第二十五話 呪いの終わり
ネロが獣を追いかけていると、やがて獣の動きが止まり、攻撃を仕掛ける。
「くっ!」
しかし獣はそれを軽々と躱し、手の大きい爪でネロの体を切り裂こうとした。
それをギリギリ盾で防御し、一旦距離を置く。
(大丈夫、みんなが来るまでもちこたえれば。)
しばらく獣とネロは互いに見つめ合い、緊迫した状況が続いた。
「おい、あれってネロ様じゃないか。」
「獣と戦っているわ。」
「大丈夫なのか......」
周りの建物から人の声が聞こえ、視線を向けると、窓の隙間から街の人達がネロたちを見ていた。
ネロはそんな人たちを気にせず、すぐに視線を獣に戻した。
その瞬間、獣がこちらに襲いかかり、反応が遅れたネロは左手を爪で切り裂かれた。
「いたっ!」
左手を見ると、爪で切り裂かれた場所から血がダラダラと流れ、地面に滴る。
(これは毒、もう盾は掴めない......)
右手で槍を構え、獣に向かって走る。
「うおおおおおお!」
槍を獣に向かって突くが、獣はまたも躱し、ネロの体を鋭い爪で切り裂こうとしたが、ネロは顔をニヤリと笑い、体をしゃがませると、獣の股関節を槍で貫いた。
「やった!」
「ぎゃああああ!」
獣は大きな叫び声を上げ、その場に蹲った。
ネロはそんなことなど気にせず、次の一撃を入れる。
「ぐぎゃあああああああ!!」
獣が二度目の叫び声を上げ、槍が体に貫かれたままネロから距離を置く。
「!?」
すると、獣の叫び声とは違う声を上げる。
そして、貫かれた槍が獣の体に取り込まれた。
「どうなってるの?」
次の瞬間、獣の体から大きな爪と翼が生え、上空に飛んだ。
「と、飛んだ!」
獣は飛んだまま自分の頭上に魔法陣を展開させ、そこから無数の槍が飛び出してきた。
「きゃあああああ」
槍は周りの家をも貫き、ネロの体を傷つけた。
「ぐっ、うぅ。」
傷つけられた箇所を手で覆い、周りの壊れた家を見ると、ネロと同じように怪我をした人達がいた。
「痛いよぉ......」「おかあさん......」
そこには子供もおり、獣はその子に向かって次の攻撃を放った。
「やめて!!」
痛みを我慢しながら、必死にその子の元に走ると、獣の体からまたも槍が現れ、ネロの体を貫く。
「あ......お姉ちゃん」
「大丈夫だよ、歩ける?早く逃げて......」
子供は涙を流しながら、歩いていった。
(私も、ここまでかしらね。)
ネロの元に獣がゆっくりと歩いてくる。
獣の周りに無数の魔法陣が現れ、光り出す。
ネロは朝日が昇るのを少し見るとすぐに目を瞑りその時を待っていると、突然獣が叫んだ。
目を開けると、獣が展開したはずの魔法陣から獣に向かって槍が飛び出す。
「これは......」
「ネロ、じっとして。」
声が聞こえ、その方向を向くと、パール達がいた。
「パール、良かった。来てくれたんだ。」
ネロに回復魔法と解毒薬を飲ませ、
「ルーナ、アルン、ターナ、輪、私の魔法を受け入れて!」
パールが詠唱を行うと、俺たちの頭の中にパールの声が聞こえた。
(これは共有魔法、共有する者同士が抵抗しなければ、こうやって考えを共有できるの。)
(おっしゃぁ!それじゃ、パール、作戦はお前に任せた!)
俺たちはパールの作戦を聞き、動き出す。
「うおりゃぁ!」
ルーナが魔法で槍を作り出し、俺とターナと共に、獣に攻撃する。
獣はターナとルーナの攻撃を両手で防いだが、俺の剣は防げなかった。
体に一太刀入れ、そのまま斬撃を次から次へと入れる。
獣はターナとルーナの後ろに魔法陣を展開したが、
「遅い!」
アルンの弓矢で魔法陣を破壊される。
「ぎゅぎゅぎゅああああ!!」
獣が力任せに俺たちを振り払うと、俺に向かって襲いかかる。
速い!やられる!
「下に避けろ輪!」
ルーナの声が聞こえ、下にしゃがむと、
後ろからアルンとルーナが右手と左手を構え、獣の腹に魔法をぶつける。
「ライトニング・バニッシュ!」
「アロー・ストライク!」
衝撃で獣は建物まで吹っ飛び、よく見ると、腹に穴が空いていた。
俺とターナがトドメを刺そうと、獣に走って近づくと、獣はそれを待っていたかのようにものすごいスピードで両腕を振りかざした。
俺たちは片腕ずつ剣で斬るが、予想通りという顔で獣は口からビームを放とうとした。
「まずい!!避けろ2人とも!」
俺たちは避けることも出来ず、ビームを喰らいそうになった。
バンッ
突然、音が聞こえると、獣がガクッと体か力が抜け、そのまま動かなくなった。
「ふぅ、危ない危ない。」
後ろを向くと、パール獣のこめかみに銃を放っていた。
獣はしばらくすると、砂のように体が消えた。
それを確認すると、周りから人が集まってきて、俺たちは壊した建物の弁償を追求されるのかと焦った。
「みなさん、この街の呪いはたった今、この方たちが倒しました。もう、処刑をする必要はなくなったのです。」
ネロが民衆の前に出て、そう言うと、街の人達は大歓声を上げ、俺たちを胴上げした。
「ありがとう!!」
「これで、やっと平和な日常になる!」
それから街は大騒ぎをして、お祭り状態になった。
胴上げが終わると、俺たちはネロに城に招待された。
「なぁなぁ、あの時の私たち、めっちゃいいチームじゃなかったか?」
ルーナがそう言い出し、さっきの戦いを振り返ると、確かに攻防をお互いに支え合ったりして、いい感じだった。
「私たちが一緒に戦えば、どんなやつでも倒せると思います!」
「これからも一緒に戦おうね!」
ネロに部屋に案内されると、そこはとても大きな部屋で中央の長方形のテーブルにはたくさんの料理があった。
「この街を救ってくれてありがとうみんな!今日は好きなだけ食べていって!!」
そういえば、昨日の夜から何も食べていなかったな。
全員のお腹がぐぅーと鳴り、俺たちは急いでリオン達3人を呼ぶと、すぐに料理に手をつけた。
「うまい!うまいうまいうまい!こんな料理食ったことありません!!」
「よしよし、このトッピングでさらに美味しくああああルーナそれ私のだよ!」
「早い者勝ちだぜ!ガチで美味いぜこいつら!」
「まったく、あなた達は落ち着いて食べれないのかしうんみゃーーい!!」
「輪!ほらこれも美味しいよ!どんどん食べて!」
「いおん、も、ほんあいふいにはいっへうあさ」
「ラノ、はい、あーん。」
「あーん、美味しい!ほらリナもあーん。」
「パクリ」
俺たちは次から次へと出てくる料理を片っ端から食べていった。
「みんな、今日はここに泊まっていって!とりあえず、お風呂に入りましょう!」
ネロにお風呂に案内され、俺は1人で男湯に、他は仲良く女風呂に入っていった。
「はぁ!生き返るわ〜。」
湯船に浸かり、パールがそう言うと、
「お前婆さんみたいだな!」
ルーナが言い、パールはルーナに膝蹴りをかました。
「はい、目を瞑ってください。」
目を瞑ったラノとリナの頭にシャワーをかけ、頭のシャンプーを流すと、2人はすぐに湯船に浸かった。
「みんな、本当にありがとう。この街を救ってくれて。」
ネロが突然お礼を言い、頭を下げた。
「いいわよ別に。」
「この街から処刑がなくなって良かったです。」
「それでも、私はまだお礼がしたい。」
ネロがずっと頭を下げているので、困っていると、ルーナがネロの乳を揉み出した。
「だったら、この大きい胸を少しでも私たちにくれよー!」
「きゃあ!あなた達も充分デカいじゃない!ちょっと、やめて!あははは!」
「......賑やかだな、あっち。」
俺はゆっくりと湯船に浸かり、周りの景色を楽しんでいた。
今の時間は8時くらいだから、朝風呂か。気持ちいいなぁ。
街の方はお祭りの騒ぎ声が聞こえ、後でみんなと行くか。と思った。
そして俺は、いつの間にかあいつらと一緒にいたいという気持ちになっていることに気づいた。
こんな気持ち、前世ではなかったな。
俺の初めての友達。
俺はこんなにも、あいつらのことが大切になってきてたんだ。




