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無幻の黄昏   作者: ふみりえ
第一部 生きている世界
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第二十二話 裏の世界最強

「輪、ここは私と玉藻の前に任せて3人を連れて逃げて!」

 リオンにそう言われ、俺達は牢獄の檻を壊し、寝ている3人を背負うと、走って城から出た。途中、魔王に攻撃されそうになったが、玉藻の前が守ってくれた。

「ターナ、刀!私が今取ってきた!」

「おぉ!ありがとうございます!」

 リナから刀を貰い、腰につけたターナは安心した様子で走った。

「どけ、玉藻の前とやら、我は魔王だぞ。」

「魔王?あなたが魔王?んー、そんな感じはしませんがねぇ。」

 魔王の姿をじっと見て、

「あぁ、そういうことですか。」

 しばらく沈黙が続いた後、魔王が動きだし、玉藻の前に攻撃を何度も仕掛ける。

 玉藻の前はそれらを軽く躱し、ひとつの魔法陣を作ると、そこから魔法の光線を繰り出す。

「んーいいわぁ!ご主人様の魔力!使っててとても気持ちいい!」

 牢獄の奥まで吹っ飛ばされた魔王はすぐに立ち上がり、いくつかの魔法陣を作ると、そこから無数の大きな拳が飛んできた。

「死ねぇ!!」

 玉藻の前は避けようとはせず、拳を全て食らった。

 しかし、玉藻の前は平然な顔をし、体には傷一つなかった。

「なっ!なんだと!!」

 驚いている魔王の目の前に玉藻の前は一瞬で近づき、頭を掴むと、

「さぁて、妾があなたの頭をめちゃくちゃにしてあげる。」

 そう言った瞬間、2人の動きが止まった。





「ここは、どこだ?」

 魔王は真っ暗な空間で目を覚ますと、玉藻の前の声が聞こえてきた。

「あなた、魔王ではありませんよね?弱すぎます。」

 玉藻の前の言葉に魔王は怒りだした。

「ふざけるな!我は魔王だ!裏の世界から来たのだぞ!」

 玉藻の前はそれを聞いた途端、笑いだした。

「ふふふふあははははあーはっはっは!」

 魔王の目の前に玉藻の前の姿が現れ、

「やはり、あなたも裏の世界から来たのですね!仲間がいて嬉しいです!」

 魔王は何を言ってるのか分からない様子だったが、玉藻の前の姿をしばらく見て、急に絶望した顔をした。

「き、貴様は!いや、貴方様は!」

「妾は玉藻の前、裏の世界で無敵と言われた存在。あなたの名前はなぁに?」

 魔王は酷く脅えた様子で自分の名を話した。

「わ、我はドルガ....玉藻の前様、お許しを.....どうか...」

 玉藻の前はしばらく考えると、

「裏の世界から生身のまま来ただけでなく、魔王まで名乗るとは、ちょっと調子に乗りすぎじゃないかい?」

 ドルガはその間もずっと体をブルブル震わせており、玉藻の前の話をただ聞いていた。

「分かりました、殺すのも面倒だから、今回は裏の世界に帰ることで許したあげましょう。それと、もうひとつ条件があります。」

 玉藻の前から条件を聞き、ドルガは驚いていたが、玉藻の前の顔を見て、すぐに承諾した。





「起きろお前ら!!早く逃げるぞ!」

 いつまで経っても起きない3人に俺とラノとリナとターナはずっと声をかけていた。

「むにゃむにゃ、もう食べられないよ。」

「こんなに儲かっちゃったうへへ。」

「やっと見つけたぜロンギヌスの槍〜」

 一向に起きない3人を檻から出し、何とか元の宿まで連れて行き、すぐに街から出る準備をする。

 リオン達が戻ってくるのを待ち、しばらく経つと、部屋のドアが開き、リオンと玉藻の前が入ってきた。

「リオン!玉藻の前!大丈夫だったか?」

「もう!妾のことはモーちゃんって言ってって言ったじゃない。」

 玉藻の前のことは気にせず、リオンに話を聞くと、

「あの男は魔王ではなかった。ただの魔王を語った未熟者らしい。」

 え?魔王じゃない?あんなに強かったのに?

 玉藻の前が自慢げな顔をし、

「あの男は裏の世界から来たのよ。妾のことを知った途端、急に顔を青ざめて、ぷーくすくす!思い出しただけで笑いが止まらない!あそうそう、こちら妾が偽魔王から奪い取った魔力です。」

 玉藻の前が大声で笑っていながら、魔力の詰まった玉を渡した。

「どうやら、偽魔王は元々街で処刑された女性の生命魔力を吸い上げて強くなろうとしてたみたい。玉藻の前の説得で、偽魔王は裏の世界に帰っていったわ。それで....魔女の件もどうにかしてって言ったのだけど。」

「だけど?」

「この街の住民は、心の底から魔女を嫌い、街の呪いを信じてるの。だから、偽魔王が一言、呪いは消えたとか言っても無駄だって。」

 リオンが話している途中、3人がやっと起き、一緒に話を聞いていた。

「つまり、今日の昼に処刑されそうになったあの子もまだ無事じゃないわね。」

 パールは顔を洗い、今後の方針について話す。

「まず、牢獄にいる人たちを全員解放しましょう。そして、もうこの街で偽魔女の処刑をしないようにする。そして、この街から呪いがないことをみんなに説明する。」

「牢獄にいる人たちを全員解放は問題なさそうだけど、他二つが大変ね。」

 アルンがそう言うと、ルーナが一つの考えを話す。

「私たちが魔女の血筋だと言うのを話すのはどうだ?私たちが魔女の血筋なら、魔女だって言っても信じてもらえるだろ?それで、牢獄にいる女たちは魔女じゃないってわかるだろ?」

 アルンとパールがなるほどという顔をするが、3人以外の全員が反対した。

「それじゃ、お前らが危険じゃないか。」

「そうです!まだ何か手はあるはずです。諦めずに考えましょう。」

 他の考えをみんなで話し合っている中、二人で遊んでいたラノとリナが俺たちに話しかけた。

「そういえばさ、なんでこの街の人達は魔女を嫌っているの?」

 全員がその言葉を聞き、たしかに と思った。

「なんででしょうね?魔女がいて何か困ることがあるのでしょうか。」

「魔女が一週間に一度現れる呪い....、これは調べる必要がありそうね。」

 ハルネのガイドブックを開き、この街の図書館を探すと、明日の方針を決め、俺たちは眠りについた。




「.....眠れん。」

「「私も」」

 ルーナとアルン、パールは眠れそうになく、暇を潰そうと3人で宿の外に出た。

「今日は本当に危なかったな。」

「えぇ、さすがに死ぬかもと思ったわ。」

「玉藻の前が偽魔王を倒してくれて助かったよね。」

 歩きながら今日のことを話し、街の中央にある、そのままにされた断頭台を見上げる。

「でも、助けられてよかったよ。」

「まだ安心できねぇ。偽魔王がいなくなったと知ったら、この街は混乱するぞ。」

「だけど、城に住んでる人達が、昨日の今日で魔王がいなくなったって話すのは考えにくいだろうからしばらくは大丈夫そうよ。」

 3人で他に人が誰もいない街中を歩きながら、今日処刑されそうになったあの人を思い出す。

「明日、またあの子が処刑されちゃうのかな?」

 アルンがそう言うと、パールはしばらく考え、

「どうでしょうね。魔王がいなくなって、城の人達が混乱してるでしょうから、大丈夫だとは思うけど。」

「念の為、断頭台の近くで見張ってようか?」

 ルーナの考えに同意した2人は他の捕まってる人達について話した。

「みんな、泣いてたよな。」

「全員裸にされてた。私達もああなってたのかな?」

「そうでしょうね。本当、輪達には感謝しなくちゃ。あの子たちも全員解放するのよ。」

 いつの間にか、街を一周し、宿に戻った3人はそのまま寝てしまった。

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