第四十八話 矛盾
「それで、今回は何を討伐する気なの?」
なぜかついてくるシーパを鬱陶しく思いながら、俺は今回の依頼の内容を説明する。
「デザートカマキリの討伐。」
「あぁ、デザートカマキリか。」
シーパはデザートカマキリを知っているようだった。
「知ってるのか?」
「今まで何度も殺してきたから、知ってるわよ。なんだったら私が倒してきてもいいのよ?」
「断る。」
デザートカマキリの住処まで歩いてる途中、いつの間に取ったのか、シーパは俺の冒険者カードを見ていた。
「へぇ、一匹狼の討伐に失敗したんだ。」
「別にいいだろそんなこと、返せよ。」
「ああん、冷たいなぁ。」
俺がシーパから冒険者カードを返してもらうと、シーパはニヤリと笑い、
「知ってる?一度失敗した依頼はね、もう一度ギルドの掲示板から依頼の紙を渡さなくても、その後にまた勝手にチャレンジして達成して、冒険者カードを渡せば、依頼完了になるのよ。」
へぇ、つまり依頼の紙を渡さなくても、受注されてることになって、達成したことになるんだ。
そんなことを話していると、デザートカマキリの住処まで着いた。
「お前はどっかに行ってろよ。」
「はーい。」
嫌に素直だな?
俺は二つの剣を抜き、デザートカマキリに襲いかかった。
「ふぅ、これで達成か。」
デザートカマキリを倒し、死体を時空収納にいれると、突然雨が降ってきた。
「あ、おーい輪くん!」
茂みからシーパが出てきて、俺のところに走ってきた。
見ると、シーパの体は血がついており、何かと戦った様子だった。
「傷ついてるなら治すが、何と戦ったんだ?」
「あぁ、大丈夫。私は無傷だから。こっち来て。」
シーパが手招きをしながら、俺を案内する。
「は?」
そこには先日俺が見逃した、一匹狼とその子供たちが死体となって倒れていた。
「な、なんで......」
「ん?これで依頼達成になるね。良かったじゃん。」
「なんで、殺した?」
「だって、輪くんが未達成なら私が達成させなくちゃ。私があなたを殺すんだから。」
なにいってんだこいつ......
「ん?逆になんで輪くんはこの子達を見逃したのかな?もしかして、子供がいて可哀想だから見逃したの?ヘリクロスやデザートカマキリは殺したのに?それって偽善じゃない?」
「黙れ......」
「ん?」
「黙れよ。」
「......」
「......」
無言が続く。
雨がいっそう強くなり、シーパは時計を見た。
「あら、もう0時を回ってるわ、今のあなた、とっても殺したい気分。」
シーパがそう言った途端、俺たちは剣を抜き、戦闘に入った。
「ん?あれ?わたしなにしてたんだっけ?」
ナルは起き上がると、顔を洗い、輪を探す。
「どこいったんだろう輪、街の中を歩いてるのかな?」
ナルは着替えると、街の中を歩いていった。
「やっぱりあなた、とっても殺したいわ!!」
あれからお互い傷をつけ合い、身体中から血が流れる。
「はぁ、はぁ、はぁ!」
俺は逆手に持ってる左手の剣を通常の持ち方にし、かまいたちの準備をする。
「!」
シーパはそれを察し、警戒をする。
俺は走り出し、シーパの懐に入る。
いける!!
俺がかまいたちを繰り出そうとした瞬間、シーパは両手に持ってる短剣を使い、ガードする。
が、俺はかまいたちを出すと見せかけて、左手の剣を地面に突き刺す。
「!!」
「幻影、影掴み!」
シーパの影を掴むと、動きが止まる。
その瞬間シーパの防御が崩れる。
俺は右手に持ってる剣でかまいたちを繰り出す。
シーパの体はそのまま奥の木に当たり、そのまま崩れ落ちるように地面にへたりこんだ。
「はぁ、はぁ、はぁ!」
「いいわぁ、どんどん血が流れてる。ぞくぞくしちゃう。」
シーパは立ち上がり、傷つけられた箇所を指で撫で、手についた血を舌で舐める。
「少しだけ、本気出しちゃお!」
「なっ!!」
俺は3年間の修行で大抵の人間相手なら勝てる自信を持っていた。
弾丸すらオーバーアイを使わずに片手で掴めるほどに。
だが、俺は見えなかった、シーパの動きが。
傷つけられた箇所の痛みすら感じないほどの衝撃を感じた。
「どう?私の本気は?」
いつの間にかシーパは俺の後ろにおり、やっと俺は痛みを感じた。
すぐに俺はシーパの方を振り向く。
「今日は黒い薔薇が咲きそうね。」
シーパが雨の降っている空を見上げる。
黒い薔薇......薔薇......花......桜......エミナ......そういえば、エミナは桜が見たいって言ってたな......桜......
俺はその瞬間、自分でも何が起こったのかわからなかった。
気づけば俺はシーパの後ろにおり、シーパの四肢を切断していた。
オーバーアイも、3年前、俺の別人格に対して使ったオーバードライブも発動してなかった。
シーパの傷の断面から赤い桜が見えた気がした。
シーパはその場に倒れ、俺は今までに感じたことの無いほどの疲れを感じた。
「はあ!はあ!はあ!はあ!」
剣を地面に突き立て、呼吸を整える。
俺が呼吸を整えてる間、シーパは爆破魔法を使い、その場から撤退した。
「ひとまず撤退ね、いつかまた、黒い薔薇があなたを殺しにくるわ。」
「はあ!はあ!はあ!」
俺は呼吸を整えるのにかなりの時間がかかり、その後はすぐに治癒魔法を使い、傷を治すと、街のギルドへ向かった。




