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無幻の黄昏   作者: ふみりえ
第一部 生きている世界
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第二十七話 百鬼夜行

 身支度を終え、街から出ようとすると、ネロが待っていた。

「パール、あなたに渡したい物があるの。」

 ネロがそう言うと、懐から小さな箱をパールに差し出した。

「これ、あなたがいざって時に開けて欲しいの。」

 パールはその箱を大事そうに自分の懐にしまい、お礼を言った。

「ありがとう、ネロ。大事にするね。」

 ネロとパールが最後にお互い抱きしめ合い、カルカロの街を後にした。

「そういやアルンもイルからなにか貰ったよな?なんだったんだ?」

 ルーナの問いにアルンが時空収納からイルに貰った小さな箱を取り出した。

「これもパールが貰ったのと同じで、いざって時に開けるようにって書いてある。」

「なーんだ、つまんないの。」





「ルーナの両親が行方不明だと?」

 アルンの両親の家に人が数名集まりながら、話し合いをしていた。

「はい、賭けの街に行ったっきり、消息が途絶えました。」

 アルンとパールの両親が少し考えると、

「ルーナの両親は死んだことにする。あなた達は当初の予定通り、アルン達4人を捕らえてくるように。」

 アルンとパールの両親が部屋から出ていくと、残りの人達も家から出ていき、自分たちの寝床に歩いていった。

「それでディエゴ、お前が戦ったルーナの力はどんなだった?」

 テーブルを囲んで数人が席に着くと真ん中に座っている男が喋りだした。

「はっきり言って、私よりも強い。多分、他の三人も同じくらいだな。」

 それを聞いた真ん中の男は少し考えると、

「では、今回の任務は初手は正面からではなく、不意打ちで済ませるとする。ディエゴ、お前はルーナを、マロン、お前はパールを、クウ、お前はアルンを、俺は、実験体だ。」

 真ん中の男、ゼロはそう言うと、部屋から出ていき、残りの三人も部屋から出ていった。






「なあ、コア・シティまで後どのくらいなんだ?」

 ルーナが退屈そうにパールに聞くと、

「あと、この道を歩いて、山と砂漠を越えたら到着よ。」

 それを聞いたルーナは嬉しそうな顔をしながら、

「おお!あと少しなんだな!おっしゃー!!」

 どちゅん!!

 突然大きな音がしたと思ったら、ルーナが倒れた。

「ルーナ!」

 全員がルーナの元に駆け寄ると、ルーナの腹に銃弾の跡があった。

「な、なんで。この世界には銃はないはず。」

「とりあえず、みんなどこかに隠れて、後で集まろう!ターナ、輪、ルーナを一緒に運んで。」

 パールの言葉でそれぞれ離れ、走っていった。





「はぁ、はぁ、ここまで来れば大丈夫なはず......」

「ここか。」

「!!」

 仲間の誰でもない声が聞こえ、パールがそちらの方を向くと、女性が立っていた。

「あなたは?」

「初めまして、パール。私は暗殺チーム、百鬼夜行の1人、マロンよ。よろしく。」

(私の名前を知っている。父さんや母さんの刺客?)

「そんなに警戒しないで。あなたが思っている通り、私たちはあなた達の両親から頼まれたの。連れてこいってね。」

「断ったら?」

「ちょっとだけ、痛い目にあってもらうわ。」

 マロンの懐から銃が現れ、パールに向かって、弾が放たれる。

「くっ!」

 咄嗟にパールは防御魔法でそれを防ごうとしたが、防ぎきれず左腕に食らう。

「うぅ、なんであなたが銃を......」

 打たれた箇所を治癒魔法で回復しながら、マロンに問うと、

「いいでしょう?私が作ったの。あなたのお仲間のルーナって人を撃ったのも、私の銃なの。」

 それを聞いたパールはニヤリと笑い、

「それじゃ、私と一緒ね。」

 マロンは疑問そうな顔をしていると、パールの両腕に二丁の銃が出現する。

 マロンは驚いた顔をすると、すぐに楽しそうな顔になり、

「それじゃ、始めましょうか!」




「くっ!」

 アルンは魔法のじゅうたんに乗りながら杖を持ち、後ろの空に向かって魔法を撃つ。

 空からも魔法がアルンに向かって繰り出し、攻防がしばらく続くと、アルンは逃げるのをやめ、後ろを振り向いた。

「はぁ、はぁ、はぁ。」

「もう既に息切れをしてるじゃないか。諦めて私と一緒に来るんだ。」

 空から降りてきた女性は棍棒を持っていた。

「はぁ、はぁ、嫌だ。帰りたくない。」

 アルンは杖を女性に向け、魔法の弓矢を繰り出す。

「ぬるいぬるい!」

 繰り出された矢を棍棒で全てをぶっ飛ばし、アルンに向かって走り出す。

「させるか!」

 アルンは再び魔法のじゅうたんで必死に逃げた。

(私の魔法が効かない。誰かと合流しないと。)

 必死で森の中を逃げ回ると突然目の前に地面から岩が飛び出した。

「なっ!」

 じゅうたんの動きを止めると、後ろから気配がし、振り返ると、

 どごっ!!

 頭に思い切り棍棒をくらい、じゅうたんから落ちてしまい、地面に倒れ込んだ。

「岩は私の魔法だ。それじゃ、アイツらのところに連れていくとするか。」





 ターナと俺はルーナを運びながらゆっくりと森の中をさまよっていた。

「輪、あっちで少し休みましょう。」

「うん。」

 ひとつの木にルーナをおろし、魔法の詠唱をし、治癒をかける。

「どうですか?」

「時間がかかるけど、何とか。」

 その瞬間、ターナが後ろを振り向き刀を抜き、構える。

「誰ですか?」

 森の茂みから姿を現したのは、

「ディエゴ......」

「久しぶりだな。」

 ターナが俺の方を向き、

「輪、私が1人であの人とやります。あなたは、ルーナの治癒をお願いします。」

「うん、わかった。」

 ターナが向き直ると、ディエゴが攻撃魔法を繰り出す。

「ん!!」

 刀で魔法を斬り、ディエゴの方へ走り出す。

「はああ!」

 いくつかの斬撃を繰り出すが、それらを全てディエゴはかわし、腰にかけてある鞘から細剣を抜く。

「あなたも剣士なのですね。嬉しいです。では、やりましょう。」

 ターナとディエゴがしばらく攻防を続けながら、俺はルーナの傷を癒していた。

「潔白流、舞蝶」

 腰にかけてあるもうひとつの刀を抜き、技を繰り出す。

 下から両斜めに向かい、刀で切り裂く。

「くっ!」

 ディエゴは防ぎきれず、技を体に食らう。

「だが!」

「!?」

 技を繰り出した後の硬直の隙にディエゴが細剣を何発もターナに突き刺す。

「がはっ!」

 口から血を吐き、刺された箇所から血が流れる。

「その技を繰り出したのは初めてなのではないか?隙があるぞ。」

「よくわかりましたね。あなたの言うとおりです。」

 左手に持っている刀を鞘にしまい、もう一本の刀を構える。

(これはまずいですね。試しに使ってみた技が、命取りになるとは。)

 そこからは防戦一方だった。

 受けた傷で十分に動けず、それから何度もターナが攻撃を受けるのを、俺は黙って見ていた。助けたかったが、今治癒をやめるわけにはいかない。

 それからしばらく経つとターナは顔を俯かせた。

「やってみますか、あれを。」

 目を瞑り、心の中をまっさらにする。

「潔白流、ゾーン。」

「!?」

 とてつもないスピードでターナがディエゴの体を何回も切り裂き、その衝撃でディエゴは宙に舞った。

「すごい......」

 ディエゴの体が、地面に落ち、ターナは剣を鞘に収める。

「ふう。」

 ターナが俺の元に歩いてきて、

「終わりました。」

「ターナ、今のって。」

「潔白流、ゾーン。あなたの目の能力と似たようなものです。」

 ターナがルーナの方を見ると、ルーナは気持ちよさそうに寝ていた。

「ターナ、お前の傷も治さなくちゃ。」

「お願いします。」

 ターナの傷を治し、ディエゴの方を振り向くと、まだ立ち上がれない様子で、こちらに向かって這いつくばっていた。

「なぜだ、なぜ私は勝てない。ルーナと戦った時も。なぜ!」

 そう叫びながらディエゴは俺たちの元に向かっていた。

 そこにターナが近寄り、

「それはですね、私たちとあなたでは気持ちが違うんです。勝つための気持ちが。」

 そう言うと、ディエゴはしばらく顔を俯かせた。

「そうなのか、勝つための気持ちか......だが、私たちのリーダーは気持ちだけでは勝てん......ぞ......」

 ディエゴの動きが止まり、俺達はルーナを抱え、みんなの元に走った。





「楽しいねぇ!!楽しいねぇ!!」

 何丁もの銃が入り乱れる中、パールとマロンは戦闘をしていた。

(このままじゃ拉致があかない。)

 パールは1度銃を全て消すと、森の中に逃げていった。

「逃がさないわ!」

 パールを追ってマロンが森の中を走っていくと、パールの姿が見えた。

「見つけた!」

 パールに向かって何丁もの銃を構え、銃弾を発射する。

「がはっげほっ!」

 全ての銃弾を受けたパールはその場に倒れ込む。

 そんなパールの元に近づき、マロンは拘束していると、

 バン!!

 マロンの腹に弾が当たり、マロンはその場に倒れた。

「な、なんで......」

「隠しておいたのよ、木の影に。獲物を捕らえた時が、1番油断するからね。」

 パールは立ち上がり、みんなの元へ行こうとすると、

「まだ終わってないわよ!!」

「!?」

 その声に後ろを振り向くと、マロンは立ち上がっており、何丁もの銃が現れていた。

「これが最後の魔法よ!」

「くっ!」

 パールもたくさんの銃を出現させ、撃ち合いが始まる。

「うおおおおお!!」

「はあああああ!!」

 お互い銃を撃ちまくり、お互いの体を傷つけ合い、しばらく経つと2人は同時に倒れた。

「はぁ、はぁ、はぁ!」

「はぁ、はぁ、はぁ!」

 2人の体からはたくさんの血が流れており、あと少しの時間で死に絶えそうだった。

「あ、あなた、なかなかやるじゃない......私と同じ武器を使うなんて......」

「そ、そっちこそ......」

 マロンはしばらく考えるとあることを伝えた。

「わ......私たち暗殺チームの百鬼夜行はね、子供の頃から暗殺チームだったのよ...」

「へえ......子供の頃から一緒ね。私たちと同じね。」

「子供の頃から、殺さなければ生きれない世界だった......そんな中で私たちは生きてきたのよ。どう?すごいでしょ?」

 マロンはニヤリと笑うと、

「あーあ、あなたと仕事以外で出会えてたらなぁ、銃を知ってたんだから、いい友達になれてたのに......」

 マロンの目がどんどん閉じていき、やがて完全に目が閉じた。

(本当ね、違う出会いだったら、私たち、友達になれてたかもね。)

 パールもだんだんと目が閉じていき、完全に目が閉じる直前、

「パール!!」

 聞き覚えのある声が聞こえ、目を開けると、目の前にはラノとリナがいた。

「酷い傷......すぐに治してあげるからね。」

 治癒魔法を使い、パールの傷を治すと、パールは立ち上がり、マロンの顔を見た。

「マロン、じゃあね。」

 土を掘り、そこにマロンの体を入れると、

「さあ、みんなの元へ急ぎましょう!」

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