第二十話 魔女の呪い
帰りの道を歩いていると、コンビニの近くに人が3人いた。
そのうち2人は楽しく会話をしていたが、もう1人は何度もコンビニの中に入り、2人に頼まれたものを自分の金で買っていた。
俺はそこから目を逸らし、コンビニから遠ざかる。
住宅街に入ると、主婦たちが話をしていた。しかし、そこにもう1人の主婦が歩いてくると、2人の主婦はそこから離れていった。
1人の主婦は目が虚ろになっており、ふらふらと道を歩いていた。その主婦の息子は犯罪を犯し、刑務所にいたことがあると聞いた。しかし、主婦はそれをいつも否定していた。
俺の家の隣の家族の娘さんは死んでいた。道を歩いていると、男に刺されてしまったらしい。
家に帰り、自分の部屋でテレビの電源をつけ、ニュースを見る。
たくさんのニュースがある中、特に俺の目に止まったのは、銀行強盗だった。
4人の強盗が銀行に入ると、銀行員を数人襲い、殺したとのこと。
俺はそれを見てる途中で意識を失った。
「はぁ」
何度目かわからない生前の夢を見て、気分が落ち込んでいると、リオンが話しかけてきた。
「輪、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
俺たちはラノア達の家から離れたあと、その日のうちに次の街に着き、宿をとった。
「輪、私たちはこの後この街を回りますが、あなたも来ませんか?」
ターナがそう聞くが、俺はまだ気持ちの整理ができてないので、もう少し寝ると言い、みんなは部屋から出ていった。
「......はぁ...」
しばらく、俺は生前のことを思い出していた。
毎日のように見る事件や事故のニュース、そして人が死亡したというニュース。さらにはニュースだけでなく日常でもそんな光景を見てきた。
それがこの世界でも起こっている。もしかしたら、今出ていったあいつらのうちの誰かが、大怪我をして帰ってくるかもしれない。死んでしまうかもしれない。
怖い、怖い。
そんなことを考えていると、部屋のドアが開き、リオンが入ってきた。
リオンは横になりうずくまっている俺の傍に近寄ると、
「輪、大丈夫だよ、私たちは誰も死なない。私たちは強いから」
俺はリオンの方を振り向くと、リオンはニコッと笑った。
「私たちの強さ、君は知ってるでしょ?」
そうだ、俺たちは大丈夫。たとえ怪我しても魔法を使えば、治せる。
リオンの言葉に安心した俺は、リオンにお礼を言い、もう一度寝ることにした。
俺が眠るとリオンは部屋から出て、ルーナ達の元に向かった。
「あ、リオンですよ」
「輪は大丈夫だったか?」
ルーナにそう聞かれ、大丈夫と答えると、ルーナ達は安心し、
「そんじゃ、美味しいもの探しと行くか!輪の分も買ってさらに元気にさせよう!」
まず寄った店は、肉まんが売ってある店だった。
全員分の肉まんとピザまんを買い、まず肉まんをひとくち食べる。
「あっつ!あつっ、けど上手いぜ!」
「本当、おいしいです!中にあるお肉と外の生地が絶妙なバランスで美味しさを醸し出しています!」
「ピザまんも美味しいわよ!チーズがこんなに伸びる!」
肉まんとピザまんを直ぐに食べ終わると、隣の屋台に移った。
そこは魚屋さんのようで、屋台には鮎の塩焼きが売られていた。
「鮎の塩焼きだよー!お、そこのお嬢ちゃんたち、食べてかない?うまいぜ鮎はー!」
店主にお金を払い、鮎の塩焼きを貰うと、リオン達はすぐにかぶりついた。
「うんまーい!」
「すごく美味しい!」
それからこの街を食べ歩きしながら歩いていき、街の中央に行くと、なんと男たちが柵の中で殴り合いをしていた。
「おうおうどうしたどうした?」
パールが時空収納からハルネのガイドブックを見ると、
「えーと、ケウの街、ここは魔王という存在を神として崇め、その信仰のため、週に1度祭りを開き、街の中央で喧嘩祭りが行わまれているんだそう。ちなみに、この街は魔女は神の敵として嫌われているんだそう。」
「へー、じゃあ私たちは気をつけないとな」
「間違えても、魔女の血筋とは知られないようにしなくちゃ。特にルーナは見た目が魔女っぽいから、とりあえずその帽子脱ぎなよ」
アルンがそう言うと、ルーナは帽子を外し、しまった。
ルーナは帽子を脱いでからも、体がうずうずしているようで、
「ルーナ、あなた参加したいんでしょ?」
「分かるか?いやぁ、合法的な喧嘩なんて私の夢だったしな!」
「いいわよ、行ってきなさい」
パールがそう言うと、ルーナはすぐに柵の中に入り、喧嘩を始めた。
「私はルーナが喧嘩している間、この街をもう少し回るけど、あなた達はどうする?」
アルン達は少し考えたあと、パール、アルン、ターナは街を回りに、ラノとリナ、リオンはルーナの喧嘩を見ることに決定した。
「それじゃ、ルーナとラノとリナをよろしくね、リオン」
「うんわかった」
アルンがリオンに3人のことを頼むと、ラノとリナは不機嫌な顔になった。
「私たちだってもう大人なのに......」
「しっかりしてるのに......」
「パール!見て見て、この服、可愛いでしょ?」
パール達はまず、近くの服屋に入り、新しい服を見て回っていた。
「本当ね、試着してみたら?」
「じゃぁじゃぁ、みんなで同じ服着ようよ!」
「え、私はいいですよ。2人で着てみてくださいよ」
断るターナをアルンは強引に試着室に連れ込み、すぐに着替えさせた。
「それじゃ、いっせいに見るわよ!」
「いっせーの!」
3人同時に鏡を見ると、そこには同じ服を着た美少女3人がいた。
「次これにしよう!」
「いいですね!ほらほら、早く着替えましょう!」
最初は乗り気ではなかったターナもスイッチが入り、3人は次から次へと服を着ていった。
「お客様大変お似合いでー!」
店員も何度も同じ台詞を言い、着ていった服をレジまで持っていき、
「こちら全てお買い上げでー?」
しかし、3人はそれぞれ気に入った服を一着ずつ買い、他は買わなかった。
後ろで店員の叫び声が聞こえた気がするが3人は気にせず新しい服をしまい、店から出ていった。
しばらく色々な店を回り、ルーナ達の元に戻ることにした。
「3人とも、祭りは終わった?」
3人はパール立ちに気がつくと、柵の中を指さした。
パール達がそちらに振り向くと、3つの高さの違う台座の真ん中の1番高い台座にルーナが立っていた。
「今週の喧嘩祭りの優勝者は!旅人のルーナだーー!!」
周りの男たちはルーナルーナと連呼し、ルーナはそれを聞き
「ありがとうーー!!ありがとうーー!!」
と叫んでいた。
喧嘩祭りが終わり、ルーナがパール達のところに戻ると、トロフィーを見せびらかした。
「ちょっと参加させただけなのに、まさかトロフィーを取るとは。しかも魔法を使わない喧嘩で......もう魔法使い引退したら?」
「えっへへへ、いいぜいいぜぇ。もっと褒めてくれよぉ。」
褒めてないよ....
全員がそう思った。
「それでは!今回のメインイベントを開始致しますー!!」
アナウンスがそう言い、街中の人が中央に集まった。
「なんだなんだ、さっきの喧嘩がメインイベントじゃなかったのか?」
「そうみたいね、何が始まるのかしら?」
「とりあえず、見てみましょ。」
人混みが多い中、何とか一番前まで行くと、目の前にはギロチンがあり、人々はそれを囲むように集まっていた。
「もしかして、処刑が行われるのかしら?」
「それがメインイベント?なんだそりゃ」
全員がパールとルーナと同じことを考えていると、近くの人に話しかけられた。
「あんた、さっきの喧嘩の優勝者だろ?この街は初めてかい?」
「ああ、そうなんだ。それで、誰が処刑されるんだい?」
ルーナが男に聞くと、男はニヤリと笑い、
「そりゃぁ、魔女さ」




