第三十三話 夏の歌
「あれ?輪、エミナは?」
「なんかいなくなっちゃった。」
「そう。」
宿に戻ると、全員帰ってきており、軽い夕食を済ませると、直ぐに俺たちは眠りについた。
かんかんかんかん
いつもの音が聞こえ、起き上がると、その音はターナではなく宿の外からのようである。
「なんでしょう?」
ターナが窓を開け、俺も窓から顔を出す。
「前々から指名手配になっている天使と女神のハーフがこの街に出たという情報があった!」
「なんだって!?」
俺とターナは顔を見合せ、
「天使と女神のハーフって、エミナのことですよね。」
「多分。なんでエミナが指名手配なんかに。」
「街の方に聞いてみましょうか。」
顔を洗い、着替え、外に出ると、近くにいた天使に話を聞いた。
「すいません、なんでその人は指名手配になんかされてるんですか?」
質問をされた天使は、何言ってんだという顔をし、質問に答えた。
「天使と女神、ふたつの血を持つ者を作ることは違法とされているんだ。その血を持ったやつも抹殺対象となる。」
それを聞いた俺たちは驚いた。
「そ、そんな、勝手すぎます。」
だからエミナはここから離れたんだ。
すぐにみんなを起こし、宿を出る準備をし、外に出ると何故か道にいる人達が俺たちを見てることに気づいた。
「な、なんでしょう。」
「あ!みんな、髪が!」
パールがそう言い、お互いの姿を確認すると、髪が全員元の色に戻り、翼や輪っかもなくなっていた。
「に、に、人間だー!!」
街の人がそう叫び、周りの人も俺たちの方を見ると、それぞれ自分の武器を取り出し俺たちを囲った。
「みんな、とりあえずそれぞれ逃げて、後で落ち合おう!」
アルンの一言で全員散り、俺は南の方へ逃げていった。
「ふう、ここまで来れば大丈夫だろう。」
街から逃げ、近くの森に身を隠した俺はその場に寝転んだ。
「エミナ、どうしているのかな?」
俺が空を見上げながらエミナのことを考えていると、
「わっ!」
「わあああああああああああ!」
目の前にエミナが現れ、俺は驚きの声を上げた。
「エ、エミナ!どうしてここに?」
「なんでって、それはこっちのセリフだよ。他のみんなはどうしたの?」
俺は先程のことをエミナに伝えると、申し訳なさそうな顔をエミナはした。
「ごめんなさい、私、ドジで間抜けだから、忘れちゃってたの。」
「とりあえずみんなを探してとっととここから逃げよう。」
「逃げるって?」
「そりゃ地の次元だよ。天の次元は危険だらけだ。」
エミナは少し困ったように考えると、
「多分、今言っても無駄だと思う。」
「え?」
みんなを探しに行こうとする俺の手を掴み、エミナは言った。
「ここの天使や女神は近いうちに地の次元を攻撃する予定なの。」
俺は一瞬何を言ってるのか理解できず、聞き直した。
「だから、あなた達が来た地の次元はもうすぐここの住人たちによって侵略されるの。」
「な、なんでそんなこと。」
「地の次元を支配して、地の次元の人たちを奴隷にするためなの。」
そ、そんな
「!!隠れて!」
エミナに頭を押され、四つん這いになり、身を隠すと、天使が2人やってきた。
「本当にこっちに人間がいるのかー?」
「目撃者によるとこっちに1人逃げていったって情報だ。」
あの人たち、俺を探して......
しばらく経ち、天使が見えなくなったのを確認すると、俺たちは隠れていたところから出た。
「ふー、なんとかなったね。」
「それで、これからどうしよか。」
しばらく考えると、
「とりあえず、みんなと合流しなくちゃ。」
「そうだね、はい輪、そこに立って。」
言われた通りにその場に立つと、エミナは手を合わせ、俺の姿を天使にした。
「よし、これでOK!それじゃ、行こうか!」
エミナに手を引かれ、森から出ると、空は青空が広がっていた。
「綺麗......」
「はあ、はあ、とりあえずここまで来れば大丈夫だろう。」
ルーナは洞窟の前で一息つくと、後ろの洞窟を見た。
「あとで落ち合おうとは言ったが、どこに集まればいいかわかんないし、ここは、私の目的を優先させてもらうぜ。えーと、確か北にある洞窟の中にあるって言ってたよな。さぁ行くぞ!ルーナ探検隊、出動ー!!」
こうしてルーナは歌を歌いながら、自分の目的を果たすため、洞窟の中に入っていきました。
アルンは魔法のじゅうたんに乗り、猛スピードで街から離れると、ひとつの神殿に到着する。
「ここって......」
神殿の中へ入り、奥へと向かうと、大きな扉があり、それを開け、さらに奥へ進むと、そこには二本の弓矢があった。
その2本は神々しく、いつまでも見ていられるような魅力を感じた。
「これは、もしかして!!」
魔法でサーチすると、
「やっぱり、アルテミスの弓矢とヘラクレスの弓矢!」
思いがけない収穫に喜びを感じたアルンは、すぐに二つの弓矢を持った。
「これ、貰っちゃってもいいよね。」
アルンがそれらを手に取ろうとすると、
ばん!
神殿の扉が開く音がし、振り向くと、そこにはたくさんの女神や天使たちがいた。
「見つけたぞ人間!」
「大人しく死ね」
アルンはすぐに杖を取り出し、魔法を放つ。
しかし、そのどれもが女神たちには効かず一瞬で取り押さえられてしまった。
「くっ!お願い、動いて!」
とっさにアルテミスの弓矢とヘラクレスの弓矢に魔力を通す。
すると、壁にかけてあった二つの弓矢が壁から離れ、女神達を矢で貫く。
「がはっ!」
その隙に立ち上がり、二つの弓を自分のそばに置く。
「おまえ、それは神器だ、お前ごときが扱っていいものでは無い。」
「し、しかし、神器は認められたものにしかそもそも使えないはずだが。」
「......ふう」
深呼吸をし、魔力を整え、杖を持ち、構える。
「かまわん、かかれ!」
アルンと女神たちはそのまま戦闘になり、たった今手に入れた割には二つの弓をアルンは器用に扱った。
「てんてんてんてん、てんてんてんてん、私ーはルーナ様ー!勇気は一番!力は一番!それがこーのー、ルーナ様ー!」
ヘンテコな歌を歌いながらルーナはどんどん奥へと進んでいった。
「そういや、ここに来るまでになんか猛獣でもいると思ったんだが、誰もいねぇなぁ。」
やがて、ルーナは洞窟の最深部に辿り着くと、そこにはルーナが求めたものがあった。
「お、おぉ!あれは!ロンギヌスの槍!!」
ルーナが求めていたものそれは、
死滅の槍ロンギヌス
この槍の前ではどんな防御も貫くといわれた神器である。
「へっへっへっ、そいじゃ遠慮なく貰わせてもらうぜー!」
ロンギヌスの槍に手をつけようとした瞬間、
「待て!」
突然槍から電気が流れ、ルーナが手を引っ込める。
「いってーな!なんだよ!」
すると、ルーナの目の前に先程まではいなかった神獣が現れた。
「この神器は認められたものにしか使えん。今すぐ立ち去れ!」
「獣が口を聞いた!!すっげー!」
神獣が人の言葉を話すのを見てルーナは驚いた。
「貴様、この槍が欲しいか?」
「めちゃくそ欲しい」
「どうしても欲しいか?」
「ばりくそ欲しい」
「何がなんでも欲しいか?」
「どちゃくそ欲しい」
「よろしい。この槍が欲しければ、儂と戦え、勝ったら、この槍はお主のものだ。」
「へっへー、いいぜ!私は相当強いぜ、ちょっと前にボコボコにされたのは内緒だけど。そいじゃ、行くぞ!」
ターナは逃げる際、街からは出ず、街の中に身を隠した。
「木の葉を隠すなら森の中、新しく髪も染めて、翼もつけましたし、もう安心でしょう。」
しばらく経つと、ターナは街の中を歩き、鍛錬屋を見つけると、中へ入っていき、中にある剣や刀を見ていった。
そこにひとつ、気になるものがあった。
「すいません、この刀ってなんなんです?」
その刀は見るからにボロボロで、錆も落ちていなかった。
普段だったら視界にも入らないだろう。
しかし、何故かターナはその刀が気になった。
ターナが店主に聞くと、
「そいつぁガラクタだよ、ほしけりゃただでやるぞ。」
「本当ですか?それではいただきます。」
「でもなぁ、そいつは何回研いでも全然落ちねーんだ。それでも欲しいかい?」
「はい!欲しいです。それではこれ、貰っていきますね。ではさよならー!」
刀を貰うとすぐにターナは店から出ていき、また街の中を歩いていった。




