第二十四話 呪いの獣
俺とパールが脱出経路を探していると、突然廊下のドアが開き、そこから髪の長い女性が出てきた。
「「あ」」
女性は俺たちを見ると、すぐに部屋に戻り、ドタバタという足音を立てながら、再度部屋から出てきた。
女性は最初にドアを開けた時とは違い、鎧を着て、槍と盾を持った武装状態だった。
「曲者!何しに来た!」
女性は槍を構えながらそう言い、俺たちの返答を待たずに槍で攻撃してきた。
「あ、ちょっとちょっと。そっちが質問したのに答える隙を与えないのはおかしいわよ。」
「問答無用!死ねぇ!」
俺とパールは慌てて回避し、話し合おうとしたが、相手が聞く耳を持たないので、パールが魔法を発動させた。
すると、周りが白く包まれ、広さが分からないほどの空間ができていた。
「これは、ディエゴと戦った時と同じ空間。」
「輪!こうなったら戦うしかないわ。協力して!」
パールが本を手に持ち、周りに魔法陣を展開した。
俺も剣を抜き、女性に向かって構える。
「私の名はパール、こっちは輪!あなたの名前はなんて言うのかしら?」
「私はネロ!この国の女王になる存在よ!」
お互いの名前を言い、本格的に戦う状況になった。
「輪、さっきも言ったけど、私はルーナやアルンほど戦い向きの魔法使いじゃないの。だから私は後ろであなたを援護するわ。」
「わかった。」
俺はパールの話を聞くと、すぐにネロに向かって走り出し、剣を振りかざした。
ネロはそれを盾で防御し、槍で攻撃してきたが、俺にあたる1歩手前でパールの方向から魔法のビームが飛んできて、ネロは一歩下がった。
俺はすぐに剣を構い直し、今度はネロから槍を突き出してきたので、それを剣で弾き、懐に入ると、左手で腹を殴った。
「くっ!女を殴るなんて!」
それからしばらく攻防が続いたが、お互いに決定打が生まれず、時間だけが過ぎていった。
「輪!一旦こっちに来て!」
疲労していた俺はパールの元に走り、ネロの方も疲れたのだろう。俺を追いかけずにその場で息切れを起こしていた。
「ダメだっはぁっはぁっ。これじゃ、騒ぎに気づいて城の人間が来ちゃうよ。」
「えぇ、でも私に作戦があるの。聞いてちょうだい。」
パールの作戦を聞き、俺は一瞬驚いたが、パールの目を見て、承諾し、パールが魔法の詠唱を開始した。
「お喋りはお終い?それじゃ、行くわよ!」
ネロがこちらに向かって走り出し、俺もそれに向かい打つ。
頼む!発動してくれよ!
俺は眼鏡を外し、能力が発動してくれるよう祈った。
ネロは強かった。パールが援護してくれなかったら、俺は既にやられていた。
だが、パールが魔法の詠唱をしている途中は、俺が1人で相手しなくてはならない。
ネロの動きを見ると、止まって見えた。
よし、目の能力が発動している!
すぐにネロに向かって、かまいたちを繰り出す。
ネロはギリギリそれを盾で防ぐが、衝撃で盾を手放す。
俺はそれを見逃さず、次の技を繰り出した。
「潔白流、川鮭。」
相手に向かって剣を横に持ち、一直線に進み、相手を横切りする技。
「ちっ!」
ターナだったら今の一撃で勝負は終わっていただろう。だが、ネロはそれをまたもギリギリ槍で受け流し、技は空振りに終わった。
ネロが俺の体に槍を貫こうとした。
その直前、ネロが壁に吹っ飛ばされた。
「できたのか、すごいなパールは。」
吹っ飛ばされたネロの体に一つの穴が空いており、そこから血がものすごく流れていた。
「パール、早く手当を。」
「えぇ。」
返事をしたパールの手元にはスナイパーライフルがあった。
パールの作戦とは、俺がネロと一人で戦っている最中、パールが銃を魔法で作り、それをネロに食らわせるという作戦だった。
「すごいわね、銃ってのは。」
ネロを治癒魔法で治している間、パールは片手に持ってるスナイパーライフルをずっと頬ずりしていた。
「そういや、弾はどうしたんだ?弾も作ったのか?」
「いや、弾は魔法の玉よ。そのうち、作れたらいいけど。」
ネロが起きるのを待っている間、パールは俺の頭から銃が関係する過去を魔法で眺めながら、自分で作った銃をずっと抱きしめていた。
「はっ!」
ネロが目を覚まし、俺たちを見ると、すぐに立ち上がり、体を構えた。
「ちょっとネロ、話を聞いてちょうだい。」
ネロはまだ警戒していたが、話は聞いて貰えた。
「なるほど、それであなた達が牢獄にいる人達の呪いを解いてもらうと。」
「そういうことよ。最初から話を聞いて貰えたら良かったんだけど。」
ネロは恥ずかしそうに体を縮めていた。
「それで、その魔法はもう完成したのかしら?」
ネロがそう聞くと、俺達は牢獄へ戻った。
「まだみたいね。まぁ、この街の呪い自体を消すんだから、仕方ないけど。」
アルンとルーナが魔法の詠唱をしていると、再度パールも詠唱に参加した。
「輪、この方は誰ですか?」
ターナがネロを見ながらそう聞くと、ネロがスカートを掴み、貴族のような挨拶をし、自己紹介をした。
「こんばんは、私の名はネロ。この国の未来の女王です。」
「あどうもこれはご丁寧に、私はターナ。剣士をやっていまええええええ!!」
ターナは自己紹介をしている途中で叫び出し、俺はすぐにターナの口を塞いだ。
「ばっかお前!城のヤツらに聞こえたらどうするんだよ!」
「ぶふっ、すいません。驚いてつい、えと、女王様がなぜこちらに。」
ターナに先程のことを話すと、ターナは納得し、
「やはり、一緒に戦えば仲良くなれるんですね!」
そういうことじゃねーだろ。
ネロが話を聞いてくれれば、まず戦うこともなかったのに。
「えぇ、恐ろしかったわ。私が食らったあの一撃。一生のトラウマものよ。」
パールの方を見ると、詠唱中でも銃を抱きしめていた。
そんなに気に入ったのか。
しばらくすると、パール達3人の詠唱が終わり、俺たちの元に歩いてきた。
「それじゃみんな、今から魔法を発動させるけど。今回の魔法はあくまで、呪いを実体化させる魔法よ。私たちの目的はその実態化した呪いを倒すこと。いいわね?」
俺たちは一斉に頷き、それを見たパールが魔法を発動させた。
その瞬間魔法陣の中央が光だし、煙が発生した。煙の色は黒く濁り、やがて煙が消えると、そこには一体の獣がいた。
「あれが呪いよ。みんな、攻撃開始!」
俺達は一斉に獣に近づき、攻撃した。
その瞬間獣が爆発し、俺たちは壁や檻に吹っ飛ばされた。
牢獄の中にいる女性たちはその音で目覚め、驚いた目で見ていた。
そんなことなど気にせず、俺たちは城の外に出ると、いつの間にか朝日が登っており、街の中央に獣がいた。
「みんな!逃げるんだ!あれが呪いだ!」
ルーナが叫ぶと、街にいた人たちは恐怖した顔を浮かべ、直ぐに各々の家に入っていった。
だが、逃げる最中転んでしまった男の子がおり、獣がその子を襲った。
「この!」
アルンが魔法の弓矢を構え、すぐに矢を放ち、獣に当たる。
獣は当たった瞬間、雄叫びを上げ、男の子から離れた。
アルンはその間に男の子を背負い、
「もう大丈夫だよ、直ぐに逃げてね。」
男の子はアルンにお礼を言い、走り出した。
「みんな、獣を囲むんだ!」
獣の周りを全員で囲み、一斉に攻撃を仕掛ける。
しかし、獣は俺たちが攻撃を仕掛ける直前、爪を円を描くように横に切り裂き、俺たちはそれを食らった。
「いたっ!」
俺は左腕に少し喰らうと、目眩がした。
「これは......」
アルン達を見ると、みんなも獣の一撃をくらっており、無傷なのは盾を持っているネロだけだった。
「なんだこれ......」
しばらく経っても目眩が収まらず、獣が逃げてしまった。
「みんなこれは毒よ!それも強力なものね!解毒薬で回復して!」
「私は獣を追うわ!」
ネロが獣を追って走り出し、その間に俺たちは時空収納から里でリーノから貰った解毒薬を飲んだ。
「まだふらつくでしょうけど、すぐに治るわ!行きましょう!」
俺たちはすぐにネロと獣を追いかけた。




