第十九話 ずっといっしょ
「お、なにやってたんだよ輪!この御馳走すごくうめーぞ!」
家の中に入ると、ルーナたちが先にお風呂ご飯を食べていた。
そこには、
「ラノア....」
彼女も元気にご飯を食べていた。
そりゃそうか。そうだよな、ここは魔法が使えるんだ。魔法があれば、なくなった足を治すなんて余裕か。
俺は安心し、目の前にあるご飯を食べていった。
「ご馳走様でしたー!」
あれから一日をラノア家で過ごし、夜ご飯を食べ終えたところだった。
「お風呂の準備が出来てるよ、入っちゃって!」
お風呂に入る順番を決め、1番最後になった俺は、部屋で順番になるまで待った。
「ほらほら、こうすればピュピューて出るんだぜ」
お風呂に入っている間の暇つぶしの技をルーナがすると、リナが真似してルーナの顔に何発も水を放った。
「あなた達、ちゃんと肩まで浸からないと」
身体中を泡で覆いながら、パールはルーナたちに言い、お湯で洗い流すと、ルーナ達が浸かっている湯船に入った。
「本当、今日はびっくりしたわね」
「そうだよなぁ」
パールとルーナは今日の昼のことについて話した。
「最初見た時は片足がなくて焦ったが、いつの間に足を持ってきてたんだな」
「さすがに回復魔法でも、なくなった体の一部を無くしたら回復できないからな」
しばらくお風呂を堪能していると、いつの間に順番が来たのか、ターナたちが入ってきた。
「ほらほら、すぐに出てください。時間ですよ。」
「体洗いおわるまで待ってくれよ。いいだろ?」
「いいでしょ?」
ルーナとリナがターナたちにそうお願いし、ターナは
「しょうがないですね。」
そう言い、体を洗い始めた。
「あれ?ゼノアさん?」
部屋から出ると、ゼノアが歩いているのを見かけたので、ちょっと気になり後をつけると、階段を降り、家の地下室に入っていった。
アルンから聞いた話だと、この世界の家には基本、地下室が作られており、そこにはその家の秘密があるんだそう。
人の家の秘密を探るのはいけないよな。
そう思い、部屋に戻ろうとすると、
ツルっ
「あるぇ?」
地下室の階段をゴロゴロと転がり、勢いで扉が壊れる。
やっべー、弁償しなきゃ!
「あっ違うんです、滑ってしまって!ドアも壊してしまって、ごめんなさい!」
必死に謝り、立ち上がり、部屋を見る。
「.....え?」
そこには、たくさんの血や腕や足、内蔵が至る所に置いてあった。
そして
「死んで....る?」
部屋には体の一部がいくつか切り落とされた遺体がたくさんあった。
その中には、見覚えのある顔があった。
ラノアから見せてもらった写真の中にいる
「アロナ...さん?」
目の前の光景に理解が追いつかず、その場で立ちすくしていると、ゼノアの声がした。
「あら、見つかっちゃった」
死んでる?この人たち全部....なんで....
「うっ...」
吐き気がし、頭を抱えうずくまる。
「なに......これ....」
後ろに人の気配がし、声が聞こえる。
ラノアの声だった。
「あら、ラノアにも見つかっちゃった!もー、失敗失敗!」
「お母さん、なにこれ」
ゼノアは近くに流れている血を指で触れながら、説明する。
「この子たちはね、あなたなのよ。今日、あなた片足なくなっちゃったでしょ?だから、この子達から片足を貰ったのよ。」
「え...」
理解が追いつかず、ラノアは右足を触る。
「なんで、お姉ちゃん達が」
「そりゃぁ、私が殺したからよ」
それを聞いた途端、ラノアは恐怖した顔をし、ゼノアを見つめた。
「お姉ちゃん達は病気で死んじゃったって」
「嘘に決まってるでしょ」
ゼノアは淡々と答え、ラノアに近づき、顔に触れる。
「私にとって、あなたが1番なの。あなたが死なないように、今までたくさんあなたのお姉ちゃんを殺してきたわ。」
「で、でも、なんでこんなに」
ゼノアはフッと笑い、
「全て必要だったからよ。気づかない?あなたの右手も、左手も右足も左足も内臓まで、脳以外はみんな、この子達から貰ったのよ」
ラノアは更に恐怖した顔をし、自分の体中を触った。
「大丈夫よ、ラノア。お姉ちゃん達はあなたの中にいるわ。だって、お姉ちゃんたちから貰ったものなんだもの。」
ラノアはその瞬間、体の力が抜け、膝から崩れ落ちた。
俺は、そんなことなど気にせず、ずっと部屋の中を見ていた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ!」
死んでる、遺体、死んでる、遺体、死んでる、遺体、死んでる、遺体、死んでる、遺体、内臓、腕、足、全部ある。
「輪!ラノア!こっち!」
パールの声が聞こえるが、俺には聞こえてなかった。いや、聞こえていたが、とても動けそうにはなかった。
それはラノアも同じで、何度か声を聞いたが、一向に動こうとはしなかった。
「ちっ!」
俺たちが動こうとしないので、痺れを切らしたルーナが俺たち2人を引きずり、地下室から離れた。
「あなたたちの会話を途中からこっそり聞いてたの!なんてことなの!すぐに逃げるわよ!」
パールがラノアを背負い、俺はルーナに背負わされ、走っていくと曲がり角でターナたちと出会った。
「逃げる準備は出来ました!いきましょう!」
全員で家から出ると、後ろからゼノアが追いかけてきた。
「待ちなさい、私のラノアを返して....返して返して返して返して返して返して返して返して」
歩きながら徐々にこちらに向かっており、ルーナ達はひとまず森に身を潜めることにした。
「なんてことなの!だから足がなくても回復出来てたのね。そりゃそうよね、姉妹だもの。他人のものでも十分に動けるはずよ」
「いつまで、ここにいるつもりですか?そのうち、見つかってしまいますよ」
パールたちが話し合っている中、ルーナとリオンはずっと俺に話しかけていた。
「おい!おい輪!しっかりしろ」
「輪!聞こえる?返事して」
そんな声が聞こえる中、
「死んでる....遺体が....みんな...死んで」
と俺はうわ言のようにずっと呟き、何度目かで俺は意識をなくした。
「ちっ!輪はダメだ!ラノアは?」
「ラノア、大丈夫?」
ラノアも何言わずにただ、その場に座っていたが、しばらく経つと、急に立ち上がり、家の方に歩いていこうとした。
「おいラノア!見つかっちまうぞ!」
止めようとするルーナを見ると、ラノアは笑顔になり、
「大丈夫、私、帰るわ」
「は!?あそこにいたら、いつ死ぬのか分からないんですよ!?」
「大丈夫、お母さんは私にそんなことしないわ。だって、私を愛してくれてるんだもの。みんなは逃げて。」
落ち着いた口調でラノアは言い、家の方へ歩いていった。
その間、みんなは止めようとはせず、ずっとラノアを見ていた。
ラノアがゼノアに近づき、ゼノアはラノアを抱きしめると、家の中に入ってった。
「行きましょう、私たちはもうあそこには近寄らない。いいわね」
パールがそう言い、先に次の目的地へ足を動かした。
そんなパールをみんなは追いかけ、あの家から逃げるように歩いていった。
「....さよなら、ラノア...」
「さぁラノア!そろそろ寝ましょう!」
「うん、ねぇお母さん、お母さんは私の事、好き?」
ラノアはゼノアにそう質問すると、ゼノアは即答した。
「もちろん大好きよ、ゼノアが生まれてお父さんが亡くなってからは、あなたが1番よ。おやすみ、ラノア...」
ゼノアはラノアの額にキスをし、部屋から出ていった。
「ありがとう、お母さん」
その夜、火事があった。場所は街から離れた一軒家で突然燃え上がったんだそう。
死者は何十名もおり、生存者は誰一人いなかった。
「これで、ずっと一緒だね」




