第二十八話 百鬼夜行2
「う、うぅ。」
アルンが頭を抑えながら、ふらふらと立った。
「ほぉ、まだやるか。あんた、見かけほど大したことではないな。魔法も弓矢ぐらいしか使えないし。」
頭からダラダラと血を流し、立ちくらみがしながら、女性の元へ歩く。
「あんたたちがどうなるかはわかんないが、冥土の土産に教えてあげる。私の名はクウ。暗殺チーム百鬼夜行の1人だ。」
「そう、クウ。あなた、ひとつだけ見落としがあるわ。」
ふらふらと歩きながら、アルンはクウにそう言った。
「見落とし?なんだ?」
アルンはニヤリと笑い、
「それはね、私を甘く見た事よ。」
「!?」
地面からひとつの槍状の岩が飛び出し、クウの体を貫いた。
「がはっ!」
アルンはそれを見逃さずすかさず、魔法の弓矢を繰り出した。
「はああああ!!」
何度も何度も弓矢をクウに繰り出した。
そして、何度目か分からない矢を突き刺したあと、その場に崩れるように倒れた。
「終わった......」
「終わってない!」
「!!」
視線を向けると、あれだけ攻撃をくらったクウが血を流しながら、その場に立っていた。
「さっき言ったことを謝る。あなたは本気を出すのに値する。」
クウは2つ目の棍棒を出し、両手にひとつずつ構えると、一気にアルンの元へ走った。
「はぁ!!」
杖を使い、自身の目の前へ岩の壁を作り、じゅうたんに乗り、その場から直ぐに離れると、
「無駄だ!!」
一瞬で岩の壁は壊され、クウが姿を現すと、
「!!」
(落とし穴か!)
クウが地面に落ち、その瞬間アルンはクウに向かって何本もの矢を繰り出す。
「これでどう!!」
しかし、クウはその全てを棍棒でなぎ払い、穴から上がってきた。
「そ、そんな......」
「今度はこっちから行く!」
クウは一瞬でアルンの元へ追いつき、二つの棍棒をアルンに思い切り叩きつけた。
「あああああ!!」
地面が割れ、その場に崩れるように倒れると、アルンは頭にひたすら治癒魔法をかけた。
「い、痛い.....痛い痛い痛い痛い......痛いよぉ、ルーナぁ......お母さん...お父さん..
..」
クウはそんなアルンを見ると、
「悪いことは言わない、私と一緒に来るんだ。お母さんやお父さんにも会える。」
そう言ってアルンに手を差し伸べる。
「本当?もう痛い事しない?」
「あぁ、あなたが両親の元へ行って、何をされるかは知らんがな。」
アルンは差し伸べられた手をつかもうとした時、
「!!」
ルーナのことを思い出した。
(もしかしたら、この手を取ったら、ルーナともう会えないかもしれない。そんなの......嫌だ!!)
クウの手を払う。
「そうか、なら気絶させるまでだ。」
アルンは俯いたままクウの攻撃を待った。
「これで、おしまいだ!!」
アルンの頭に向かって棍棒を思い切り振りかざすと、
「今だ!!」
アルンの頭に当たる寸前で魔法の障壁ができ、棍棒がそれに当たる。
「これは!」
アルンはニヤリと笑い、
「カウンター魔法よ。」
カウンター魔法はその名の通り、相手から受ける攻撃をそのまま返す魔法である。
だが、カウンターは相手が攻撃をする瞬間に発動しなくてはならず、一般人では行使することが出来ない。
「がはっ!」
アルンが受けるはずだった攻撃をクウが受け、その衝撃でクウは倒れる。
「これで最後、上級魔法、インパクト・アローー!!」
無数の弓矢が集まり、ひとつの大きな弓矢に変わり、矢がクウに刺さる。
「私の、負けだ......」
「はぁ、はぁ、はぁ。」
矢が消え、傷口からたくさんの血が流れながら、クウは自分の負けを宣言した。
「行け、仲間が待っているだろう。」
「うん。」
アルンが走り去っていくと、クウは目を瞑り、
「ゼロは1度倒しても、そう簡単には死なんぞ。」
「あなたは、誰?」
「俺の名はゼロ。百鬼夜行のリーダーだ。」
リオンの前に玉藻の前が現れ、
「ご主人様、下がって。」
「ふむ、なるほど、契約を結ぶことで魔力の暴走を抑えているのか。」
ゼロはナイフを取り出し、リオン目掛けて飛び出す。
「させない!」
玉藻の前がゼロの腕を掴み、背負い投げをする。その隙にリオンはその場から後ろに下がり、魔力の供給を行う。
「ご主人様、ここは妾におまかせを。」
ゼロと玉藻の前の戦闘が始まり、攻防が続く。
「なかなかやりますね。では、これならどうでしょう。」
瞬時にゼロの後ろに周り、背中を蹴り倒すと、手に魔力を込めて、背中に魔法を繰り出す。
「遅い!」
それを軽々とかわし、今度はゼロが玉藻の前の後ろに回ると、ナイフを背中に切り刻む。
「くっ!」
玉藻の前はその場からすぐに離れ、傷ついた箇所を魔法で癒すと、すぐに次の魔法を使う。
「はああああ!!」
一箇所に魔力を集中させ、ゼロに向かって魔法を発射すると、ゼロはそれすらかわし、ナイフを何度も玉藻の前の体にきりつける。
「はあ、はあ、はあ。」
そこからは防戦一方だった。
たまに玉藻の前が反撃をするが、それらを全てゼロはかわし、逆に攻撃をする。
玉藻の前の体が傷でたくさんになった頃、ゼロはその場から消えた。
「ど、どこに!?」
玉藻の前が当たりを見渡すと、ゼロはリオンの体を縛っていた。
「ご主人様!!お前ぇ!!」
すぐにゼロの元へ走るが、ゼロはそれよりも早くその場から離れ、消えた。
「......こんちくしょーー!!」
玉藻の前はその場で叫び、しばらく考えると、
「ご主人様、辛抱してくださいね。」
玉藻の前の周りが異様な空気に変わり、玉藻の前の衣装が和装に近くなると、尻尾がひとつからみっつに変わった。
「これで、勝てますね。」
すぐにその場から飛び、ゼロとリオンの行き先へと向かう。
「やめて、離して!」
「そうはいかない、依頼なのでな。」
縛ったリオンを背負い、森の中を走っていくゼロ。
「しかし、後ろから追いかけてきているな、それもさっきとは比べ物にならないほどの速さで。」
森の中を移動している途中、リオンはゼロに質問した。
「どうしてこんなことするの?」
「依頼だからだ」
「そうじゃなくて、そもそも、どうして暗殺チームなんかになったの?」
ゼロは少し間を開けると、口を開いた。
「俺たちは子供のころ、スラム街に住んでいた。そこでは殺すのは当たり前。むしろそうしないと生きれない世界だった。そこで培った技術を使って今も生きているだけだ。」
「そう......」
話が終わった途端後ろから叫び声がした。
「ごーしゅーじーんーさーまー!」
とてつもない速度でゼロに追いつき、頭に蹴りをお見舞し、リオンを取り戻す。
「ご主人様!大丈夫?怪我はない?」
「だ、大丈夫だよ玉藻の前、助けてくれてありがとう。ところで、なんだかいつもと調子が違うんだけど。」
「それはね、ご主人様の魔力を使って1尾から3尾になったからなのよ!」
そう言って3つのしっぽをふるふると振りながらリオンに見せ、すぐに視線をゼロに戻した。
「それでは、やりましょうか。」
「ちっ、そうだな。」
お互いに話をすると、玉藻の前が目にも止まらぬスピードでゼロに近づき、ゼロの頭を蹴り倒し、さらにもう一発蹴ろうとするところをすんでのところで避け、すぐに立ち上がると、ゼロは2本目のナイフを左手に持ち、玉藻の前の体を斬る。
しかし、玉藻の前はなんともない様子で、後ずさり、3つの魔法陣を描く。
「はああ!」
そこから何本もの鎖が飛び出し、ゼロの体を縛る。
「それでは一発。はぁぁぁ」
拳に息を吹きかけ、ゼロのお腹に一発拳を入れる。
「がはっ!」
後ろに倒れ、ゼロは腹を抱えながら、再び立った。
「あなたごときが妾を倒せるわけないじゃない。わかったらとっとと、失せなさい。」
ゼロは2本のナイフを持ち、それでも迎え打とうとした。
「そうですか。なら妾も少しだけ本気を出すわ。」
そう言った瞬間、玉藻の前の姿が消えた。
「どこだ?」
ゼロは当たりを見渡すがどこにも玉藻の前はいなかった。
「ここだよ。」
後ろから声がし、振り向くと玉藻の前が両手で魔力を込めていた。
「これで、おぉしまい!」
両手から凄まじい大きさの魔法が放たれ、ゼロはそれをモロにくらい、木に激突した。
「ご主人様、もういいわよ。敵は妾がやっつけました!」
木の影からリオンが出てきて、玉藻の前の方に近づき、
「終わったの?すごいね玉藻の前!」
「もっちろん!妾は裏の世界最強なんですから!とは言いましても、ちょっと疲れたので休ませてもらうわ。」
そう言うと、玉藻の前はリオンの体の中へ戻っていった。
そして、
「リオン!」
リオンの元に俺たちが駆け寄り、
「これで、全員倒したようね。」
「パールとアルン、その怪我どうしたの。大丈夫?」
「大丈夫では無いわね。銃を沢山食らっちゃったわ。しばらく治癒しないと。」
「私もまだ頭がふらつくから、ここでちょっと休みましょう。」
そんなことを話していると、奥からゼロがやってきた。
「あ!みんな、あいつは暗殺チームのリーダーで、ゼロって言うやつだよ!玉藻の前が倒したんだけど、まだ動けるなんて。」
ゼロは足を引きずり、左腕を右腕で抑えながらゆっくりと歩いてくると、
「このまま帰れるか。任務は遂行する。」
そう言うと、ゼロの中心に大きな魔法陣が現れ、そこにディエゴ、マロン、クウが吸い込まれた。
「う、うぅ、うあああああ!!」
ゼロの姿がどす黒く変わっていき、最終的には、体全体が黒色になった。
「みんな、気をつけて。明らかにあれはやばい。」
パールがそう警告し、他のみんなも戦闘体制になる。
いつの間に起きたのかルーナも箒に乗り、魔法の準備をしていた。
俺も眼鏡を外し、目の能力、オーバーアイを発動する。
「リオン、あなたはラノとリナを連れてできるだけ遠くに逃げて。」
「うん。」
リオンがラノとリナを連れて遠くに逃げていったのを見届けると、視線をゼロに戻した。
が、ゼロはいなかった。
「どこだ!?」
当たりを見渡そうと、後ろを見た瞬間、
「あ、あああ。」
アルンの耳の中に指を突っ込み、ぐりぐりと指を動かしていた。
「アルンーー!!」
ルーナがアルンに向かって箒から降り、走ると、ゼロはその場から離れた。
「アルン!アルン!早く治癒魔法を!」
ルーナがアルンに治癒魔法をかけようとした瞬間、とんでもないスピードでゼロがルーナの頭を蹴った。
その衝撃でルーナは遠くに吹っ飛び、その場にうずくまり、血を吐いていた。
「パール、あれって一体......」
ターナがパールに聞くと、
「同一魔法よ、指定の生物と合体できる魔法だけど、ああいう風に理性をなくしてしまうの。」
「とにかく、早くアルンを治癒しないと!ターナ、輪、あいつの気を引いて!」
パールはまだ傷が治ってないのか、歩きにくそうにアルンに歩いていった。
「輪、行きますよ。」
「ああ。」
2人でゼロの方へ剣を構えながら走り出し、斬る。
しかし、ゼロがそれを避けようとし、俺の剣は少しかすったが、ターナの刀は空振りに終わり、ゼロはその瞬間にターナの頭を掴むと、振り回した。
「ああああ!っ!!」
そのままゼロはターナを空に投げると、自身も空へ飛び、ターナを上から叩きつけた。
「ターナ!」
ターナは気を失ってしまい、残ったのは俺だけになってしまった。
「くっ!」
ゼロがこちらに近づいてくるのを見ていると、後ろから起き上がったルーナが魔法を繰り出した。
「ライトニング!ボルトー!!」
ゼロの頭目掛けて、攻撃をし、ゼロが倒れ込むと、俺はすぐに剣をゼロに突き刺した。何度も何度も、起き上がれないように。
「まだまだ行くぞ!ライトニングボルト10連射!」
ルーナも一緒に攻撃を与え続けたが、突然衝撃波が起こり、俺とルーナが吹っ飛ぶと、ゼロは俺を掴み森の奥へ投げた。
それをゼロは追いかけ、その場からいなくなった。
「輪ーー!!」
「がはっ!!げほっ!あぁ!!」
森の奥で俺はゼロに何度も攻撃を受けた。
「あああああ!!」
左手がちぎれる。右目が潰れる。拳が腹を貫き内蔵が飛び出る。
痛い。痛い。
俺は攻撃を受けている間、ずっとゼロの目を見ていた。あの時と同じだ。街の不良のボスに殴られていた時と同じ感情だ。
こいつを殺す。なんとしても。
最後に脳天を拳でやられ、嫌な音がすると、ゼロは気が済んだのかルーナ達の元へ戻って行った。




