第二十一話 魔王(偽)
「魔女?」
男の言葉を聞き、みんなはアルン、パール、ルーナの顔を見たが、3人ともピンと来ない様子だった。
「もしかして、原魔六血家のうちのどこか?」
とりあえず出てくる人を見ようということで、しばらく待っていると、中央へと繋がる道の奥にある教会から鎖で縛られた女性が出てきた。
「どうだ?パール。」
パールが魔法を目に使い、縛られた女性を見ると、
「全然違うわね、原魔の血を感じない。」
「じゃぁ、少なくとも魔女では無いんですね!」
ターナは安心した様子で、断頭台に女性が乗ると、
「すいませーん、その人は魔女ではありませんよー。」
と大声で叫んだ。
ざわざわと周りの視線が集まる中、パールは
(そんな単純な話じゃないでしょうね)
しばらく周りが困惑していると、教会からまるで人間の形をしていない、怪物のような男が歩いてきた。
「おぉ、魔王様だぞ!」「えっ、魔王様がっ!」
魔王と呼ばれた男が出てきた途端、周りの視線はターナから男へと集まった。
「あれがこの街で信仰されてる人か.....」
みんなが魔王へ視線を向けていると、ターナが話しかけた。
「あなたが魔王ですね!この女性は魔女ではありませんよ、仲間のパールが言ってました!」
魔王はターナをじっと見ると、目を逸らし、処刑されそうな女性に目を向けた。
「いや、この女は魔女だ。」
魔王がそう言った途端、周りからたくさんの声が上がった。
「そうだそうだ!」「魔王様がそう言うんだ!間違いない!」
ターナはそんなことなど気にせず、何度もその女性は違うと言った。
「なぁ、私達も出た方がいいんじゃないか?」
ルーナがそう言い、ターナと一緒に魔王の前に立った。
「では、誰が魔女だと言うのだ?この街では、1週間に1人、魔女が生まれる呪いがあるのだ。」
ターナとルーナがしばらく考えると、
「こりゃダメだな、話が通じない」
「そうですね」
突然、ルーナが処刑されそうな女性に走り出し、魔法で鎖を破壊すると、ターナが女性を背負い、走ろうとした。
が、突然ルーナとターナの動きが止まった。いや2人だけじゃない。周りの人間全員が動かなくなった。
(こいつ......やばい!)
(動いたら、死ぬ)
魔王は動かないでいるターナとルーナに魔法をかけ、鎖で縛った。
その後、パール達の方を向くと、
「一緒に来い」
と言い、パールも鎖で縛られ、3人は教会がある場所の奥にある城に連れていかれてしまった。
その間、リオン達はパール立ちを助けることも出来ず、その場でただ立っていただけだった。
魔王が居なくなると、やっと全員が動き出し、処刑が開始されそうだった。
「私は魔女じゃない!助けて!誰かぁ!死にたくなぁい!!」
断頭台に首を入れられた女性が泣きながらそう叫ぶが、近くにいる男や周りの人々はまったく聞かず、
「早くやれ!!」「この魔女め!」
と罵倒をしていた。
「くっ....リオン、ラノ、リナ、あなた達は戻って輪にこのことを伝えて。」
「アルンは?」
リナがそう聞くと、アルンはしばらく俯き、
「私は、あの子を助ける!」
そう言い、すぐに断頭台の上に走り、近くの男を魔法で吹き飛ばすと、断頭台を破壊し、女性と共に遠くへ飛んで行った。
「魔女が逃げたぞ!!」「逃がすな!追うんだ!!」
周りの人達がそう叫びながら、アルン達が飛んで言った方向に走っていった。
リオン達はすぐに宿に戻り、自分たちの部屋へ入った。
「輪!輪起きて!早く!」
「う、うーん、あれ?リオンおはよう。いい夢を見たんだ。ルーナとアルンがあんなことやこんなことを」
「そんなこと言ってる場合じゃないの!みんなが!」
まだ眠気が覚めない俺の顔面をリオンが殴り飛ばし、俺は直ぐに何が起こったのか聞いた。
「そんな、そんなことが.....ルーナ達がなんで動かなかったのかわかるか?」
「魔王が何かしたわけじゃなかった、ただ、少しでも動いたら死ぬって感じたの....それで...連れていかれて..」
ラノが慌ててそう言いながら、リナ一緒にどうしようどうしようと言っていた。
「多分、私たちが動けなかったのは、魔王が覇気を使ったからだと思う」
「覇気?」
初めて聞く単語に俺が首を傾けると、リオンが説明してくれた。
「覇気っていうのは、発動したらそれよりも弱い人達はみんな動きを止めちゃうの」
「つまり、その魔王はパール達よりも強いってことか?」
そんな....それじゃ、どうやって...
俺が嫌な想像をしていると、リオンが
「とりあえず、パール達を助けなくちゃ!」
慌てて部屋から出ようとするリオンを止め、まず計画を立てる。
「今から言っても、もしかしたらその魔王がいるかもしれない。多分、今パール達は事情を聞かれていて、そのうち帰ってくるかもしれない。そうじゃなくてもその魔王がいたら俺達も捕まるだけだ。だからパール達が捕まっていたら脱獄するのは夜だ。みんなが寝静まった頃にパール達を取り返して、すぐに次の街へ行こう。」
俺の計画を聞いた3人はそれに納得し、次にアルンと処刑されそうになった女性のことについて話し合う。
「アルン達がどこにいるかもわからないしな、街の中を歩いてみようか」
「どうして?」
俺な言ったことにラノが質問をする。
「情報があるかもしれないからな。捕まってたらパールたちと一緒に助ける。捕まってなかったらどこに行ったのかの情報を手に入れるんだ。」
「なるほど!」
すぐに俺たちは宿から外に出て、怪しまれてはいけないので、さりげなく周りの人達に聞いて回った。
「処刑されそうになった魔女をさらった女?そいつらなら今俺たちが探しているところなんだ!魔女は処刑しなくちゃならねぇ!ここは呪いがかかった街なんだ!」
「魔女がどこに行ったのか?そういや、さっき城の兵士達が森の中に入っていったねぇ。そこにいるんじゃないかい?さらった女は分からないが、魔女のやつは即処刑だろうね。当たり前だが。」
「魔女なんて、すぐに死んじまえばいいんだ!」
俺は複数から情報を聞き、1度宿に戻り、みんなで集めた情報を共有することにした。
「アルン達は森の中にいるらしいんだ」
「私も聞いた。魔女って言われた人もそこにいるのかな?」
「多分そうだろうな、それにしてもこの街はいやに魔女を毛嫌いしてるな、なんでだ?」
「街の人は魔女を呪いって言ってた。一週間に1人、生まれて、そのままにしていると街が滅ぶって」
3人から聞いた話を聞き、整理をする。
魔女の呪いってのはよく分からないが、とりあえずまずはアルンとその女性だ。
「アルン達も今は城の兵士たちが森に向かってるし、行くとしたら夜だな」
「それじゃ、二手に別れよう。私は森へ、輪は城へ。いいわね?」
「私たちは?」
ラノとリナが不満そうな顔をし、一緒に行くと言い出すが、リオンは拒否した。
「ダメよ、どんな危険があるか分からないの。あなた達はここで待ってて。」
「それでみんなが戻ってこなかったら?」
「私たち、これからどうすればいいの?」
そうだ、ここで俺たちが捕まってパール達と一緒の牢獄に入ったら、ラノとリナは2人で生活しなくてはならない。ここから業の里までは遠すぎるし....
俺たちが悩んでいると、
「私たち、絶対に邪魔しないから!」
「お願い、だから連れてって!」
結局、2人を連れていくとこにし、俺にはリナ、リオンにはラノがついていくことになった。
そして夜になり
パール達が戻ってこなかったので、あいつらは捕まったことにし、救出することにした。
「よし、それじゃ上手くいったらまたこの宿で」
「わかった、行くよラノ」
リオンとラノが森に行くのを確認すると、俺達も城に走っていった。
一応、剣を持っていき、城の前まで来ると剣を抜いた。
「リナ、行くぞ」
リノと共に城の中に入り、こっそりと牢獄へと続く階段を探す。
「ねぇ輪、あれじゃない?」
リナが指さした先には地下へ続く階段があった。
「多分あれだ。」
リナと共に階段を降りていくと、城に使われていた素材とは全く真反対の岩で作られた地下牢獄があった。
そこには何人もの女性がおり、今は全員寝ているようだ。
多分、この中から1週間に1人、魔女として処刑に出してるんだ。でも一体なんのために?
そんなことを考えていると、リナがひとつの牢屋の前で止まった。
「輪、見て。アルンがいる。」
そこには、眠っているアルンがおり、その隣にはアルンと一緒にいたであろう女性がいた。
そしてその横には
「ルーナ、パール、ターナ」
俺が3人の名前を呼ぶと、ターナは起きたが、2人は起きなかった。
早く起きろよあいつら。
「輪、来てくれたんですね、ありがとうございます。ですがすいません、刀を持ち去られてしまって、ここは魔法も使えないみたいで」
ターナと脱獄する方法を考えているとリナが話しかけてきた。
「輪、今ラノ達を呼んだから。ちょっと待ってて。」
「呼んだって、どうやって」
俺がそう聞くと、リナは自慢げな顔をし、
「私とラノは魔法が使えなくても、離れていても、頭で会話することが出来るの。」
すごい、そんな能力があったのか。
俺が感心していると、突然鳥肌が立った。
いるのだ、俺の後ろに誰かが。
「答えろ、お前は何者だ。なぜここにいる。何しに来た?」
目をターナの方に向けると、ターナも動きを止めていた。
多分、こいつがリオンたちが言っていた魔王だろう。
「えと、俺はこいつらの仲間で、助けに来たんだ。」
「ほう、そうか。だが今すぐ消えろ。そうしなければお前は死ぬ。」
俺はしばらく俯くと、剣を抜き、魔王に向かって剣を振った。
だが、魔王は剣先を指で持ち、そこから俺は動かそうとしたが、一向に動かなかった。
「死にたいようだな。」
魔王がそう言った瞬間、俺は後ろにある壁まで激突した。
「がっ!!げほっげほっ!」
口から血反吐を吐き、うずくまっていると、魔王が近づいてきた。
壁にぶつかった衝撃で眼鏡が外れており、幸い発動中だったので、魔王の動きがギリギリ見えた。俺は剣を斜めに地面に指し、魔王の拳を受け流した。そしてそのまま、前のゴーレムと一緒で、右腕を斬ろうとしたが、剣は少し刺さっただけでそれ以降は斬れなかった。
「......痒いな」
横から拳が来て、避けようとしたが、剣が右腕に刺さったまま抜けず、俺はそれを食らった。
「がはっ!げほっ!」
とんでもない痛みを感じ、嗚咽を漏らす。
吹っ飛ばされ、その場で蹲っていると、魔王がいる方向から魔法が飛んできた。
「くっ」
剣先に黒く包む魔法を発動させ、無効化させようとするが、
無理だ、こんなの。
効果は発揮せず、魔法も食らった。
「輪!避けて!」
上から声がし、必死に横に避けると、そこから魔法の槍が飛んできた。
槍は魔王に当たり、魔王は驚いたような顔をした。
「輪!大丈夫?」
そこにはリオンがおり、リナからの言葉を聞き、駆けつけてくれたようだった。
「魔王.....」
リオンが魔王の姿を見ると、一瞬萎縮したようだったが、すぐに元に戻り、俺に安心してと言った。
「小娘、貴様はなかなかやるようだが、消えろ。貴様が消えればそこの男も見逃してやろう。」
魔王はそう言うが、リオンは逃げる素振りを見せず、逆にニヤリと笑った。
「いいえ、逃げないわ!私たちはここであなたを倒す!来い!玉藻の前!!」
リオンが叫んだ瞬間、目の前に魔法陣が現れ、
「主のご命令につき、参上致しました。
妾は玉藻の前、さぁて、妾の敵はだあれ?」




