くしていると、
「あ!あれは!」
ターナが指さした方向を見ると、別のステージがあり、さっきまでいた観客たちはそこにいた。
「ま、まさか!」
「あ、あの特徴的なステージ!きらびやかな衣装!ま、まさか!本当に!」
「う、歌姫だーー!!!」
ターナ達はステージから降り、歌姫のステージに走っていった。
「え!え!歌姫!!あの歌姫!!わーい!」
ナルも歌姫のステージに行き、他の奴らも全員ステージをたたみ、向こうのステージへ行った。
「みなさん、今日は来てくれてありがとうございます!それでは、聞いてください。虚無。」
歌姫のくせにダークなタイトルだな。
しかし、実際聞いてみると、それは美しい歌声だった。
それはまるで、スマホの動画を見ている時にその動画の音声を生で聞いてるかのような安心感と、買ったグッズを部屋のどこに飾ろうかと考えてる時のワクワク感が、同時に感じた。
アルン達は自分たちがアイドルの衣装を着ていることを忘れ、歌姫のステージを見ることに没頭していた。
しばらく経つと、歌姫のステージが終わり、歌姫は自分の持ってるマイクを観客に投げた。
「わ!」
俺はそのマイクを無我夢中で手に取った。
周りを見ると、そのマイクを狙った奴らが俺の襲いかかった。だが、その大半はアルン達だった。
「わー!歌姫のマイク!マイクマイクマイクーー!!」
「おらおらぁ!そのマイクは私のもんだ!輪!それをよこせー!!」
必死でマイクを守り、周りから観客が減ると、歌姫は俺たちの元へ駆け寄った。
「こんにちは!私のマイクを受け取ってくれたのはあなたですね!自分で言うのもあれだけど、私は歌姫、よろしくね!」
「あ、うん、よろしくです。」
突然話しかけられ、俺が困惑した会話をすると、ルーナが歌姫に話しかけた。
「おうおうおう!よくも私たちの観客を奪い取ってくれたなぁ!」
カツアゲかよ......
「ああ、気にせずに、ちょっと頭のおかしい人なんで。」
「分かりました、頭のおかしい人なんですね。」
「なんだおらぁ!」
ルーナが俺をボッコボコに殴り飛ばした。
「す、すいません......」
歌姫はちょっと不安げに、
「えと、私がこの街に来たのは、この街のお城へ呼ばれたからなんです。あなた達のお客様を取っちゃったのは悪いですけど、そんなつもりはなかったんです。ごめんなさい。」
「「な、なんだってーー!!」」
アルン達は興奮した様子で叫んだ。
「なんで城に呼ばれただけでそんな叫ぶの?」
「アホかお前!金持ちでもねぇ人間が歌だけで城に呼ばれるなんて!えぐいことなんだぞ!」
言われてみれば確かに
「!ぴこーん、ニヤニヤ」
「なぜ擬音を......」
アルンがゲスい顔をし、次の提案を持ち出した。
「今度、ここでお互い、ライブをするの。そんで、ライブが終わったら客にどっちが良かったか投票してもらう。」
「は?」
突然の提案に俺は少し驚く。
「そんなの受けるわけないでしょ、歌姫側になんのメリットも」
「ええ......まあいいですよ。」
いいんだ。
こうして決戦の日は明後日になり、俺たちが宿に行こうとすると、
「あ、待ってください!えと、そこの男の人、私と、デートしてくれませんか?」
歌姫が俺に向かってそう言った途端、キイとリーノが照れながら歌姫に近づいた。
「お前らじゃねえ下がってろ。」
歌姫は俺の手を掴みながら、上目遣いで俺を見た。
「私、マイクを受け取った人と一日デートするようにしてるんです。いいですか?」
ああなんだ、そういう事か。
「いいですよ?」
俺は無表情を貫いてるつもりだったけど、ふと近くにある水溜まりを見ると、俺の顔はめっちゃくそニヤニヤしてた。
こうして俺と歌姫はアルン達と別れ、一日デートすることになった。
「それじゃ、レッツゴー!!」




