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無幻の黄昏   作者: ふみりえ
第一部 再会
36/76

第三十五話 秋の歌

「出してーー!!ここから出してよーー!!」

「出してくださーい!あと刀折ったやつ殴らせろー!!」

 アルンとターナはめいっぱい声を出し、助けを呼んだが誰も来ず、床にへたれこんだ。

「輪はあれから意識を取り戻さないし、ここから出れないし、杖は没収されたし。」

「刀は折られたし、あったとしてもこの牢は切れないだろうし。エミナは大丈夫なんでしょうか。」

 それからしばらく経ち、声を出すのも諦めた頃、

「よっ!」

「ルーナ!」

 牢の目の前にルーナとパールたちが現れた。

「な、なんで......」

「お前らには悪いんだけどよ、こっそりあの時の様子を見てたんだよ。」

「そ、そうだったんですか。」

「ちょっと待ってろよ、お前ら。」

 そう言うと、ルーナは指をパチンと鳴らすと、目の前に槍が現れた。

「何その槍。」

「もしかして......」

 ルーナはドヤ顔で

「そう、これこそ、神器ロンギヌスの槍!神獣と戦って認められたんだ!ちょっと下がってな。」

 ルーナは槍を浮かせると、

「ロンギヌス、拘束、20パーセント解放。はあああ!!」

 ロンギヌスの槍は牢をスパッと切り、アルン達が出られるほどの隙間を作った。

「さぁ、そこにいる輪を連れて、とっととここから出ようぜ。」

 ルーナは輪を背負い、牢獄から外に出る間、ルーナ達はさっきのことをアルンから聞いた。

「輪が2人に別れたってことか?んで今いるこいつがいつもの輪で、逃げたもう1人が知らん輪なのか。」

「いや、もしかしたらもう一人の輪は......」

パールはもう一人の輪について思い当たる節があるようだった。

外に出ると、目の前には件のもう一人の輪が立っていた。。

「輪!」

「いや、あいつは輪じゃない。輪によく似てるけど。」

「あれが輪のコピー的なやつか。めんどいから黒輪って呼ばせてもらうぜ。アルンの話じゃ、かなり強いんだろ?あいつ。戦ってる暇ないぜ。とっとと逃げよう。」

 黒輪を無視し、逃げようとすると、ルーナたちの目の前に移動する。

「そいつをよこせ。ルーナ。」

 黒輪はルーナに話しかけるとルーナは驚いた顔をした。

(あいつ、なんで私の名前を。そうか、輪のコピーだから、記憶もあるのか。)

「ターナ、輪を連れてどっかに逃げろ。私はあいつの相手をする。」

「はい、分かりました。」

 刀を持っていない自分は足でまといだと感じ、ターナは輪を背負うとリオンとラノとリナと一緒に逃げようとした。

「ねぇターナ、ルーナ達勝てるかな。」

「いくらルーナ達でも、多分、無理かと。ルーナもまだロンギヌスの槍を使いこなしていないですし。」

 走りながら様子を見に後ろを振り向くと、すぐ側に黒輪がいた。

「なっ!!ルーナ!アルン!パール!」

 ルーナたちの方を見ると、三人の体は悲惨だった。

 ルーナは腹から内蔵が飛び出し、左腕が無くなっていた。

 アルンは四肢が切断されており、口は裂けていた。

 パールは両目が潰され、何も見えない状態だった。

(そんな、勝てるとは思っていませんでしたが、あんな一瞬で。しかも、あんな惨い姿に。)

「リオン、輪を連れて遠くに逃げてください!!」

 リオンに輪を渡し、黒輪を食い止めようとするターナだったが、後ろを振り向いた途端顔面を殴られ、そのまま地面に叩きつけられ、気絶した。

「ターナ!!」

 ラノとリナが泣きながらターナに近づき、何度も何度も呼びつける。

「ターナ!ターナ!起きてよ!ターナ!ルーナ!アルン!パール!みんな起きて!」

 リオンは輪を連れて必死に走るが、

(やばい、殺気......このままじゃ、私もやられる。でも、ダメ。絶対に輪は渡さない。だって、輪は私を救ってくれた。みんなと会わせてくれた。絶対に、渡さない。)

 どごっ

 しかし、鈍い音がし、リオンは気を失った。









「癒しの大地......」

 エミナが手を広げ、花や草が生い茂ると、ルーナたちの傷が一瞬で回復し、目を覚ました。

「これは、前のやつと同じ......」

「みんな、大丈夫?」

「エミナ、ありがとうございます。」

 事情を説明すると、エミナは悔しそうな顔をしながら、みんなに言った。

「みんな、今すぐ地の次元へ逃げて。」

「え?それは無理なんだろう。生贄がいなきゃ帰れないんでしょ?」

 エミナをニコッと笑い、

「いいえ、もうひとつあったの。生贄を使わずに地の次元へ行く方法が。」

「えっ本当?」

「本当だよ。」

 ラノとリナが喜ぶ。

「でも、輪をどうにかしないと。」

「そうだよ、私は、守れなかった。恩人の輪を全然......私、役に立ってない。」

 リオンが悔しそうにその場に崩れ落ち、パールは背中をさすった。

「輪は私がどうにかする。みんなは早くこの次元に来た場所に行って!」

 エミナの言葉でルーナ達は立ち上がり、

「わかった。それじゃ、輪のこと、よろしくな。」

「うん!」

 エミナはルーナ達と別れると、すぐに城の中へ入った。

「用は済んだか?」

「うん。」

 巨漢の男、マークは私に確認すると、

「では、こっちに来い。」

 マークに手を引かれ、連れられた先にはなぜか等身大の鏡があった。

「あれは、なに?」

「次元の扉を開くには生贄だけでなく、そいつが愛すべき人も一緒に生贄にならなくてはいけない。」


 そ、そんな!


「話が違うじゃない!生贄になるのは、私だけだって!」

「そうだったか?すまんすまん。さぁ、鏡の前に立つんだ。」

 少し戸惑ったが、私は言われた通り、鏡の前に立った。


 大丈夫、さっきは取り乱したけど、ここの住人の一人でも犠牲になれば、地の次元の人たちへの助けになるかもしれない。


 そして、鏡に写った人物は、

「そ、そんな......」

 その相手はこの世界に生まれて、初めて愛したいと決めた人、何度も何度もその人を見て、好きになった。

「輪......」

「おぉ、この男は広場で見かけたやつだな。しかし、あいつはもう1人の男に連れ去られてしまったな。すぐに取り戻させよう。」








 俺は暗闇の空間でじっと固まっていた。

 もう何もしたくない、何も感じたくない。俺は自分の悪性を表面に出した。それがあの男だ。いや、元々俺に善性なんてない。あいつが俺自身だったんだ。つまり、今の俺は空っぽ。なんにもない。そのまま俺は、ただただ過ぎていく時間を過ごしていた。








「ふむ、とりあえず追ってきた天使や女神は殺したが、まだ起きんなこいつは。」

 黒輪は輪の頭を踏んづけると、胸ぐらを掴んだ。

「さしずめ、廃人状態というやつか。どれ、傷つけたら、起きるかな!」

 輪を地面にたたきつけ、何度も殴るが、輪は起きない。それからも色々な実験を試したが、一向に起きる気配はない。

「自分が自分であることを忘れている。これじゃあまるで、死人じゃないか。」









「ねぇルーナ!ちょっと待って!」

「なんだよパール、急がないと元の次元に行くための扉が開いて閉まっちゃうぞ。」

 パールが先に行くルーナを止め、話をする。

「今思い出したんだけど、この前、この次元の図書館に行って調べたでしょ?あの本によれば、やっぱりこの次元から元の次元に戻るには生贄が必要なんだって!」

「!それじゃ、エミナは私たちに嘘をついたって言うのか?」

「多分。」

「なんでそんなことするのさ?」

 アルンがパールにそう聞くと、

「多分、私たちを助けるため。」

 ターナが答えた。

「「なんだって?」」

「元々牢獄から逃げる時に誰も来なかったのがおかしいんです。あの時から多分、エミナはあの巨漢の男に取引をしたのではないでしょうか。自分が犠牲になる代わりに、私たちを逃がしてもらうよう。」

 ルーナは、少し考えると、方向を変え、

「私、やっぱ戻ることにする。エミナを犠牲になんかさせるもんか。」

 その言葉にみんなも同意し、元の道を辿ろうとした時、

「いいえ、ここであなた達はおしまいよ。」

 声のした方向を見ると、そこには

「お母さん......お父さん。」

「ママ、パパ。」

 パールの両親とアルンの両親がいた。

「そこの三人はいらないけど、アルン、パール、ルーナ、そして、そこの実験体。あなた達は着いてきてもらうわよ。」

「さあ、アルン、いい子だから、大人しく着いてきなさい。」

 アルン達は少し後ずさると、

「ルーナ、みんな、ここは私とパールが食いとめるから、先に行って!」

「お、おう!」

 ルーナ達が走っていくところをパールの母は

「逃がさないわよ。」

 魔法の玉をルーナ達に発射する。

 しかし、それをパールが魔法で防御し、

「させない。」

「パール、いい子だからそこをどいてちょうだい。」

「いやだ。」

「あらそう、だったら悪い子には、お仕置ね!」

 パールの両親とパールの戦いが始まり、アルンは自分の両親の顔を見る。

「アルン、あなたは他の子と違っていい子だから。さぁ、こっちにいらっしゃい。」

「ママ、パパ、こんなことやめて、私たちは静かに暮らしたいの。あの子と一緒に。」

「いや、お前たちは大事な実験体だ。さあ、わがままはやめて、こっちに来なさい。」

「......」

「来なさい」

「......」

「来い!」

「っ!」

 アルンは両親に向けて弓矢を発射する。

 その手は震えていた。

 それをギリギリで避けた両親は怒り狂った顔になり、

「そうか、私たちに逆らうのか。いいだろう。無事には済まさないぞ。」

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